2023年8月号パルキッズ塾
Vol.124 | 子どもとのコミュニケーションは伴走が大事
written by 小豆澤 宏次(Hirotsugu Azukizawa)
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引用・転載元:
https://palkids.co.jp/palkids-webmagazine/palkids-juku-2308/
小豆澤宏次『子どもとのコミュニケーションは伴走が大事』(株式会社 児童英語研究所、2023年)
夏休みが始まりました。夏休みは親子の時間が増える時期でもあります。コミュニケーションの時間が増える一方で、それがうまくいかない時は親御さんのストレスが増える時期でもあります。長年親子関係のお悩みを聞いていると、親子のコミュニケーションのお悩みが多いこと多いこと。親子だから目に見えない絆もあるはず、何もしなくても自然とコミュニケーションはできるはず、と思いたいところですが、親子とは言え別人格です。しっかりと積極的にコミュニケーションの形を作っていかないといけません。 さて、地頭力講座の中でもお伝えしていることですが、親子のコミュニケーションを円滑にする上で、親の心構えの基本は「伴走」です。子どもと同じ目線で、手を取り、ゴールを目指して一緒に走っている、そういうイメージです。 しかし、ついついやってしまうのが、コーチ化です。親御さんがコーチで、わが子が選手。そういった関係ですね。こうなってしまうと、親御さんがお子さまに「こうしなさい」「ああしなさい」「こう考えなさい」「ここはこうでしょ」といった具合に「教える」が中心になってしまいます。するとコミュニケーションが一方通行になってしまって、子ども側からの情報が出てこなくなります。すると親御さんの中で、「うちの子は〇〇と考えている」という独りよがりの思考に陥ってしまい、子どもとしては親御さんが自分のことを理解してくれないという孤独感に苛まれてしまいます。これが親子のコミュニケーションがうまくいっていない典型です。
コミュニケーションの基本は伴走
コーチ化するのではなく、子どもと同じ目線で一緒に走る、つまり伴走するということはどういうことなのでしょうか? 例えばパルキッズのオンラインレッスンを例にとってみましょう。親御さんにとってはとても簡単な内容です。ついつい「dogはこっちでしょ」「そんなこともわからないの?」「ちょっと読んでみて」などなど、子どもに教えたり、実力を試してしまったりということが起こります。こうなってしまうとお子さまとしてはオンラインレッスンが始まると憂鬱な気分になってしまい、結局「やりたくない」「嫌い」のオンパレードになりがちです。 一方伴走の場合は、親御の演技力が必要です。「dogはどっちかなあ?」とお子さまと同じ目線で真剣に考えます。お子さまが正答を選んだ時は、自分のパートナーが問題をクリアしたという感覚で一緒に喜びます。まるで二人で共通の課題に取り組んでいる、そんな心構えで取り組むのが伴走です。 するとお子さまとしてはコーチではなく親御さんに仲間意識が芽生えます。共感してもらっている、自分と同じ立場である、そうお子さまが感じることで、お子さま側からさまざまな情報が惜しげもなく出てくるようになります。親御さんとしてはその情報を得ることで、これまで以上にわが子のことがわかるようになり、結果良好なコミュニケーションが生まれるのです。 皆さんも会社での上司の対応として、前者と後者であればどちらがよいでしょうか?受け入れてもらっている、同じ目線で考えてくれている、仲間意識を感じられる、そういう関係であれば、ポジティブな印象を持ち、自分のことを伝えやすくありませんか?コミュニケーションを良好にするためには、同じ目線に立ち、相手を受け入れて、共感することが何より大切です。自分の考えを伝えることはその後です。
子どもと同じ目線に立つ練習にぴったりなのがごっこ遊び
さて、子どもと同じ目線に立って伴走するというのは具体的にどうすればよいかわからない方もいらっしゃるでしょうから、ひとつ良いトレーニング方法をお伝えします。伴走する場合、立っているステージはお子さまと同じです。日常生活の中でそれを再現するのは難しいかもしれません。例えばお子さまと一緒に幼稚園に行って、幼稚園児として遊ぶことは不可能です。そのため、擬似的にその環境を作ってみましょう。それに最適なのが「ごっこ遊び」です。 例えばスーパーマーケットのお客様と店員さんという設定でごっこ遊びをしてみましょう。もしくは、お子さまとよく行く場所を設定してもよいでしょう。そこでトラブルも含めて、さまざまなイベントを設定して遊んでみましょう。するといつの間にか、お子さまに何かを教えるという気持ちはなくなり、同じ目線で楽しく遊んでいることに気づきます。そして「こんなことも知っていたんだ」と、同じ目線に立つことで新しい発見に気づくでしょう。 「ごっこ遊び」については前述の通り、お子さまとよく行く場所を、まずは舞台として設定すると遊びやすいですね。ネタが切れてきたら、別のところに行ってネタを探すのもよいですし、いつもの場所でも違うものが見えてきたりもします(例えばお会計で単純にお金を渡していたのが、袋が必要かどうか、お支払い方法はどうするか、そういった細かいところまで目が行くようになる)。 もちろん普段の生活の中でも、できるだけ伴走を意識して生活してください。学校の宿題や、パルキッズの取り組みなどでも同じ目線に立って伴走してあげましょう。
伴走するけどそれぞれの立場の違いは忘れずに
最後に一点注意することを記しておきます。今回はお子さまとのコミュニケーションを円滑にするために、常にお子さまと同じ目線に立って「伴走」し、共感をすることをお伝えしてきました。しかしここで忘れてはいけないのが、親は親としての、子は子としての立場の違いはあるということです。 同じ目線に立つからといって、すべてのことに置いてお子さまの意見を尊重する必要はありません。子育てにおいては、さまざまなところで大きな責任が伴う判断をしなくてはいけない場面があります。主に、教育、進学、お金そして命に関わることです。ここに関しては、話し合いということではなく、どちらかというと親の専権事項として親御さんがリードして導いてあげましょう。 何でも子どもと相談して、子どもに決めさせるご家庭もあります。しかし子どもに決めさせるということは、自然と責任も子どもに委ねていることを忘れてはいけません。人生に関わる大きな判断に関しては、それを誤らないように、立場の違いはある、ということは認識しておきましょう。 ちょっと重い話になりましたが、わが子とのコミュニケーションがどうもうまくいっていない、そんな親御さんは、今一度「伴走」を意識して日々の生活を過ごしてみましょう。
小豆澤 宏次(Azukizawa Hirotsugu)
1976年生まれ。島根県出身。同志社大学経済学部を卒業後、米国ボストンのバークリー音楽大学に留学し、音楽家として活動。帰国後は幼児・児童向け英語教室にて英語講師を務める。児童英語研究所所長・船津洋氏に「パルキッズ理論」の指導を受け感銘を受ける。その後、英語教室の指導教材を「パルキッズ」へと全面的に変更。生徒数を大きく伸ばすことに成功する。児童英語研究所に入社後は、年間1,000件以上の母親への指導を行うとともに、パルキッズのオンラインレッスンのプログラムの制作ディレクションを行う。また大人向けの英語素読教材の制作ディレクションも行う。