2019年5月号パルキッズ塾
Vol.73 | 英語の読解力育成の流れ
written by 小豆澤 宏次(Hirotsugu Azukizawa)
※本記事のテキストは引用・転載可能です。引用・転載する場合は出典として下記の情報を併記してください。
引用・転載元:
https://www.palkids.co.jp/palkids-webmagazine/palkids-juku-1905
小豆澤宏次『英語の読解力育成の流れ』(株式会社 児童英語研究所、2019年)
将来わが子が外国人と国際問題について、文化についてコミュニケーションをとっている様子を想像する。これは英語子育てをしている親であれば皆考えるゴールなのではないでしょうか。このゴールにたどり着くためには、英語のリズム回路と知識が必要になります。そう言うと「話す力じゃないの?」と驚かれる方も少なくないでしょう。
日本語で考えてみましょう。日本語で国際問題や文化について語ろうと思うと、まずは日本語を日本語で考えることができる日本語のリズム回路が必要です。これは日本語の家庭内の言語環境さえあれば3歳になる頃には簡単に誰でも身につけます。しかし、それだけではそういったトピックについて意見を交わす力は身についていません。ではどうするのか。知識を得ていかなければなりません。知識なくして意見を持つことはできないからです。ではどうやって知識を得ていくのでしょうか?会話?それとも日本語学校?いいえ、読書です。本には会話にはない膨大な語彙と表現と知識が詰まっています。3歳の時点では誰もが等しく同じレベルの日本語力なのに、その後大きな差がつくのは、ひとえにどれだけ本に触れたか、です。これは英語でも同じです。
今回は本当のバイリンガルを育てるために必要な、知識を得る源である「読解力」を育てる流れを段階的にご紹介していきましょう。
まずは絵本の読み聞かせ
読書をするといっても、どんな子でもいきなり読書をすることはできません。子どもたちはどういう形で初めて文字に触れるのでしょうか。それは「絵本」です。まずは親が絵本を読み聞かせます。
「絵本は与えすぎることはない」とよく言いますが、幼児期にはありとあらゆる種類の絵本を与えるとよいでしょう。日本語の場合は親が読み聞かせをすることができますが、英語の場合なかなかそれができる方は少ないでしょう。そのためネイティブによるナレーター音声がついた絵本を与えることが必要です。
パルキッズの場合であれば『アイキャンリード』『アイラブリーディング』がそれにあたります。『アイキャンリード』『アイラブリーディング』では合計で192冊の絵本を段階的に与えることができます。これだけの量の絵本を自前で与えるのは簡単ではありません。『アイキャンリード』『アイラブリーディング』であればオンラインレッスンの中で、日々読み聞かせをしてくれますから、親としてはとても楽に絵本の読み聞かせができるのです。
では絵本を読み聞かせることで、どういう力が身につくのでしょう。
それはフォニックスをはじめとする文字を音声化するルールです。よく「英語をやるならフォニックスだ」と言う方のせいで、フォニックスを学ばなければならないと思っている親御さんが少なからずいます。しかし、フォニックやライミングのルールは絵本を読み聞かせているだけで勝手に身につけてしまいます。それを証拠に、子どもたちは絵本の読み聞かせが終わる頃には「拾い読み」すらできるようになっているのです。
拾い読みから素読へ
絵本に触れていくことで拾い読みまたはある程度の音読ができるようになります。ここまでくればあとは非常に簡単です。「読む」という経験を継続的に積み重ねていけばよいのですが、一朝一夕ではいかないところが難しいところです。
日本語でもまともに読書できるようになるまで約10年かかります。英語であればなおさらです。あとは経験を重ねればよいのですが、長い時間をかけてじっくりと重ねていく必要があることはご理解いただいていた方がよいでしょう。
日本語の場合、どうやって素読の経験を重ねていくのでしょう。一番わかりやすいところで言えば小学校に上がった時に国語の時間でやる素読です。素読といっても単に読むだけでなく、正しく読むことが必要です。精読といってもよいでしょう。これは読む力がまだ未熟な時期であればなかなか根気のいる作業です。そのため、初めから難しいものを与えるのではなく、短く簡単なところから始めるのがよいでしょう。
パルキッズでは『パルキッズジュニア』『7-day English』の取り組みがそれにあたります。最初は子どもたちに馴染みのある会話文を読んでいきます。まるで劇の台本を読んでいるようです。会話文であれば比較的内容も理解しやすいですし、何と言っても語彙が身近なものが中心なので、読むことに集中できます。
そしてある程度できるようになったら、詩や、自然科学、といった地の文を読んでいきます。そうすることで読書へと着実に近づいていくのです。
多読のキーワードは「読み散らかす」
『パルキッズジュニア』そして『7-day English』で素読の経験を積み、ある程度正しく音声化できるようになれば、最後の仕上げです。あとはひたすら「読み散らかす」をしていきましょう。
「読み散らかす」というとなんだか雑な感じがしますが、なぜこの表現を使ったかというと、読む素材にこだわらないようにという意味を込めているからです。
日本語だとわが子が読書をしている様子に目を細めることはあっても、読んでいる本のレベルを気にすることはありません。しかし英語になると話が変わります。「この本はうちの子には簡単だから」「前回読んだ本は〇〇字だったから、今度はもっと文字数の多いものを」という具合に、ついつい内容よりも語彙レベルや文字数にこだわってしまいます。
重要なのはレベルや文字数ではなく、子どもが楽しみながら読む経験を重ねられるか、ということです。ここまでくればレベルなんかを考えず、子どもの興味に任せて好きな本を読ませてあげましょう。短くても構いませんし、エンタメ感満載の本でも構いません。大事なのは「読む経験を重ねる」ということです。
パルキッズ生で小学生で英検1級を取得した子がいますが、その子がやっていたことはただ「読む」ことです。といっても月間10万語程度読んでいたので、これはすごいことなのですが。ただ与える本のレベルを上げていったわけではなく、ただ子どもの興味にまかせて短い本、長い本、様々なものを「読み散らかしていた」そうです。
ここまでくれば英語で知識を得る段階に入っています。ぜひ日本語の読書と同じように、勉強ではなく楽しみながら英語に触れさせてあげましょう。
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小豆澤 宏次(Azukizawa Hirotsugu)
1976年生まれ。島根県出身。同志社大学経済学部を卒業後、米国ボストンのバークリー音楽大学に留学し、音楽家として活動。帰国後は幼児・児童向け英語教室にて英語講師を務める。児童英語研究所所長・船津洋氏に「パルキッズ理論」の指導を受け感銘を受ける。その後、英語教室の指導教材を「パルキッズ」へと全面的に変更。生徒数を大きく伸ばすことに成功する。児童英語研究所に入社後は、年間1,000件以上の母親への指導を行うとともに、パルキッズのオンラインレッスンのプログラムの制作ディレクションを行う。また大人向けの英語素読教材の制作ディレクションも行う。