2024年1月号パルキッズ塾
Vol.129 | わが子のOSをバージョンアップする3つの要素
written by 小豆澤 宏次(Hirotsugu Azukizawa)
※本記事のテキストは引用・転載可能です。引用・転載する場合は出典として下記の情報を併記してください。
引用・転載元:
https://palkids.co.jp/palkids-webmagazine/palkids-juku-2401/
小豆澤宏次『わが子のOSをバージョンアップする3つの要素』(株式会社 児童英語研究所、2024年)
明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。
さて、皆さんは今年の目標は決まりましたか?実はあるデータがあって、年始の目標を達成できた人の割合を調べたものがあります。まず、目標を立てない人が全体の65.2%、目標を立てたけど達成できなかった人が16.3%、そして目標を達成できた人が18.5%という数字が出ています。年始の目標を達成できるのは5人に1人以下という結果です。まだまだ、私たちが目標達成できる余地はありそうです。そして目標達成するために必要なもののひとつが「時間」です。時間をいかに大切にそして有効に使えるかが、達成できるできないの分水嶺になるようです。
私たちはついつい時間が無限にあるような感覚で日々を過ごしてしまいがちです。常にどれだけ減ったのか、どれだけ残っているのかを知るだけで、行動が変わってきます。このように時の価値を再認識できるタイムスケール時計というサービスが「MIERUE(ミエル)」です。iPhone限定ですが、無料でお使いいただけるアプリなので、ぜひ時の有効活用にご利用ください。
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前置きはここまでにして、新年にふさわしいネタは何かないかと考えていたのですが、今回はエビデンスがあるわけではないですが、私の持論を皆さんにお伝えしたいと思います。
私はとにかく自分のOS(自分をコンピュータに例えています)をバージョンアップし続ける人生を送りたいと考えています。その方法が何であれ。そして自分が新しい自分にバージョンアップし、気持ち良いと感じるために必要なのが、人生における緊張と弛緩だと思っています。元々ジャズベーシストだったので、音楽に例えますが、ジャズをジャズたらしめるものはインプロビゼーションと呼ばれる即興演奏です。その即興演奏において、聴いている人々が気持ちよいと感じるためには、緊張と弛緩が必要であると言われています。緊張とはいわゆる不協和音なども含めた地に足がついていないような不安定な音選びです。そしてそこから誰が聴いても落ち着く協和音へと着地する。これが弛緩です。緊張の度合いが大きいところから弛緩すればするほど、気持ち良くなります。
私は人生においても、この緊張と弛緩を作り出すことが、自身をバージョンアップさせ、より良い演奏(人生)になると考えています(繰り返しますが私の主観です)。
Get out of your comfort zone!
緊張と弛緩の話をしましたが、弛緩の部分は簡単です。自分が心地良いと感じる日常へと戻ることです。家でゴロゴロしたり、食べたいものを食べたり、会いたい友人に会ったり、何のストレスもないルーティンです。
一方、難しいのが緊張です。ある程度のストレスを感じる行動です。誤解をしていただきたくないのですが、緊張とは「やりたくないことをする」ことではありません。人に言われたから、とかではなく、「やらなければいけない」と自分自身が感じていることをすることです。面倒だなあ、またでいいか、そう思っているけれど、どこかで踏ん切りをつけてやらないといけないことです。ここは人それぞれだと思いますし、もうすでに自分自身でわかっていることです。
“getting out of your comfort zone.”という言葉を聞いたことある方は多いと思います。私がお伝えしている緊張とはまさにこのことなのです。気持ち良いと感じる温かい布団から抜け出して、すべきことをしたご経験は誰でもあるでしょう。そしてすべきことをやった後に、布団の中に戻ってみてください。そのまま布団に這っているよりも、もっと気持ちが良いと感じている自分に気づくはずです。
そしてこれを繰り返すことで、自分自身のOSがバージョンアップされ、人生がより豊かになると私は考えています。
OSのバージョンアップに必要な3大要素
さて、あくまでも私自身ですが、OSをバージョンアップさせるのに必要な3大要素があると考えています。まず大前提として、私は「経験」こそがOSをバージョンアップさせるきっかけになると思っています。そして私は「経験」を3つの要素にわけています。「旅」「読書」「新しい人との出会い」です。これらすべてに共通するのは非日常的な経験ができるものであり、ある程度のストレスを感じるものであることです。ひとつずつ見ていきましょう。
まず「旅」です。旅というと楽しいばかりのイメージがありますが、自分が行ったことのない新しい場所への旅というのは、良いも悪いも含めて想定外のことが起こります。そしてこれまでの常識では計ることができない場面にも遭遇します。そんな時にどう行動するのか、どのように考えるのか、それが自分が日常的に使っていない脳の一部を刺激し、そしてそれを経験としてストックすることで自分のOSをバージョンアップできるわけです。
次が「読書」です。読書では実際に経験しているわけではありませんが、ストーリーや他者の考えを擬似的に経験することができます。特に私の場合は、読書がなかなか進みません。読みながら脳がフル回転して色んなことを考えてしまい、ついついページをめくっていることがあるので、度々前のページ戻るような読み方をしてしまいます。そんな私だからだと思うのですが、読書はとても疲れますし、ストレスを感じる作業です。ただ1冊読み終えるころには、自分の中に読書で得た課題とその解決するロジックが残り、新たな考え方を得た気持ちになります。
最後が「人との出会い」です。これはいつも会う友人と遊ぶことではなく、知らない人に会うということです。私は旅先や初めて訪れた飲食店では、できるだけ知らない人と話すようにしています。できれば私も誰にも話すことなくゆっくり自分の時間を過ごしたいのですが、あえてストレスを感じることをするようにしています。当たり前ですが、世の中には色んな人がいます。特に自分とは違う考え方を持つ人と話しをすると、「この人は何を考えているんだろう」「どうしてこう考えるんだろう」とその人を理解するのに必死になります。こうやって自分が持っていない考えに出会うことで、常識だと思っていることが覆されることがあります。辛いこともありますが、振り返るとその多くは自分にとってOSをバージョンアップするきっかけになっていると思います。
子どものOSは緊張と弛緩を繰り返してバージョンアップされていく
子どものOSをバージョンアップさせるために、あれをやった方がいい、これをやった方がいい、とさまざまなところで書かれています。田舎で農作業を体験させた方がいい、海外へ行かせた方がいい、イベントに参加した方がいい、などなど、さまざまありますが、忘れてはいけないのが、それ単独でOSがバージョンアップすることはないということです。
OSをバージョンアップさせるには、日々、緊張と弛緩を繰り返すことです。この繰り返しが大切です。緊張に関しては何でも構いません。大袈裟で手間がかかるようなことでなくてもよいのです。行ったことのないところへ行ったり、読んでない本を読んだり、知らない人に会ったりするだけで構いません。子どもたちはそういった非日常に対して、大人以上にストレスを感じます。そのため、大人よりもずっとComfort Zoneから抜け出すことは簡単です。ただ、子どもなので、すべきことでもやりたくないことはやりたくないわけです。そこで登場するのが親御さんです。Comfort Zoneから抜け出す時に、親御さんが伴走をしてあげましょう。一緒に出かけてあげたり、同じ本を読んで内容を共有したり、普段会うことができない大人に会わせてあげたり、そういったことをしていきましょう。
2024年、まだスタートしたばかりです。今年は淡々と緊張と弛緩を繰り返すことを意識してやってみましょう。お子様のOSがメジャーバージョンアップされるかもしれません。
小豆澤 宏次(Azukizawa Hirotsugu)
1976年生まれ。島根県出身。同志社大学経済学部を卒業後、米国ボストンのバークリー音楽大学に留学し、音楽家として活動。帰国後は幼児・児童向け英語教室にて英語講師を務める。児童英語研究所所長・船津洋氏に「パルキッズ理論」の指導を受け感銘を受ける。その後、英語教室の指導教材を「パルキッズ」へと全面的に変更。生徒数を大きく伸ばすことに成功する。児童英語研究所に入社後は、年間1,000件以上の母親への指導を行うとともに、パルキッズのオンラインレッスンのプログラムの制作ディレクションを行う。また大人向けの英語素読教材の制作ディレクションも行う。