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2012年01月号特集

Vol.166 | 誌上初公開 『子どもが英語を話しだす!!』

読んでわかる「パルキッズワークショップ」

written by 船津 洋(Hiroshi Funatsu)


※本記事のテキストは無料で引用・転載可能です。引用・転載をする場合は必ず下記を引用・転載先に明記してください。

引用・転載元:
http://www.palkids.co.jp/palkids-webmagazine/tokushu-1201
パルキッズ通信2012年01月号特集『誌上初公開 『子どもが英語を話しだす!!』』(著)船津洋 ©株式会社 児童英語研究所


 2011年は私たちにとって試練の年でした。ただ、辛い中にも「なでしこJAPAN」の活躍を始め、女性の強さに勇気づけられた年でもありましたね。
 そんな1年も終わり、新しい年を迎えるにあたり、いつまでも足踏みをしているわけにはいきません。政治や経済、地域のあり方や家族のあり方、生き方や教育のあり方など、私たちを取り巻く環境には見直すべき問題が山積しています。それらをひとつずつクリアにしながら、一人一人が一歩ずつ前進を続けて行く年にしなくてはいけませんね。
 さてさて、2012年。気分を新たに、元気に毎日を過ごしていきましょう。
 今回は「子どもの英語教育の原点」に戻るために、毎回ご好評頂いているパルキッズのワークショップを誌上にて再現してみたいと思います。

 幼児の英語教育に限りませんが、何か方針を決める時には、現状をしっかり理解することと、目標をくっきりとさせることが大切です。そこでワークショップでは「私たちと英語の関係」「子どもが母語を身につける過程」などの言語を身につけさせるようとする教育法と、実際に言語を身につけていく自然な過程を見比べます。そして、その後に「幼児に英語を身につけさせる方法」へと具体的に話を進めていきます。
 それでは、順番に進めて参りましょう。


| 私たちと英語 

 私たちの時代は、中学校から英語の勉強がスタートしました。今では小学生から英語に接する機会が与えられるようになっていますが、お遊びのようなものなので、実際の英語学習のスタートは中学と考えて良いでしょう。そして、ほとんどの子が高校へ進学し、高校の卒業率も(親の涙ぐましい努力のおかげで)抜群に高い日本の教育環境の中で、少なくとも6年間は英語の勉強をすることになります
 これを時間に換算してみましょう。
 まず、都市部では最近人気が集中している中高一貫校。なぜ中高一貫校が人気なのでしょう。理由は簡単。「高校入試がないから?」これは子どもたちにとっては福音ですが、その代わりに熾烈なる中学受験戦争が待ちかまえています。中高一貫校の人気の理由は「大学入試に焦点が合っている」ことでしょう。
 少し余談のようなりましたが、実はココがかなり重要なポイントです。大学入試の受験科目で平均して苦労させられるのが「英語」なのです。大学受験といえば英語攻略といって良いほど、みんな英語で苦労しているのです。その証拠に、予備校などでも最も活況を呈している課目の多くが英語の授業です。つまり、大学受験には英語攻略が不可欠。そして、その英語に手厚いのが中高一貫校なのです。
 私立の一貫校では中学から少なくとも週に5コマ、多ければ7コマ以上が英語に割かれています。公立校ではわずか3コマです。もっとも、公立校も来年度から4コマに増やす予定ですが、単に量を増やせばよいのか?という疑問も残ります。公立校もようやく重い腰を上げたイメージです。しかし、それにしても中高一貫、特に私立校の英語に対する重きの置き方は、大学受験を目標に設定しているからに他なりません。
 時間換算に話を戻しましょう。公立で週3コマ、私立で週7コマ。高校へ行けばもっと英語のコマ数は増えるので、ザックリと間を取って週に5コマ英語の授業があったとしましょう。すると、6年間で1050コマ分です。加えて日々の宿題や塾で勉強する英語の時間も併せ考えます。もちろん大学受験などで頑張ってやっている子は2000時間以上勉強しますし、やらない子は学校の勉強だけ、なんて事もありますが、ざっくりと平均的には6年間で1500時間としましょう。
 1500時間。1日8時間英語ばかり勉強したとして、なんと187日間分です。これを30日で割って半年、なんて数字ではありませんよ。学校教育での1年間は35週です。週休2日ですので、月から金までの5日間をかけて、1年で175日間、学校に通って勉強します。
 つまり、私たちは1年間に学校で勉強する時間より長く、英語を勉強してきているのです。朝8時半から昼食で1時間休憩を取ったとして5時半まで、英語ばかりを、1年間にわたって勉強している。それほどの時間、私たちは英語を勉強してきているのです。


| 私たちの身につけた英語力

 それだけ勉強したわけですが、そこで身につく英語力とは、どんなものなのでしょうか。
 学校での英語学習は、主に「英文和訳」を軸に進められます。見ず知らずの言語を理解しようとする時は、もちろん、その言語をそのまま理解することは不可能ですので、一旦日本語に訳して、それから理解を促すわけです。最も理に適った方法です。
 そこで、まずは英単語がどういう意味なのか、ひとつひとつ日本語訳を覚えていきます。自作の「単語帳」の出番です。僕もせっせと単語帳を作った口ですが、皆様も記憶に残っているのではないでしょうか。
 単語帳には、ふたつの役割があって、ひとつ目は「日本語訳とペアで英単語の代表的な意味を覚える」こと。そして「スペルを確認する」ことです。英単語はローマ字ではないので、小学校で習ったローマ字アタマでは、英単語とスペルの関係がなかなか理解できません。例えば、「水曜日」はカタカナ英語で言えば「ウェンズデー」ですが、英語のスペルは ‘Wednesday’ ですね。これなどは例外的に難しい方ですが、’a’ を「ア」と読ませるところから始まる「ローマ字式」に慣れていると、英語のスペルを身につけるのは意外に難しいのです。
 そんな艱難辛苦を乗り越えて、私たちはひとつ、またひとつと英単語を日本語訳とのペアで覚えていきます。中学校で1500語、高校では2500語。合わせて4000語です。ちなみに今の学生たちはこれより少ない量で済んでいます。善し悪しは別として、私たちの頃に比べて、楽になっているようですね。しかし、センター試験で良い点数を取ろうと思ったら、最低でも4000語くらいは必要です。我々の時代には、そのくらいの単語はどうにか学校で教わっていたようです。
 4000語といえば、小学校低・中学年ほどの語彙です。日常会話で必要とされる最低限の語彙が1000語程なので、4000語あれば議論を交わすには心許ないものの、日常的な会話や、物語の理解などには十分すぎるほどの語彙ですね。つまり、我々は日常会話や物語などを理解するには、十二分な英語の語彙を身につけている(?)のです。
 加えて、私たちは学校で随分と細かく「英文法」を勉強してきました
 現在進行形を何とかクリアし、過去形から受動態、そして完了形へと複雑な文法解説に向き合っていきます。それらに伴う動詞の不規則変化などには、随分と手を焼いてきましたね。中学2年生にもなると、あちらこちらに「英語のおちこぼれ」が見受けられるようになります。これは僕が中学生だった数十年前の話ですが、子どもたちを取り巻く英語の環境は、数十年経った今日も、どうやらあまり変わっていないようです。
 さて、文法に関しては、完了形程度では終わりません。ここから仮定法とか、いろいろな「構文」が出てきます。こうなるともう謎解きです。僕も倅たちから「文法解釈」を求められることがありますが、どうにも難しすぎて―もちろんそんなことは、おくびにも出しませんが… ―スパッと答えられないこともあります。ちなみに、外国人のスタッフたちに尋ねてみても、答えは分かるが「なぜか」と説明出来ないことが珍しくないのです。それほど難しい英文法を、私たちは学んでいきます。
 ちなみに、アメリカ人の英文法はかなりいい加減です。小学生なら’are’と’is’の間違いは珍しくありません。それが正しいと思いこんでいるのですから、直しようもありませんね。中学生にもなれば、文法に少しは気を遣うようにもなりますが、それは英語の授業での話。日常的には(我々が言うところの)英文法に則った英語を使っているわけではありません。しまいには、日本人なら中学生でも知っているような文法項目を、アメリカ人の大学生が知らなかったりするほどなのです。
 つまり、日本人はアメリカ人以上に英文法には詳しいのです。いわば英文法のプロ。
 さて、アメリカ人より「英文法」に精通していて、語彙も小学生並みにはある。そんな私たちですが、いざ英語を使うとなると、どの程度使いこなせているのでしょうか?
 答えは明らかですね。私たちは英語を使いこなすどころか、ほとんど使えていません
 日本人は「英会話が出来ない」と言われますが、実は英会話だけではなく、「英語の読解力」もありません。 英語を読めば理解できる、と感じている方もたくさんいらっしゃるのですが、熾烈な受験戦争をかいくぐって大学まで行っていても、実は簡単な英語の小説すら読めないのです。もし会話が出来ないまでも読解力があるのであれば、『Newsweek』や『Times』を毎週読んでも良いでしょうし、洋画を聞き取ることが出来なくても、小説で読むことが出来るずです。しかし、仮に雑誌や小説を英語で読めるようであれば、それはすでに英語を使いこなせる人、ということになるのです。
 そう考えれば、ほとんどの日本人にとって「英語はまるで使っていない」に等しいでしょう。使っている方々は大いに使っていて、使っていない方はまるで使っていない。使うか使わないかの両極端。出来る人と出来ない人がくっきりと二極化しているのです
 では、出来る人はどのくらいいるのでしょうか?一説によると0.2%。500人に1人は、英語を使いこなしているようです。参考までに引き合いに出せば、高校球児がプロ野球選手になれる確率が0.5%程です。
 確率だけで見ると、英語を身につけるよりプロ野球選手になる方が倍以上確率が高いのです。英語を身につけるというのは、この国においてはよほどの一大事業のようですね。


| 子どもと母語

 このように言語―この場合には英語―を「教科」として勉強する方法では、散々時間と手間をかけている割には、小説も読めない、海外旅行ですらも苦労するわけです。つまり、文法博士ではあっても実用的な英語力はほとんど身につけられないのです。「”実用”英語技能検定」いわゆる「英検」が英語力を測るのに重宝されている所以でしょう。
 さて、期せずして私たちの英語学習が「英語を身につけられない例」となってしまいましたが、それでは次に「言語を身につけられる例」を見ていきましょう。
 言語間に難易の差はありません。アメリカに生まれれば子どもたちは100%英語を身につけますし、日本の子どもたちも100%日本語を身につけます。お子さんを見てください。1歳になれば簡単な指示に従えるようなり、2歳になればお喋りが始まり、3歳になる頃には基本的な意思の疎通、つまり日常的な言語理解は出来るようになるのです。
 もちろん、子どもたちだけではありません。今や親である私たち自身、生まれてからわずか3年間で日本語を身につけてきました。私たちの両親も祖父母も、生後から数年間で日本語を身につけてきたのです。
 それでは、一体どのくらいの時間、日本語を勉強したのでしょうか?この質問自体がナンセンスですね。生まれて間もない赤ちゃんや、1・2歳児が日本語を勉強することなど出来るわけがありません。そこで、赤ちゃんが日本語に接する時間を参考にしてみます
 まだ寝返りの打てない頃の赤ちゃんを想像してみましょう。
 少し大きくなると、機嫌良く目を覚ましている時もありますが、赤ちゃんは泣き声と共に目を覚まします。オムツが気持ち悪いのか、おなかが空いているのか、穏やかに泣いています。さてここからです。赤ちゃんたちにどんな声をかけていますか? 
 赤ちゃんを抱き上げると、まずはおむつを交換しますね。「はいはい」「起きちゃいましたね」「ちょっと待ってね」「オムツ換えましょうね」こんな声をかけます。おむつを換えながら「おしっこたくさん出ましたね~」「キレイキレイしましょう」などなど、他にも「ウンチ」「おしり」などの単語を子どもに投げかけます。赤ちゃんたちは意識するでもなく、耳を傾けるでもなく、母親の語りかけに晒されます。
 その後は、授乳です。さて、授乳中には何か語りかけをしますか?おっぱいをあげながら、愚痴を言ったり、昔話を聞かせたり…。そんなことはしませんね。多少の声掛けはあったとしても、基本的には黙々と授乳します。そして、授乳終了。再び眠りにつきます。
 さて、目を覚ましてから寝るまで、年齢によって幅はありますが、時間にして30分から1時間くらい。この間の母親の語りかけを、全て録音したとしましょう。そして、無音の部分をカットして、声の部分だけを繋げてみたら、実質5分間の語りかけがあったとしましょう。つまり、1回の授乳セッションで5分間の語りかけ、深夜早朝の授乳時には、語りかけをしないと考えて、日中6回授乳をすれば、5分×6回で30分間、赤ちゃんに語りかけていることになります。
 もちろんこれより多いご家庭もあれば、これより少ないご家庭もありますが、平均すれば30分の語りかけです。この数字は、多いでしょうか少ないでしょうか?
 では、語りかけの「質」の方はいかがでしょう? 赤ちゃんのおしりがすべすべしているとか、ウンチがいっぱい出た、とか臭いとか、そんな母親の言葉を赤ちゃんたちはじっと聞いています。とても「教育」というような、優れた言語環境ではありませんね。
 さて、それに加えて、赤ちゃんは家族の声を聞いています。仮に第1子と想定すると、お父様がお母様と交わす会話を耳にしています。朝は忙しく連絡事項のやりとり程度でしょうから、主に帰宅後から入浴、夕食、団らん、就寝までの会話を耳にすることになります。仮にこれを母親の語りかけと同じように音声処理をした場合、正味1時間の語りかけがあったとしましょう。
 それに、母親の語りかけ30分を加えて、都合1.5時間、日本語を耳にすることになります。
 日本語がおぼつかない時期に外国語教育を施すと、日本語の発達に悪影響を及ぼす。こんな事を耳にしたことがありますが、どうなのでしょう。一般的な子どもたちが日本語を身につける言語環境とは、それほど立派な環境ではありません。どころか―言い方が悪いですが― むしろひどい環境です。そんな環境でも、子どもたちは日本語を身につけてしまいます。
 つまり、言語を身につけるのは、幼児にとっては簡単なことなのです。英語に悩まされてきた私たち大人からすれば、言葉を身につけるのは大事業のように感じてしまいがちですが、事実は全く逆。言語を身につけるのは簡単。従って、ちょっとやそっと英語教育を加えたくらいで、日本語の発達に影響を及ぼすことなど無いのです。この点はご心配なく。
 話が少し逸れましたが、子どもたちは1日1.5時間ほどの、日常会話を耳にすることで日本語を身につけることができるのです。スゴイですね。


| 子どもたちの身につける日本語

 わずか1日1.5時間しか日本語を聞いていない子どもたち。書き忘れましたが、テレビやラジオ等の音を耳にしている時間は含みません。なぜならそれらがない時代でも、子どもたちは日本語を身につけてきたからです。
 ここで、ちょっと余興です。1日1時間半のリスニングを3年間実践すると、1.5時間×365日×3年=1642時間です。私たちが学校教育の過程の中で英語に接するのが1500時間ですから、子どもたちが日本語を身につけるのに必要な時間数と奇しくも符合するのです。面白いですね。(あ、残念ながら私たちの方は上手く行かなかった例ですので、本来比較にはなりませんが…)
 それでは、子どもたちの言語力、日本語の実力の程を見ていきましょう。
 以下は各年齢における幼児たちの知悉語彙数です。あくまでも一般的な数字ですが、2歳で250語、3歳で900語、4歳で1500語となっています。早期教育を実践すると、それぞれこの4倍ほどになりますが、今回はあくまでも言語獲得の平均値として、上の数字を参考にします。
 これを子どもの姿に照らし合わせて見ていきましょう。子どもは生後半年から1歳で「日本語のリスニング能力」を身につけます。といってもあまりピンと来ないと思いますので、少し説明しましょう。
 例えば、私たちが英語を耳にしても、それは「英語らしい音の固まり」に過ぎず、その中にたまに「英単語」を見つけられる程度です。これが、つまり英語が聞き取れない、ということです。ただ、そんな私たちも日本語は聞き取れます。つまり、日本語を知らない外国人にとっては「日本語らしい音の固まり」に過ぎない日本語も、私たちの耳には「単語の連続」として知覚されます。
 ただ、この感覚は実感できないのです。試しに日本語を聞き取れているのを実感してみてください。「実感しよう」と意識してみてください。どうです?実感できませんよね。これがリスニングの能力の正体なのです。
 さて、このリスニング能力を、子どもたちは1歳までに獲得します。つまり、日本語は単語の連続として彼らの耳には聞き取れているのです。
 ここで、朗報をひとつ。「パルキッズ」をかけ流して1年以上経った読者の方がいらっしゃいましたら、おめでとうございます。お子さんの耳には英語は「英語らしい音の固まり」ではなく「英単語の連続」として知覚されているのです。
 でも、これは良いことを知った!と、お子さまに「あなた英語聞き取れているのね」などと聞いてはいけません。なぜなら、既述のように言語を聞き取れるというのは実感できないのです。「聞き取れているのね」と言われても、子どもにすればその意味が分かりません。聞くのは止めてくださいね。
 日本語を聞き取れるようなるのと同時に、子どもたちは、聞き取った単語も次々と記憶していきます。正確に言えば、単語を記憶していくのではなく、単語らしき「音の固まり」を記憶するのです。この段階では「知っている音」としての記憶のみで、まだ意味は添えられていません。そこで、これらの「音だけ知っている単語」を便宜的に「仮語彙」と呼んでいます。
 単語を聞き取れるようになると、切り出された単語を仮語彙として蓄積していくわけです。この様子に関しては、とある実験で明らかにされていますが、今回は紙数の関係上割愛いたします。いずれにしても、子どもたちは日々「仮語彙」を溜め込んでいると考えてください。
 同時に、それらの蓄積された仮語彙に意味を付けていく「語彙化」も行われていきます。この様子を年齢を追ってみてみると、まず1歳では100語程度の語彙があると考えられます。自分の名前や、口にするもの、身に着けるものなど少しずつ語彙を増やします。この段階での発語は単語単位です。
 それが2歳前後になると変化が訪れます。単語単位で言葉を発していたのが、今度は文章を口にするようになるのです。二語文の始まりです。文章で話す、とひと言で言ってしまえばそれまでですが、実はこれは凄いことなのです。生まれてから2年間、基本的には家族の会話を耳にするだけ。それだけで文章を話す、つまり日本語の文法らしきモノを身につけてしまうのです。さらにすごいことに、この段階での知悉語彙数はわずかに250語。ちなみに余談ですが、小学校で始まる英語とのふれあいの時間の2年間で接する語彙が250語だそうです。
 二語文を話すようになると、子どもたちは途端に口数が多くなります。これがお喋りな2歳の始まりです。聞き取れるようになってからため込んできた仮語彙を、周囲との会話 ―「あれなに?これなに?」― によって意味を付けている、つまり語彙化しているのです。
 そして、3歳。気付けば日本語を使いこなせるようになっているのです。もちろん論理的な会話は出来ません。語彙もわずか900語足らず。しかし、日常的なことを聞いて理解できるのは当然のこと、テレビを観ていてもザックリと理解できています。それどころか、彼らにとっては耳にするもの全てが日本語の教材。ただ生活しているだけで、どんどん語彙を増やしていくのです。
 もちろん、日本語の文法など知りません。ただ、文法らしき「日本語のルール」は身につけていますので、日本語を習っている外国人が話すような変な日本語は話しません。例えば「着る」と「切る」。これらは同音ですが、「着よう」「切ろう」などと活用すると形が変わります。このような、複雑怪奇で例外の多い日本語のルールも、わずか3歳にして何となく身につけているのです。3歳で日本語の文法を知る。これは驚嘆すべきですね。
 さらに、驚くべきことがあります。彼らが日本語を身につけていく過程で、お母様やお父様は日本語を教えたでしょうか?それとも、英会話教室のように、日本語の会話学校に入れたでしょうか?そんなことはありませんね。誰も日本語を教えていないのです。我が子を授かった時に「この子にはしっかり日本語を教えよう」などと感じる親御さんはいないはずです。そして、このような親の無関心にも関わらず、けなげにも子どもたちは日本語を身につけるのです。
 さらに言えば、当の子どもたち自身は、全く無自覚です。子どもたちは「日本語を勉強しよう」とか「今日は10単語覚えよう」などといった意識はまるでなしに、気付けば日本語を身につけてしまっているのです。
 しかも、これは確率論ではありません。「あの子は出来るけどうちの子は出来ない」などということではなく、日本に育てば間違いなく100%の確率で日本語を身につけるのです。言語とは本来こういうものなのかもしれません。


| どちらが良いですか?

 それでは、ここで整理整頓してみましょう。
 まずは、私たちと英語。中高生の間、6年間にわたり、学校や塾、宿題などを併せれば1500時間も勉強してきました。そこで身につけたのは4000語あまりの語彙?とアメリカ人も知らないような文法知識。そして、英語を使いこなせるようになる確率は0.2%。東大ですら同年齢人口でみた合格率が0.3~0.4%くらいですので、東大より狭き門ということになりますね。
 ここで、とても大切なコスト面を見ていきましょう。時間的コストに関してはすでに書いていますので、金銭面を見てみます。
 さて、ご自身の英語には、いくらかけてきましたか?
 中学校で初めて英語に接すると、ひょっとするとNHKの英語講座のテキストを買ったかも知れませんね。僕もその中の1人です(2冊目は買いませんでしたけど…)。この程度なら数百円です。でも、それだけではありませんでした。雑誌に載っている英会話教材。数万円から数十万円しますね。さらに塾へ通えば英語だけでも年間10万円くらいはかかります。すると、6年間で5, 60万円。英会話学校へ通えば、加えて数十万。これだけで100万円くらい超えてしまいそうです。
 さらに、高校で留学すれば、半ば公的な機関を使っても1年間で100万円は下りません。大学なら学費だけで年間100万円。渡航費やらハウジングを考えれば200万円くらいかかるでしょう。つまり、英語には少なくとも50万~200万以上かけていることになるのです。それでようやく、身につく確率=0.2%なのです。
 僕などは、かなりラッキーな部類です。誰もが留学できるわけではありませんし、それだけのコストをかけられないと思います。それを自覚しているので、気軽に人には勧められないのです。
 では、もう一方の「子どもが母語を身につける過程」に目を移しましょう。
 子どもたちは生まれてから3年間、機械音以外の母親や家族の会話を1500時間ほど耳にして日本語を身につけます。その段階での彼らの語彙は900語程度。文法は誰にも教わっていないものの、何となく日本語の文法を知っているようです。そして、身につく確率はなんと100%です。そして、コスト面は?一体全体、子どもたちが日本語を身につけるのにいくらかけたでしょうか?
 そうですね。0円です。

 方や、100万円、200万円とお金をかけて、一向に出来るようにならない方法。
 方やお金をかけず、誰も苦労せず、気付けば身についている方法。
 どちらが良いのか。言うまでもありません。楽でコストのかからない方が良いに決まっていますね。そして、その、楽ちん・ローコストの英語獲得を現実の物にしたのが「パルキッズ」なのです。


| 「指1本」で出来るバイリンガル教育

 私たちは「ゴールデンフィンガー」と呼んでいますが、これは、母親の人差し指のことです。母親の人差し指がゴールデンというのは、お子さまの英語教育が、ひとえにお母さまの人差し指、つまりCDやパソコンの音声プレイヤーの「スイッチを入れる指」にかかっているからです。
 言語に難易の差はありませんので、日本語を身につけられる子は、英語も身につけられます。また、子どもたちが身につける言語数にも制限はありません。
 日本では、バイリンガルが珍しいので「2カ国語話せる」ことが特殊なことと思えるのかも知れませんが、実は日本から一歩外へ出ればバイリンガルなど珍しくも何ともありません。それこそ、当たり前のように2カ国語を操る人たちばかりです。アジアを見てもフィリピンにインド、教育を受けた人であれば、バイリンガルは当たり前ですし、シンガポールでは3カ国語も当然です。アジアばかりではありません。ヨーロッパでもバイリンガルは珍しい存在ではなく、ビジネスで各地を飛び回る人なら、少なくとも2カ国語は使いこなせます。英語しかしゃべれないと思われがちなアメリカにおいてすら、人口の十数%がバイリンガルなのです。0.2%の日本人とは大違いですね。
 つまり、人類の脳のポテンシャルとして2、3カ国語は完全に許容範囲なのです。我々、特に日本人はその能力を使っていないだけだったのです。
 そして、その脳に備わっている学習能力を引き出すのが「音の環境」です。ちなみに、大人の場合には、アメリカに数年住むようであれば別ですが、言語の音環境だけで外国語を身につけるのは難しいですね。その証拠に、洋画好きな人が年に数十本洋画を見て、それを何十年続けてもリスニングが出来るようにはなりませんね。洋楽好きの方など、それこそ、年間10,000時間くらいは音楽を聴くでしょう。でも、それだけで英語が出来るようになったという話はあまり聞きませんね。
 ただ、幼児の場合には違います。「音の環境」があるだけで母語を身につけたように、外国語の「音の環境」を創り出せば、国際結婚の家庭に育つ子のようにバイリンガルに育ちます。(ちなみに国際結婚の場合、父方・母方というよりは、住んでいる国の言葉が主言語となって現れますが、実際は両方とも出来るんですよ)つまり、簡単な話、日常生活で母親が子どもに語りかけるような内容と、家族の会話の「音の環境」を英語で作ってやれば、日本にいながら英語も身につけられるのです。
 そして、母親はそのゴールデンフィンガーでスイッチを入れるだけ。これで、1年間かけ流せば、子どもたちは英語のリスニング能力を身につけ、その後一生涯にわたって、私たちが体験したような「英語は聞き取れない」という思いをすることはありません。彼らの耳には、日本語と全く同じように、英語も単語の連続として響き続けるのです。


| 何でも良いのではありません。2つの音環境のポイント

 ここで注意すべきポイントが2つあります。ひとつ目は「音の環境の量」、もうひとつは「音の環境の質」です。
 まずは「音の環境の量」です。一般的に、幼児教育の場では「入力」と呼ばれていますが、「音の環境作り」には3つのルールがあります。1つ目にコンスタントに与えること、2つ目に繰り返し与えること、3つ目に定期的に大量に情報を与えること
 日本に住んでいれば、毎日、日本語を耳にするように、アメリカに住んでいれば、毎日、英語を耳にするように、常に脳を刺激し続けなくてはいけないのです。(今まで気まぐれだった方は、これからしっかりしてくださいね。ご心配でしたら掲示板でお答えします。)継続は力なり、などと言いますが、まさしくそれ。コンスタントに続けることが大切です。
 そして、繰り返し与えること。1日1回ではいけません。「パルキッズ」では1日8回ほど繰り返せば、言語獲得に必要な音環境である「1日1.5時間(90分)」をクリアできるように作られています。繰り返し流しましょう。
 繰り返しは大切ですが、入力は同じものばかりではいけません。脳が飽きてしまい、入力に反応しなくなるのです。一定期間繰り返し音環境を作ったら、どんどん新しい情報を入れて、脳にとってフレッシュな状態を保たなくてはいけないのです。毎月、新しい情報へ切り替えて入力してあげましょう。
 次の「音の環境の質」に関してです。英語なら何でも、かけ流せばよいというものではありません。洋楽が好きだからといって洋楽のCDをかけ流しても、英語の回路は作られることはありません。もっとも、リズム感は良くなるので、かけ流しは大いに結構ですが、「バイリンガル教育」をゴールに据えた場合には、洋楽だけでは不十分です。
 また、大人用の英語教材をかけ流しているケースもあるようですが、これも片手落ちです。幼児が英語を獲得するのに大切なのは、日常と密接な内容の会話が、あれこれ違った形で入力されることです。すでに述べましたが、日常の語りかけや家族の会話を、英語で再現しなくてはいけないのです。であれば、トラベル英会話やビジネス英会話ではダメ。難しい単語を覚えるようなものもダメです。簡単な日常会話が、繰り返しいろいろなシーンで登場しなくては、イメージへと繋がっていかないのです。
 「パルキッズ」の場合には、最初の2年はとしおくんの日常会話。次の2年でケイくんの幼稚園の生活を中心に、会話がふんだんに入力できます。最初の2年で、日常的なことと基礎概念のおさえ、後半の2年で読解力と語彙の強化を行います。読解力に関しては、またの機会に譲るとして、この4年分の教材でトータル4,000語ほどの入力が出来てしまうのです。フラッシュカードだけでも2,500語あるので、語彙的には十分に満足できます。ネイティブの小学生ほどの英語力を身につけることが出来ます。これは誇張ではなく、実際に「パルキッズ」で育った子どもたちが留学すると、現地の学校で、全然問題なく授業が受けられてしまうのです。
 さらに、歌や絵本で基礎概念を強化。これら「日常会話」を軸としてフラッシュカード、絵本、歌などが大量に用意されているので、基本的にご家庭ではお母さまがスイッチを入れるだけで、完結してしまいます。
 教室での25年以上に及ぶ実践の結果、ギリギリまで家庭学習をシンプルにすることが実現しました。ご家庭ではお母さまがスイッチを入れるだけ。それでバイリンガル育児は完成です。ただし! 入力だけでは、実感できる英語力にはなかなか繋がりません。そこで、入力を出力へ。「なんとなく分かる」英語力を「ちゃんと分かる!」英語力へと結びつけていく仕上げが必要となります

 ただ、今回は長くなりすぎましたので、この辺で締めくくらせていただいて、残りは次号以降で解きほどいていきたいと思います。また、講演会なども企画していますので、是非ご参加ください。
 「パルキッズ」の先輩たちは、どんどん英検に合格していっています。繰り返しになりますが、「パルキッズ」は確率の教育ではありません。日本語が出来る子なら英語も出来るように作ってあるのです。パルキッズをしっかりとご活用いただき、今年は英語力を実感する英語力へと仕上げていきましょう。


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プロフィール

船津 洋(Funatsu Hiroshi)

株式会社児童英語研究所 代表、言語学者。上智大学言語科学研究科言語学専攻修士。幼児英語教材「パルキッズ」をはじめ多数の教材制作・開発を行う。これまでの教務指導件数は6万件を越える。卒業生は難関校に多数合格、中学生で英検1級に合格するなど高い成果を上げている。大人向け英語学習本としてベストセラーとなった『たった80単語!読むだけで英語脳になる本』(三笠書房)など著書多数。

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