パルキッズ塾 パルキッズ通信 | 早期教育, 英語学習の意義
2023年2月号パルキッズ塾
Vol.118 | 英語のわからないからやらない問題
written by 小豆澤 宏次(Hirotsugu Azukizawa)
※本記事のテキストは引用・転載可能です。引用・転載する場合は出典として下記の情報を併記してください。
引用・転載元:
https://palkids.co.jp/palkids-webmagazine/palkids-juku-2302/
小豆澤宏次『英語のわからないからやらない問題』(株式会社 児童英語研究所、2023年)
毎年のことですが秋口から年末にかけて、そして年始から年度末にかけて、お子様の英語教育をスタートしよう!という気運が高まるのでしょう。お問い合わせを多くいただく時期になります。そんな時に必ず出てくるご質問に「英語学習を始めようと思うのですが、うちの子全然わからないのですが大丈夫でしょうか?」というものがあります。このご質問をいただくと私は必ず「わからないからやるわけなので、まったく問題ありませんよ」とお答えします。こうやって文字にしてみると当然のことなのですが、多くの親御さんは「英語がわからなければ英語学習をスタートできない」そう感じていらっしゃるようです。
私はこの問題を「わからないからやらない問題」と呼んでいます。単語を知らないからパルキッズをスタートできない、アルファベットが読めないから絵本の取り組みが開始できない。。。わからないからやらない問題で、せっかくのお子様の学習の黄金期を逃してしまうケースが多く、幼児教育を行っている身からするととても残念でなりません。
今回はなぜ「わからないからやらない問題」が生じるのか、そしてどのように解決できるのかについて解説していきたいと思います。
理解の前に必要なことがある
「わからないからやらない問題」の原因はずばり「ある程度の理解」の後に「学習」があると考えている点でしょう。確かに学校での学習は、ある程度の予備知識があった上ででないと学習が進みません。例えば足し算や引き算を学習する前に、数字がある程度読める必要があります。小学校の国語の授業を受ける段階では、ある程度ひらがなが読めるまたは認識できる必要があります。
しかし、我々が行なっている幼児教育は、小学校以降の学習をそのまま当てはめてもよいのでしょうか?答えはもちろんNOです。
学習という言うから紛らわしいのですが、幼児期の理解を伴わないインプット中心の学習を「獲得」と呼ぶことにしましょう。「学習」の前に「獲得」が順番としてはあるわけです。そして「獲得」に必要なのは「環境からのインプット」です。つまり親御さんが「獲得」の時期にすべきことは、本来は「学習」にある教えることで理解を求めるということはせずに、ひたすらインプットするための環境を整えるだけでよいのです。
パルキッズの学習だけでなく、幼児教室プログラムもそうですが、基本は「獲得」のための教材です。お子様は大量インプットによって、本能的に英語や日本語などの言語、そして知識を「獲得」していくのです。そして「獲得」で得たものを予備知識(能力)として、さらに高いレベルの学習ができるようになるのです。
単語を知らないから英語がスタートできない?
と、ここまで全体的な話をしましたが、より具体的な例を元に話を進めてみましょう。
まず最初は「単語をあまり知らないのですが、パルキッズがスタートできるでしょうか?」という質問です。パルキッズは当然ですが「獲得」のための教材です。そのため、始めるにあたって何の予備知識も必要としません。まったく英語学習経験がないどころか、母語すら身についていない0歳のお子様もお取り組みが可能です。
さて、パルキッズの「獲得」で何を達成できるのでしょうか。それは2つあります。
1つ目は「英語のリズム回路」です。子どもたちは初めて英語の音を聞いた時、どこからどこまでが1つの単語なのかがわかりません。これは大人でもそうですが、まったく未知の言語の音を聞いた時に同じような感覚を得られるでしょう。パルキッズを1年ほどかけ流しをすることで、どこからどこまでが単語なのかがわかるようになります。つまり英語の音が単語の連続として聞こえるようになります。これが「英語のリズム回路」を獲得したということになります。
2つ目は「単語の音の蓄積」です。1つ目の英語のリズム回路を獲得することで、単語単位の音が認識できるようになります。そして聞き知った単語の音を蓄積していくようになります。もちろん単語の意味は知らなかったり、間違っていたりします。ただ音として認識できるようになった先に、イメージ化(語彙化)ができるので、まずは知っている音を増やしていくことが大切になります。
ここまで来ればおわかりですね。単語を知らないのですが、というご質問に関して、単語を知っているというのは獲得後の話になります。つまりすでにほぼゴールに達しているわけです。そうならなければ英語学習をスタートできないというのはちょっとおかしな話ですね。
読めないから絵本を与えない?
次は読解力育成の取り組みについてです。
絵本の取り組みについて「アルファベットが読めないので絵本の取り組みが始められない」と考えている方が少なからずいらっしゃいます。これも前述の問題と同様で、読めないから絵本を与えるわけで、順番が逆になっているわけです。
読解力育成においても「獲得」と「学習」にわけることができます。「学習」の場合は、いわゆる多読です。これはある程度読めるようになってから、そのスキルをさらに高いレベルにするために磨きをかける練習です。つまり読解力育成の場合、読めなければ学習の取り組みは行うことができません。
しかし「獲得」の場合は異なります。「獲得」で達成するものは、文字の音声化です。意味はよくわからなくとも、文字を音声化して読むことができる、これを目指します。そのために必要なのが「絵本」であり「音読」の練習です。
読解力育成における「獲得」を段階を追ってみてみましょう。まずは絵本を与えます。この時に必要なのは音と一緒に与えることです。子どもたちは最初は音と絵本の絵をリンクさせながら楽しみます。その時期がしばらく続くと、音と文字の関係性に気づき始めます。この文字はこの音ではないだろうか、意識はしないながらも、子どもたちの頭の中で文字の音声化のルールができあがっていきます。いわゆるフォニックスもその一部です。
すると文字→音の変換はまだできなくても、音→文字の認知はできるようになっていきます。オンラインレッスンで言うところの文字のどっちクイズで正解できるようになるのです。
認知ができるようになると、少しずつ文字を音声化できるようになっていきます。あとは経験を重ねれば、インプットを続ければ音声化の幅が広がっていくわけです。
今回は「わからないからやらない問題」について詳しく解説してみました。「わからないからやらない問題」の一番のデメリットは「獲得」の時期を失うことです。「学習」にいくために必要な「獲得」ができないことによって、結果「学習」もできないわけです。「できないからこそやる」ぜひそう考えて、お子様の英語教育の環境づくりをおこなっていきましょう。
小豆澤 宏次(Azukizawa Hirotsugu)
1976年生まれ。島根県出身。同志社大学経済学部を卒業後、米国ボストンのバークリー音楽大学に留学し、音楽家として活動。帰国後は幼児・児童向け英語教室にて英語講師を務める。児童英語研究所所長・船津洋氏に「パルキッズ理論」の指導を受け感銘を受ける。その後、英語教室の指導教材を「パルキッズ」へと全面的に変更。生徒数を大きく伸ばすことに成功する。児童英語研究所に入社後は、年間1,000件以上の母親への指導を行うとともに、パルキッズのオンラインレッスンのプログラムの制作ディレクションを行う。また大人向けの英語素読教材の制作ディレクションも行う。