パルキッズ通信 特集 | バイリンガル教育, 子育て論, 教育費, 日本の教育, 早期教育
2012年10月号特集
Vol.175 | だれもに聞けないお金の話
知らない人だけが損をする!教育費の超節約術
written by 船津 洋(Hiroshi Funatsu)
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引用・転載元:
http://www.palkids.co.jp/palkids-webmagazine/tokushu-1210
パルキッズ通信2012年10月号特集『だれもに聞けないお金の話』(著)船津洋 ©株式会社 児童英語研究所
育児。お金が掛かりますね。
日本は先進国だというのに、義務教育は小学校の6年間と中学校の3年間の合わせて9年間です。アメリカでは日本の小学校に当たる grade school が6年間、中学校に当たる middle school が2年間で、高校の high school が4年間の合計12年間が義務教育です。実質その前の kindergarten で文字の教育が始まるので、13年間学校に通うことになります。ちなみに義務教育というのは子どもが「教育を受ける義務」を有するのではなく、親とコミュニティーが「教育を施す義務」があり、子どもは「教育を受ける権利」を持っているのが本質です。
日本では高校への進学率が95%ほどあるので、実質、高校までが義務教育のような現状です。民主党政権下で高等学校就学支援金制度が行われていますが、高校に進学することがまるまる無償ということではありません。つまり、国力の根源であるはずの「国民の教育レベルの維持」は、言ってしまえば、それぞれのご家庭の手にゆだねられている訳です。
ところで、お金の話。お子さんを社会に出すまでいったいどれくらいのお金がかかるのか…。講演会でもこの話は皆さん興味津々で耳を傾けていらっしゃるので、今回は教育にかかるお金について考えていきましょう。
| 公立?私立?
「ゆとり教育」から始まった日本人の全体的な「学力低下」を危惧するご家庭を中心に、10年ほど前から中高一貫校の人気が高まってきています。これによって、学力の下支えが行われることにはなりますが、それはあくまでも一部のこと。国民全体の所得が低下する中、「所得格差」がそのまま「教育格差」となりつつあります。喜ぶべきか、悲しむべきかは別として、日本もアメリカのようになってきた訳ですね。
では、お金の話です。
私立の中学校へ通うとなるともちろんお金がかかります。学校によって随分と異なりますが、おおざっぱに見ると、初年度で100万円、それ以降70万円程度、3年間で250万円くらいと見ておくと良いでしょう。公立は、学費がかからないものの制服や給食費、林間学校や修学旅行を考えれば、3年間で40~50万円くらいです。公立と私立では3年間で200万円ほどの差があります。
加えて、私立中高一貫校を目指すのであれば、小学校4年生くらいから塾に通わせる必要があります。学年や1週間の通塾日数によって授業料は異なりますが、ざっと年間50万円はかかると見てよいでしょう。つまり、一貫校へ入学させるのならば、小学校の後半3年間で少なくとも150万円は掛かる訳です。さらに、中学へ行くと3年間で250万円ですので、小4~中3の6年間で合計400万円です。この金額は、あくまでも「最低限」と考えておくと良いでしょう。
さてさて、続いて高校です。公立高校の費用が、入学金や学費、その他、積み立てや制服、通学費などの諸費用の3年間の合計でだいたい150万円です。これには塾などを含みません。ただ、前出の高等学校就学支援金制度から年間12万円程度の「学費」部分は補助されますので、公立校なら3年間で100万ちょっと掛かると思っておけば良いでしょう。
私立高校の場合、これも学校によってずいぶん差がありますが、ざっと見て3年間で300万円ほど掛かります。もちろん、私立高校に通う学生にも高等学校就学支援金制度は適用されますので、年間35万円程度補助されます。焼け石に水とまでは言いませんが、やはりご家庭にほとんどの負担が掛かっていると言って良いでしょう。
| 最終目的地は大学
中高の公立と私立。どちらへ行くかは、経済事情にも依るでしょう。中高と公立ならば併せて150万円なので、6年間の年平均額は25万円。これならば、なんとか捻出できそうですね。一方、中高両方とも私立ならば500万円、さらに小学校での準備を考えた150万円を合わせて、計650万円が小4~高3までの9年間にかかることになります。平均すれば、年75万円ほど。つまり、私立は、公立の3倍掛かることになります。
さて、公立の3倍もお金が掛かるにもかかわらず、私立の中高一貫校に入れようとする理由は何でしょう。そこまでして、親御さんが子女を中高一貫校に入れようとする理由は、単純明快。「大学入試」です。一貫校は高校入試が無いので、子どもたちは「高校入試」対策をする必要がなく、中学から大学へ向け一貫した学習が展開できるわけです。ほとんどの一貫校では高校2年生までにすべての必修科目を終えてしまって、高校最後の1年間は志望する大学へ向けての勉強が中心となります。
そうして、高校の3年間を経て、大学へと進学することになります。この国の学生たちの大学への進学率は5割強です。この数字は、先進国中最低レベルです。ちなみにアメリカは2年制のコミュニティーカレッジを含めて、進学率は8割ほどあります。お隣韓国は9割弱が大学へ進みます。
他国との比較はこれくらいにして、我が国の大学進学事情ですが、終わりの見えない不況と相まって、明るい兆しは一向に見えてきません。一般的な家庭でお子さんを大学へ進学させる場合、その段階で、家計は一気に赤字に転落するほどの負担が掛かります。
| 国立?私立?
学費は、大学や学部によっても様々です。もちろん、公立か、私立かで随分異なります。
仮に、国立の東大と私立の慶応大学の学費を比較してみましょう。
東大は文系も理系も同額で、年間50万円ちょっとです。慶応大学は、文系で年間100万円、理系は実験やら薬剤など随分と費用がかかるので、文系のようなわけにはいかず、薬学なら200万円、医学部なら350万円かかります。「学士」までの6年間の費用は、東大ならば理系・文系を問わず300万円強。慶応の文学部なら600万円(東大の2倍)、薬学部ならば1,200万円(同4倍)、医学部ならば2,100万円(同7倍)です。
もちろん、「修士」まで(4年間)ならば、この3分の2程度ですが、就職に有利な理系を選んだ場合は、学士レベルまでが要求されることが多く、わずか6年間でこれだけの費用が掛かります。もちろん、これは1人の子どもにかかる費用ですので、子どもが複数いるならば、人数分を上記数字にかけ算することになります。2人とも国立へ行ってくれれば医学部でも600万円で済みますが、もし、2人とも私立の薬学部へ進めば2,400万円。その差額は、1,800万円にもなるです。
ちなみに、アメリカは Ivey League(8校の名門私立大学連盟)の大学に進学させるとなると、年間の費用は500万円ほどかかります。つまり、学士までの6年間で3,000万円です。ハーバード、イェール、コロンビア、プリンストン、ブラウンなどなど、どこを見ても大体同じです。
失業率が日本より高く、日本より学歴がものを言うアメリカです。我が子の将来を考えれば、アイビーリーグに通わせることは十分に価値があり、同時にアイビーリーグを卒業すれば、学資という投資のもとも取れます。もっとも、アメリカでは奨学金制度が充実しているので、大学の学費は、実質、子ども自身が支払うようです。このあたりも、日本とは随分事情が異なりますね。いずれにしても、アメリカの大学へ、しかも学歴がものを言うほどの大学へと進学させるとなると、日本の一流私立の医学部よりも遥かにお金が掛かることを認識しておく必要があります。
| それでも、大学へは行かせるわけです
話を日本に戻しましょう。
本誌をお読みくださるほど、教育にご熱心なご家庭です。大学はお金がかかる…、それでもお子さんたちを大学へ進学させるわけです。
就職に有利な理系の、仮に薬学部に通わせる場合、私立の中高一貫から東大へ行ってくれれば、高3までの9年間で650万円、大学の6年間で300万円の合計950万円です。慶応大学の場合には、高3までは同じく650万円、大学で1,200万円の合計1,850万円です。つまり同じ一流どころでも、私立だと倍は掛かります。
つい先日のニュースでも報じられましたが、日本人の民間の平均所得は年間409万円。主婦のパートなども含まれているので世帯所得が上記金額という訳ではありませんが、厚労省から6月に発表された世帯所得の推移では全世帯の平均所得が550万円、子どもがいる世帯では主婦がパートに出ていることが多いらしく、平均は高めで700万円。40代後半で世帯所得700万円で仮に貯金が1,000万円あったとしても、私立の理系に子どもを一人通わせたら貯金が底をつき、2人通わせると赤字になります。
このように考えると、日本のほとんどのご家庭では、子どもを私立の理系、特に生物系に通わせることは現実的ではありません。つまり、学費の安い国立か、私立の文系に進学させるのでなければ、進路をサポートできないのです。
これは、もう子どもには国立の一流どころへ進学してくれと、親としては願うばかりです。「願う」と書きましたが、現実問題、願っているようでは、その願いはかなわないでしょう。この現実を直視して、小さい頃から子どもの教育に積極的に関わるご家庭だけが、低コストで子どもに高学歴を身につけさせることが出来るのです。
「東大へ行ってね」「はい」と、すんなりとは行きません。ちなみに、東大へ進学できる人数はセンター試験受験者の約0.5%です。200人に1人の狭き門です。
さて、その200人に1人の座を目指して学生たちが頑張る訳ですが、子どもを野球選手やスケートの選手などに育て上げるのと同様に、やはり小さいうちから親子ともにその「夢」を目指して頑張るご家庭があるわけです。勉強に関しても同じ。宿題以外で1日2時間以上勉強する小学生が全体の5%程います。それを小さいうちから積み重ねているご家庭と、好きに遊ばせているご家庭とでは、どちらが大学受験に有利か…、言うまでもありませんね。
勉強がすべてと言うわけではありませんが、学生の本分はあくまでも「勉強」です。大人が「仕事」をして家庭をサポートしつつ社会を築くのと同じ、1人の人としての役割なのです。子どもたちも「文武両道」、運動もしながら、本文の学業をしっかり進める。これが子どもたちの仕事と言っても過言では無いでしょう。だから、小さい頃から勉強をしている子は、決して「可哀想な子」なのではなく、本来やるべきことをしているだけの「普通の子」なのです。逆に子どもの将来を考えると、勉強をしないでいる子の方が可哀想なのかもしれません。
| 仮に、国立に行くのなら
いろいろ、お金の話を中心に進めて参りましたが、せっかくですので、ここでもうひとつ。皆さんが今実践している「英語」と「大学受験」の関係、ついで「英語」と「お金」の話にも触れておきましょう。
幼児・児童期の英語と大学受験。いっこうに関係ないように思えますが、実はこれが大有りなのです。もし東大、もしくは同等の大学へ進学させようと思ったら、大学入試センター試験の英語くらいは、高校1年生ないしは中学3年生の段階で、ほぼ満点を取れるように育てておかないといけません。そうしないと高校3年間を、主に英語の勉強に取られてしまうのです。
先ほどは触れませんでしたが、大学受験のために「予備校」という存在がありますが、ほとんどすべての子たちが、予備校で英語を中心に学びます。受験直前に予備校で英語を学んでいるようでは、他の教科に手が回りません。つまり、この子たちは、もう国立大学へは進学できないのです。東大へ行く場合には、英語を始め国語や数学などの基礎学力に関してはセンターレベルは軽くクリアして、さらにその上の学力が求められます。そのためには、英語などにかまけている時間はありません。要するに、英語などは中3か高1までにやっつけておく必要があるのです。
そのためには、中学へ入るまでに英検準2級か、少なくとも3級くらいは取得しておきたいものです。しかし、これも余裕などはありません。なぜなら、中学受験があるからです。中学受験をするならば、小学校の高学年の日々を英語に割くことなどできませんので、現実的には中学受験準備がスタートする前、小学校3年生までに英検準2級くらいを取得しておかないといけないのです。
皆様が日々実践しているお子さんの英語教育を、そのための「幼児英語教育」、つまり、大学入試へ向けての第一歩だと考えてみるとどうでしょう。日本における、幼児から児童期の英語学習の重要性が、はっきりと見えてくるのではないでしょうか。そして、ラッキーなことに、本誌を読まれていらっしゃる方は、すでにその第一歩を踏み出されているのです。これは、大いなるアドバンテージです。
それでは、英語とお金の話。
一体全体、英語を身につけるのにいくら掛かるのでしょう。英語に興味のある人が使う大人向けの通信指導の教材でも、20万円くらいは掛かりますし、英会話学校に通えば20~30万は軽く掛かります。また、特に英語に熱心でない人でも、中学・高校と英語塾に通えば軽く50万円は掛かっていますし、予備校も少なくとも年間60万円くらいは掛かります。つまり、大学受験準備の英語だけでも、結果として100万円以上掛けている方がほとんどです。もちろん、塾や予備校ではバイリンガルには育ちませんので、あくまでも大学受験用の「英語技術」を身につけるために、それだけ掛かります。それでも、一般的にはセンターで7割くらい取れれば御の字。つまり幼児・児童期に数十万円の先行投資をして子どもに英語を身につけさせてしまえば、中学・高校とほとんど英語にお金をかけずに、センター英語などはほぼ満点を取れるのに対して、幼児期の先行投資を惜しみ、小学校や中学から英語をスタートすれば、100万円以上かけてもセンターで7割程度の英語力しか身につかないのです。
幼児期を逃した場合、英語を身につけるために「留学」という手段が次善の策となりますが、留学にも費用がかかります。1年間留学するだけで、軽く200万は掛かります。
英語が出来れば、国立大学へ進学できる確率が高まる。つまり、センター試験なしで慶応に行く子が1,850万円かかるところ、東大ならば950万円で済む。さらに、中高と塾や予備校にかかるコストが100万円以上節約できる。留学することを考えれば200万も節約できるのです。
「バイリンガルに育ててしまう。」これが、子どもの学歴を高め、ひいては子どもたちの未来の選択肢を広げるのは当然ですが、そのための英語教育を「今」行うことで、将来的な家計の負担を子ども1人につき1,000万円単位で節約できるのです。
見通しの利いた現実的な親御さんたちは、早くからスタートされています。これからスタートするご家庭も、すでにスタートしているご家庭も、この現実を見つめながら、もうそこまで迫っている子どもの未来を育んでいきましょう。
船津 洋(Funatsu Hiroshi)
株式会社児童英語研究所 代表、言語学者。上智大学言語科学研究科言語学専攻修士。幼児英語教材「パルキッズ」をはじめ多数の教材制作・開発を行う。これまでの教務指導件数は6万件を越える。卒業生は難関校に多数合格、中学生で英検1級に合格するなど高い成果を上げている。大人向け英語学習本としてベストセラーとなった『たった80単語!読むだけで英語脳になる本』(三笠書房)など著書多数。