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2013年4月号特集

Vol.181 | あなたのお子さまは1割に入れますか?

「英語」と「理系」の時代到来をチャンスに変える教育法

written by 船津 洋(Hiroshi Funatsu)


プロフィール

船津 洋(Funatsu Hiroshi)

株式会社児童英語研究所 代表、言語学者。上智大学言語科学研究科言語学専攻修士。幼児英語教材「パルキッズ」をはじめ多数の教材制作・開発を行う。これまでの教務指導件数は6万件を越える。卒業生は難関校に多数合格、中学生で英検1級に合格するなど高い成果を上げている。大人向け英語学習本としてベストセラーとなった『たった80単語!読むだけで英語脳になる本』(三笠書房)など著書多数。


| 就職に理系が有利

 つい先日、文科省と厚労省の「就職内定者に対する共同調査」から「理系有利」の現状がー予想通りですがーはっきりとしてきました。まず、国公立大と私立大で内定率に随分と差があり、国公立の87%に対して私立の80%と、国立が1割方有利との結果が出ています。さらに理系と文系の内定率を見ると、これも同じような数字が出ています。理系の87.5%に対して文系の80.4%となっています。
 つまり、就職を考えるなら「国公立大」の「理系」が有利ということです。ついでに最も就職に有利な国公立の理系と、逆に内定率の低い私立の文系の内定率を比べると、国公理系の89%に対して、私文の79%です。片や9割、片や8割と10%も水をあけられているのが現状です。
 さて、この就職内定率を「大学卒業までの学費」と比較してみると、さらに理不尽な現実がみえてきます。
 就職率9割の「国公立の理系」は、大学院まで6年間通ったとしても学費はわずか300万円程。その次に就職率の高い「私立の理系」では6年間の学費が900~3,000万円。これとほぼ同じ就職率の「国立の文系」ならば、4年間で200万円程ですから、「国公立か、私立か」この差がどれほど家計に重い負担となるかは明らかです。これからの時代、理系学部を目指すのならば、国公立大学以外は多くのご家庭にとって現実的ではないのかも知れません


| 初任給の話

 ところで、就職率を見ると理系の方が有利なことが分かりますが、賃金の面ではどうなのでしょう。
 最近は、早慶などの超難関校を卒業しても、学部によって、また学生の能力によっては就職すらおぼつかない、などという厳しい現実もあるようです。一流どころにすら、就職難の波が押し寄せているわけですから、AOや推薦で入学できるレベルの大学となると…、想像に難くないですね。そんな背景からか、就職活動をしている学生の中には「とにかく就職出来ればよい」という雰囲気も漂っているようです。
 しかし、就職は「出来ればよい」といった代物ではないはずです。何でも良いのであれば、誰でも出来るような仕事しか手にすることは出来ません。必然的に所得も人並みということになります。いや、人並みならまだしも、人並み以下、ということも起こっているのです。
 そんな中で、やはり賃金面でも有利なのが理系です。文系・理系における「生涯賃金」に関しては様々な調査が行われていますが、おしなべて理系の方が平均年収においては100万円ほど高いという数字が出ています。ここでもやはり理系が有利であることが分かります。
 昭和の時代には文系の方が有利だったのですが、平成以降、インターネットの発達や情報技術の格段の進歩によって世の中がどんどん複雑になる中、理系の頭がもてはやされるようになっているようです。
 さて、そんな大学生の就職事情ですが、大卒の初任給を見てみると、昨年は平均20万円程度。大学院を出ても22万円ちょっとと、ここ20年程はほぼ横ばいが続いています。
初任給が20万円。これが高いか安いか…。お世辞にも高いとは言えません。
 仮に、この初任給で平均的な会社勤めを続け、40歳の時点で年収が400~500万円(人口中の所得分布の平均値)だとすると、だとすると、私達の子どもたちがその子どもたち-私達の孫-を私大へ通わせるのは至難の業です。少なくとも子どもの教育のためには共働きをせざるを得ず、さらに複数の子どもを進学させられないので子どもを産まない、少子化になる。これはもう、避け難いことなのかも知れません。(ちなみに日本人の平均所得は年収550万円ですが、人口の3分の2は平均以下の所得です。一部の高所得者が、平均値を引き上げている格好です。ここでも二極化が表れていますね。)
 ただ、一方で40~60万円という初任給(年収500~800万)を得る人もいます。この事実はあまり知られてはいませんが、医師や弁護士の場合、証券会社や製薬会社などに勤める場合には、平均の倍以上の初任給を取ることが珍しくないどころか、当たり前なのです。そして、このような比較的高級を摂れる新人たちであれば、将来、彼ら自身の子どもたちにも良い教育を与えることが出来るでしょう。こうして、優れた教育が、脈々と続いて行くのです。
 子どもの将来や幸せを考えれば、もはや「平均で良い」とは言えません。少しでも優秀に育て、企業ひいては社会から求められるような人材として世に送り出してあげることが、極めて重要なのです


| 狭き門

 「一流大学というだけではダメ。私立よりは国公立。文系よりは理系。理系ならば少なくとも修士までは取得する。」…こういった情報はいくらでもあふれていて、どこでも手軽に手に入れることが出来ます。では、具体的にどのようなレベルに目標を設定すれば良いのでしょう
 とりあえず、分かりやすくするために “MARCH” 以上を難関校とします。すると、私立大では、”早慶上智”(早稲田、慶應、上智)の3校、それに “MARCH” (明治、青山、立教、中央、法政)5校と、理科大、学習院、ICUの3校、さらに西の “関関同立” (関西、関西学院、同志社、立命館)の15校だとしましょう。学部によっても大きな差がありますので、これはあくまでも「目安」と思ってください。
 さて、それら15大学の一般入試で入学する学生が、毎年平均して4,000人ほどいます。つまり、4,000人×15大学で60,000人、これにAOや推薦入学を加えて、ざっと70,000人が難関私立大学へ進学するとします。
 国公立大を見ると、”旧帝大” (東京、京都、東北、北海道、九州、大阪、名古屋)と東工大、一橋、神戸を含む国立10校。さらに “旧六大” (千葉、新潟、金沢、岡山、熊本、長崎)に、広島、東京医科歯科、筑波、外語、横浜国立、横浜市立、大阪市立、首都大学などなど…。ちょっと多めにざっくりと30大学としましょう。それぞれの募集人員を2,000人とすると、2,000×30大学の60,000人となります。
 私大70,000人と国公立大60,000人を合わせて、130,000人。これから10年間ほどの18歳人口は120~130万人くらいですので、同年齢のうち、ざっと1割くらいの学生が難関大へと進学するわけです。
 ここで「卒業する大学」と「所得」を、無理矢理ひも付けしてみるとどうでしょう。国税庁の2年前の統計によると、年収1,000万円以上の所得者は(労働人口の?)5~6%ですから、難関大へ進学する10%のうち理系学生である5%程度は、やはり所得が高い…と推測するのは、かなり乱暴ながらも、まるで無関係とは言えないでしょう。ともあれ、ひとまずは我が子をこの「1割」に入れることを目標にしておけば良いのではないでしょうか。


| さらに!英語が出来ると年収が高い

 この「狭き門」を目指して、小さい頃から勉強している子が増えてきています。これが「学力の二極化」へと繋がっていくわけです。難関校を目指す1割と、それ以外…。大学への進学率は高まっているものの、半分くらいの学生は早々に難関大を諦めて、AOや推薦での入学を選んでしまうようです。そして就職の段階になると、「どこでもいいや」となる。差は広がる一方ですね。
 さらに最近では、「狭き門」を目指す親が増えるのに加えて、子どもの教育の世界における「英語熱」が再燃しているような印象があります。
 毎年この時期になると、雑誌などで特集される「東大合格者出身校ランキング」とか「就職に有利な大学ランキング」と並んで、最近は「英語が出来ると年収に200万円の差」など、英語を身につけていることのメリットが取り沙汰されるようになっているのです。
 もっとも、日本人の英語熱は冷めることが無く、特に大人の世界では、進むグローバル化の中キャリアアップに欠かせないツールとして英語力の重要性は高まるばかりです。そんな世相も反映して、「英語が出来ると年収UP云々…」となるわけでしょう。
 しかし、現実を見れば、中高生の学ぶ「英語」は旧態然としています。ここ数年、中学生向けの英語講座を行っていますが、いつも「ああ、昔と変わっていないなぁ」という感慨を覚えます。
 どの子も、なんの疑問も持たずに、日本語化された英語の発音で教科書を読み、どんなに優秀な子でも「ひとつひとつの英単語を日本語に置き換えることが、英語を理解する方法だ」と信じて疑わないのです。いや、それ以外の方法を知らないのです。そして、中学卒業までに英検準2級に合格すれば、優秀な生徒と呼ばれることでしょう。高校でもせっせと勉強して、予備校にも通い、複雑怪奇な「和風」英文法を学び、大学入試へ臨むことでしょう。もちろん、塾や予備校には年間50~100万円程も費やすことになります。でも、残念ながらこの学習方法では、大学入試センター試験の英語では7割が関の山。これでは超難関校には、とても手が届きません。
 このように、成果に乏しい「旧態然とした英語教育」が続いてるわけですが、これは見方を変えれば大きな「チャンス」です。
 世の大半の人が、あまり成果のあがらない英語教育に拘泥しているのを横目に、英語は幼児・児童期にさっさと身につけてしまい、中学へ入学する頃にはすでにセンター英語対策も出来ている…。このような効果的な学習法を、多くの人は知らないわけですから、当誌の読者の皆様には願ってもないチャンスと言えるでしょう


| やってて良かったね!

 15~10年ほど前に、「幼児期の英語教育」ブームがありました。また、ちょうどその頃から「ゆとり教育」による学力低下が顕在化しはじめ、親たちを「中高一貫校受験」へとかき立てていきました。さらに、ちょうどこの頃は、ITバブル崩壊による景気の後退時期と重なり、それが言わば「少し浮かれた幼児英語ブーム」に終止符を打ちます。
 理由は2つあります。ひとつは既に述べたように景気の後退、つまり限られた原資を「浮かれた英語教育」よりも「実質的な受験対策」に回すという経済的な側面からです。そしてもうひとつは、極めて当たり前のことですが「中学受験の試験科目に英語が無い」からです。中学受験に本気になるならば、試験科目にない英語に大切な時間を奪われている余裕などあるわけもないのです。
 ところで、そんな世間の大勢に流されずに、しっかりと英語教育を続けてきたご家庭もあります。そんな当時の子どもたちも、今や大学生。春先になると、季節柄たくさんの方から近況報告をいただきます。東大に合格した、圏内随一の進学校に合格した、県内御三家は全て制覇!…こういった受験に成功されたご報告と同時に、TOEIC950点、高校生で英検1級合格、中学生で英検準1級合格、などのご報告が続々と入ってくるのです。
 学生時代、英語に泣かされた経験から、「英語から逃げたい願望」が少なからず日本人の遺伝子に組み込まれてしまっているのかも知れません。ただ、そこから逃げず正面から英語に取り組んできた親たちは、子どもたちが大学生になるあたりで、幼児期の英語教育が間違っていなかったことを改めて確信できるのです。そして、信念を曲げずに、英語から目を背けたい願望をこらえたご家庭に、それこそ「春」が訪れるのです。


| 大学入学にもTOEFL

 つい先日、自民党の教育再生実行本部で、国内全ての大学入試資格基準としてTOEFLを活用する方針を決定したとのニュースがありました。大学ごとに基準点を定めて、その基準点に達している学生に入学選考試験を受ける資格を与えるというものだそうです。センター試験というものがすでにあるのに、さらにTOEFLまで義務づけられるとは、全く学生さんたちにとっては気の毒なことです。
 しかし、なんだか日本の政治はいつもこの調子ですね。だったらセンターの英語なんかいらないのでは?という疑問が浮かんでしまうのは私だけではないでしょう。しかも、TOEFLは英語圏に留学する学生が受けるようなテストですので、センター対策の勉強をしている子の手には負えません。そもそも、現在の中高の「旧態然とした英語教育」ではTOEFL対策など不可能ですので、これからの学生諸君は大変ですね。
 ということは、つまりこれも皆様にとっては「チャンス」なのです!早期英語教育の最大のメリットは、リスニング力と全体の把握力。細かい文法が分からなくても、多少の知らない単語があっても、全体の大まかな理解には全く影響しない、というそんな骨太の基礎英語力を身につけられるところにあります。自民党のこの動きが正しいのかどうかは別として、早期英語教育を実践するご家庭には福音です。あちらから幸運が転がり込んでくるようなものです。

 さて、今回はお子さまの未来の姿に思いを馳せて、日本経済の現実をあわせ見ながら想像を膨らませて参りました。
 どんな子でも、最初はトップへ行ける能力を持っています。生まれたばかりの子は誰でも、日本の最高学府へ進むポテンシャルを持っているわけですし、新卒で年収800万円を稼ぐ可能性もあるのです。
 そして、そこに必ず必要となるのが英語教育です。「英語」は子どもたちの成長の節目節目に立ちはだかり、彼らはその都度ハードルを乗り越えて行かなくてはいけません。
 つまり、日本の教育システムにおいては「英語が飛び抜けて出来る」ことがあらゆるチャンスの門戸を広げてくれ、逆に「英語が出来ない」ことで未来の門戸すら閉ざされてしまう、そんな具合なのです。
 といっても、そのハードルは決して高いものではありません。まずひとつ目の目標として、小学生のうちに英検準2級以上を取得する。ここまでに基礎的な英語力を身につけておけば、高校入試にも、大学入試にも苦労はしません。また、その過程の中で、英検準1級以上、TOEICなら900点以上を取得してしまえば、その後の就職でも英語が出来ることが明らかな所得の差となって表れるのです。
 そして、これほど重要な「英語」にも関わらず、まだ画期的な教育法が浸透していないのが現状です。非常に残念なことですが、いち早くご家庭で早期英語教育を実践される皆様は、これを好機ととらえ、信念を持って取り組んで参りましょう。

 新学期ですね。これから英語教育をスタートする人も、すでに実践している方も、お子さんの将来の姿に思いを馳せながら、目の前の課題ーCDのスイッチを入れることーを淡々とこなしていきましょう。


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※本記事のテキストは引用・転載可能です。引用・転載する場合は出典として下記の情報を併記してください。

引用・転載元:
http://palkids.co.jp/palkids-webmagazine/tokushu-1304/
船津洋『あなたのお子さまは1割に入れますか?』(株式会社 児童英語研究所、2013年)

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