2014年09月号パルキッズ塾
Vol.17 | 学習習慣のバトン渡し
written by 小豆澤 宏次(Hirotsugu Azukizawa)
※本記事のテキストは引用・転載可能です。引用・転載する場合は出典として下記の情報を併記してください。
引用・転載元:
http://palkids.co.jp/palkids-webmagazine/palkids-juku/palkids-juku-1409/
小豆澤宏次『学習習慣のバトン渡し』(株式会社 児童英語研究所、2014年)
夏休みが終わり新学期が始まりました。パルキッズ・オンラインレッスンの夏休み企画「パルキッズラリー」の様子を見ていると、学習が予定通り進み、この夏に英語力を大きく伸ばしたお子さまが多いようです。一方で、夏休みの間お母さまが「勉強しなさい!」と繰り返し言い続けたにもかかわらず学習習慣を身につけることができなかったお子さまもいらっしゃるようです。
今回は「学習習慣の身につけ方」にスポットを当てて、どうすればお子さまに学習習慣を身につけさせることができるのかを考えてみましょう。
| 子どもたちの学習状況
先日ニュースで報じられていて驚いたのですが、近年「宿題代行業者」というサービスが人気のようです。「宿題代行」とは文字通り子どもたちの代わりに業者が宿題を請け負ってくれるというものです。夏休みの読書感想文にはじまり、自由研究、図画工作まで様々な宿題を代行してくれるようです。ちなみに相場は読書感想文であれば400字詰め原稿用紙1枚3,000円、自由研究は5,000円から、図画工作は20,000円あたりだそうです。業者はご丁寧に、あたかも子どもが書いた様な文章で、絵のタッチでそれらの宿題を仕上げてくれるようです。なかには子どもの筆跡をまねて書き込み式の宿題をしてくれるところもあるそうです。
これに関して、子どもが宿題を自分でしないということはもちろんですが、問題は子どもではなく、親が積極的に業者に代行を依頼しているということにあります。受験勉強に専念させたいために学校の宿題は業者に依頼する、という考え方もあるようですが、読書や学習習慣が身についている子であれば、読書感想文など2~3時間あれば仕上げてしまうでしょう。つまり受験勉強で忙しいから依頼するのではなく、そもそも勉強するクセがついていないため、親が受験勉強をさせるだけで手一杯になってしまうから、または「宿題しなさい!」と言い続けるのに疲れてしまった、と考えることもできます。
さて、学力の二極化の問題が言われ始めてしばらく経ちますが、当然のことながら勉強時間の二極化も進んでいるようです。学力に関して、二極化もそうですが、全体的に低下傾向にあることが問題であることは、本誌でも何度も触れてきました。勉強時間についても同様で、平均学習時間自体が少なくなっています。進学・受験のばらつきが最も少ない中学生の学校外の平均学習時間を見ると、1982年で113分、2012年で77分と30年で30分以上少なくなっています。ちなみに、成績上位(偏差値55以上)と成績下位(偏差値45未満)に分けると、上位が97分、下位が60分となっています。この程度であれば勉強時間が少なくなってはいるものの、二極化とまでは言えません。しかし、偏差値70以上有名私立中学の子どもたちの様子を見ると二極化の様子がはっきりわかるのです。偏差値70以上の有名私立中に通う子どもたちは1日の勉強時間が300分ということが当たり前だと言うのです。300分と60分、1年経つとその差は87,600分、60日間まるまる勉強している、していないの差になるのです。ちょっと恐ろしくなりますね。
昔からよく聞く「あなたはやればできる子なのに」という言葉、「やればできる子」ではなく本来は「やるからできる子」であるという事実を私たちは認める必要があるようです。学習習慣を身につけ、苦なく勉強できるからこそ「できる子」なのです。
| 学習のバトン
「やる子」はどうすれば育つのでしょうか?お母さまにとってちょっと耳が痛い話ですが、勉強しない子は子どもの責任ではなく、親の責任です。どんなに優秀な子でも、始めから学習習慣が身についていたわけではありません。親の働きかけや環境作りによって学習習慣を身につけていったのです。
幼児期は親が中心となって学習を行います。パルキッズのCDのかけ流し、絵本の読み聞かせなど、親が一方的にわが子に学習の素材を与えます。そこから次第に学習のバトンをお子さまに渡し、最終的には親はただ見守るだけで、お子さまが自律学習を行うというのが理想です。学習習慣が身についてない子は、親から子へ学習のバトン渡しがうまくいっていないことが考えられます。バトンがお子さまに渡らない限り、何歳になっても学習は親主導で行わなければいけなくなります。小学校高学年になっても、中学生になっても、高校生になっても終いには大学生になっても「やりなさい!」と言い続けなければいけなくなるのです。考えただけでもうんざりしてしまいますね…。どこのご家庭でも最初は親主導で学習を進めていきます。しかし学習のバトン渡しがうまくいかないと、どこかのタイミングで”親が”あきらめてしまうのです。その結果、先に紹介した「宿題代行業者」に依頼するようなことになるのでしょう。
| 「環境作り」「サポート」「習慣化」
前置きが長くなりましたが、本題の「学習習慣を身につけるコツ」言い換えれば「学習のバトンの渡し方」について解説していきましょう。
お子さまにバトンを渡すためには3つの段階があります。第一段階が「環境作り」です。まずはいつ、何を勉強をするのかという学習環境の整備から始めます。現在の取り組みを書き出し、お子さまの1日のスケジュールを整理して、それらの取り組みをスケジュールの中に入れ込んでいきましょう。
実はこの「環境作り」が学習習慣を身につける上で最も重要なところです。それぞれ東京大学と大阪大学に現役で進んだ私の友人らも、学習の習慣化するにあたって「毎日決まった時間に取り組む」「毎日こなせるノルマを決める」の2つに気をつけていたと話していました。
まず、「毎日決まった時間に取り組む」に関して、突発的なイベントが入ってこないところに取り組みを入れ込むということです。習い事やお買い物、外食などのイベントが入る時間帯は避けましょう。おすすめは朝の時間帯です。多少早起きをしても朝の時間であれば、そういったイベントが入ることが少ないため、習慣化を妨げられることがないでしょう。
そして「毎日こなせるノルマを決める」に関しては決して最初から無理なノルマを設定しないことです。ノルマが多すぎるとお子さまのやる気を削ぐだけで長続きしません。一度習慣化できれば取り組みを増やす事は難しいことではありませんから、まずは毎日こなせる量に限定して取り組みましょう。
このように学習習慣を身につけるということは一朝一夕ではできません。だからこそ幼児・児童期の今のうちにここをクリアしておくことが必要なのですね。
いつ、何を勉強するのかが決まったら、次の「サポート」の段階に入ります。ここはじっくりと腰を据えて行わなければいけません。ただ「やりなさい!」と言うだけで責任をお子さまに押しつけたり、すべてにおいて「ママがやってあげる」と過干渉をしてはいけません。いつ、何を勉強するかは決まっているわけですから、お母さまは日々お子さまにその取り組みをさせ、その様子を見守りましょう。最初はとにかく取り組み方を丁寧にできるようになるまで根気強く教えます。一度取り組み方がわかれば、あとは答えが分からず次へ進めなくなったときだけ手を差し伸べるようにしましょう。
また、お子さまが取り組みをなまけるようなことがあってもすぐに叱らないようにしましょう。その日の取り組みは翌日に繰り越しても構いません。その際、翌日のいつ取り組むのかをお子さまとの間で決め、「約束」をすることが必要です。そして翌日お子さまの様子を見て、取り組んでいるようなら「約束の履行」ができているので問題ありません。約束の時間に取り組めていないのであれば、「約束したよね」ということで「履行」させましょう。
「環境作り」「サポート」の段階を経てようやく第三段階の「学習の習慣化」に至るのです。一度習慣化できれば、学習のバトンをお子さまに手渡したということで、お母さまの仕事は一旦終了です。あとはお子さまが学習を継続できる環境を維持し、お子さまの様子を見守りながら、気づいたことをお子さまに伝えてあげるだけで結構です。
| オンラインレッスンが学習習慣を育てる
「パルキッズキンダー」「I Can Read!」に続き、9月から「パルキッズプリスクーラー」のオンラインレッスンが始まりました。実は、英語学習において学習の習慣化をするのに最適なのがパルキッズのオンラインレッスンなのです。その理由は本来お母さまの仕事である「環境作り」と「サポート」をかなりの割合で担ってくれるからです。
オンラインレッスンでは日々取り組む内容が決まっています。表示された内容に対してお子さまはクリックをして進むだけです。無理のないノルマが決まっているので、あとは取り組む時間を決めるだけで「環境作り」は簡単にできます。
次に「サポート」の部分です。取り組み方は大変簡単ですからデバイスの使い方を教えるだけで、後はお子さまが取り組む様子を見守っていただくだけで結構です。また「約束」と「履行」に関しても、レッスンをわざわざクリックして進ませることで、取り組むことに対して同意させて取り組ませるという、「約束」「履行」を繰り返し行えるプログラムになっています。
毎日たった5分で、学習習慣のバトンをうまくお子さまに渡し、余裕を持ってお子さまの学習のサポートができるオンラインレッスンを、ぜひ有効に使っていきましょう。
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小豆澤 宏次(Azukizawa Hirotsugu)
1976年生まれ。島根県出身。同志社大学経済学部を卒業後、米国ボストンのバークリー音楽大学に留学し、音楽家として活動。帰国後は幼児・児童向け英語教室にて英語講師を務める。児童英語研究所所長・船津洋氏に「パルキッズ理論」の指導を受け感銘を受ける。その後、英語教室の指導教材を「パルキッズ」へと全面的に変更。生徒数を大きく伸ばすことに成功する。児童英語研究所に入社後は、年間1,000件以上の母親への指導を行うとともに、パルキッズのオンラインレッスンのプログラムの制作ディレクションを行う。また大人向けの英語素読教材の制作ディレクションも行う。