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2014年04月号特集

Vol.193 | なぜ、勉強しなければいけないの?

知っているから分かる!だから面白い!勉強好きに育てる方法

written by 船津 洋(Hiroshi Funatsu)


※本記事のテキストは引用・転載可能です。引用・転載する場合は出典として下記の情報を併記してください。

引用・転載元:
http://palkids.co.jp/palkids-webmagazine/tokushu-1404/ ‎
船津洋『なぜ、勉強しなければいけないの?』(株式会社 児童英語研究所、2014年)


| 途中下車する子どもたち

 高校を卒業して、大学へ進学。そして就職。これはごく当たり前の進路のように見えますね。
 高校が実質無償化された今日、ほぼすべての中学生が高校へ進学します。高校での退学率は2%前後ですので、これまたほぼすべての高校生が卒業するわけです。
 そして高校を卒業した学生たちの半数は、大学へ進学します。そして4年後には就職です。バブル崩壊この方、大学生の就職事情は厳しい状態が続いていますが、6割の学生は何らかの職にありつけます。しかしあくまでも「何らかの」ですから、大半は自分の希望する業種や企業に就職できるわけではありません。
 さて、高校、大学、就職。これは極めて一般的な進路のように見えますが、実際のところはどうでしょう。大学に進学する子が50%で、その中の60%が就職します。しかし、その後3年間で50%が離職するので、「極めて一般的」と思える進路を歩むのは、この時点では全体の15%(50%×60%×50%)に過ぎません。
 そんな中、最近気になる数字が「大学生の中退者数」です。その数は、大学生の10人に1人、調査によっては8人に1人にも上るのです。


| みんなが行くから

 わずか20年前、大学進学率は18歳人口の25%でした。それが四半世紀を待たずに倍増しています。いつの頃からか「とりあえず大学までは」と考える親御さんが増えてきたのでしょう。「みんなが行くなら、わが家も」といった具合に、特に何の専門を学ばせるわけでもなく大学へ進学させるのかも知れません。
 学生たちもこの点は似ています。
 中学校までは義務教育なので、どんな子でも進学します。さらに高校までもが実質義務教育化している今日では、子どもたちも何の疑問も感じずに高校へ進学します。「みんなが行くから、僕も行く」わけです。
 しかし実際には、行かなくても構いません。高校は義務教育ではないのですから。もし寿司職人になりたいのであれば、中学を卒業したら小僧に入って10年も修行を積めば自分の店を持つことができます。大工になりたくても同様です。手に職を付けてそれで食べていくのであれば、義務教育終了後は、時間を無駄にすることなく人生に漕ぎ出せばよいのです。
 高校卒業後も同様です。製造業に勤めるも良し、サービス業に勤めるも良し。自分に合った職業があれば、その方面へ進めばよいのです。勉強が苦手な子が無理して大学へ進学する必要などありません。
 しかし、高校進学と同様に、大学も「みんなが行くから、僕も行く」ことになるケースが増えてきているのです。
 この背景にはいくつかの環境の変化が考えられます。少子化が進み、子ども1人に対する親や祖父母の支援が手厚くなったことで経済的に進学が可能になるケースもあるでしょう。また大学が乱立したことで、大学の席数が進学希望者数を上回る「全入時代」になっていることも大きく影響しています。さらに、その結果として大学が学生確保のために、大学の授業に見合わない学力の学生たちまでも受け入れざるを得ないという、本末転倒の現実があります。


| 万能の卵

 小さい頃に、自分の将来の夢を見つけられる子は幸せです。しかし、夢を見つけられる子はごくごく少数派です。また、夢を見つけられても、その夢が叶うことは稀です。
 その一方で、子どもは「万能の卵」のような存在であり、生まれた時にはすべての可能性を備えています。プロのアスリート、学者、医者、弁護士、技術者、職人、何にでもなれるのです。
 ただ、夢を叶えるためにはいろいろな条件があります。運であったり、能力であったり、体格であったり、感性であったり…、様々な条件が重なり合って、夢は現実となります。しかし、そんな中でもひとつだけ欠くことの出来ない条件があります。それは「親のフルサポート」です。これがなければ、どんな夢も叶うことはありません。
 それは、具体的には「夢の実現に向かって環境を整えてやること」です。つまり、目標を達成するためにはどんな計画が必要なのか、その意識を子どもと共有し、子は子の役割、練習や勉強などを淡々とこなし、親は親の役割、生活面、精神面、そして学費などの金銭面でもサポートをする。このように、親子でそれぞれの役割を果たしながら、ようやく目標は達成出来るのです。
 大抵の夢は、子ども1人で叶うものではありませんが、親にはこの認識が少々欠けているのかも知れません。


| 未来が見えない

 さて、子どもたちの今の現実。
 ひと言で表せば「未来が見えない」状態なのかもしれません。夢がまったくないわけではない。しかし、その夢を叶えるためにどうして良いか分からないまま、時が過ぎ、やがて「皆が行くから」高校へ、大学へと進んでいく…。「赤信号みんなで渡れば怖くない」式です。
 大学とは、ほんのひと昔前までは「学問を修める場」であったものが、今では「とりあえずみんなが集まる場」の様相を、少なからず呈してきているのです。
 AO入学や推薦入学生の増加(大学生の半数はAO推薦入学者)が、この現実の後押しをしていることは言うまでもありません。そして「とりあえず」大学へ進学した子たち(特に、ほとんど受験勉強をせず、無目的にAO・推薦で大学へ進学した子どもたち)に中途退学者が多いのです。
 もちろん、AO・推薦入試が悪いと言っているのではありません。しかしながら、増え続ける大学中退者は東大・慶應といった大学では比較的少なく、また医学・薬学・法律・教育といった専門性の高い学部でも少ないのです。反対に、偏差値の低い大学、または文学部などで多い傾向にあります。そのような大学は、学生の半数以上がAO・推薦で入学しますので、現実問題として大学での勉強について行けなくなって退学するケースも珍しくありません。
 また、「とりあえず」大学へ進学しても、勉強をする意義が見つけられないこともあるでしょう。大学は高校までとは違って、自由意志での勉学を本旨とするので、本来なら欠席する学生に構う必要などありません。しかし、大学側もせっかく入ってくれた学生に辞められてしまうと、それ以降の学費が確保できないので、仕方なく欠席の多い学生に連絡を取ったりして退学防止に努めるという、これまた本末転倒な現実となっているのです。


| 何のための勉強?

 ところで、学校での「勉強」は一体何のためにするのでしょう。どんな方も「なぜ勉強しなくちゃいけないの?」と一度は感じたことがおありでしょうし、ひょっとすると、お子さんにそんな質問を投げかけられた経験をお持ちの方もいらっしゃるかも知れません。
 ひと昔前なら、「偉い人になるために勉強しなくてはいけない」…こんな具合の解釈でも子どもたちは納得してくれたかも知れません。しかし、産業界のあり方が様変わりして、生き方も多様化している今日では、「偉い人」などと言った日には「偉くなんかなりたくない」と言われておしまいかも知れません。
 また、今ほど進学率が高くなかった頃は、大学とは限られた優秀な学生たちがさらに学問を磨く場でしたので大学へ進学したければ、勉強をしなくてはいけませんでした。つまり、勉強する理由は「大学進学」と直結していました。ところが今では、高望みさえしなければ誰もが気楽に大学へ進めるのです。今や「偉い人」どころか「大学進学」のためにすら、勉強する必要が無くなってしまいました。
 そんな現代の子どもたちに「なぜ勉強するの?」と聞かれても、答えに窮してしまうのは仕方がありません。  しかし、少し視点を変えると、勉強の意義はクッキリとします。


| 分かるから面白い

 世の中は情報の塊です。しかし、情報とは「見えざる者には見えない」ものです。
 例えば、港町を眺めていたとしましょう。見えない人には、単なるありふれた港の風景かも知れませんが、船のことを少しでも勉強したことがある人ならば、灯台やブイ、または船舶に掲げられている信号を見て、「ああ、あそこには浅瀬か岩礁があるのか」「あの船はどこから来て何をしているのだな」などと感慨が湧くでしょう。また、飛行機が好きな人なら、空港を眺めながら「風速何メートルの風が吹いているな」とか「ここの滑走路は東西に向いているのか」と情報を引き出すことが出来ます。天気図を読める人ならば、一枚の天気図から「今後の天気」という情報を引き出すことが出来ます。
 このような専門的なものでなくても、「知る」ことから引き出している情報はたくさんあります。
 例えば、川と並走した山間の道を散歩しているとしましょう。釣りを知らない人にとって、それはただの川かも知れませんが、釣り人にとっては「あそこは釣れそうだ」とか「あ!(魚が昆虫を)捕食した」などと、心を躍らせる景色です。
 そんなのただの趣味ではないか、と言われればそれでおしまいですが、情報があふれているのは何もこのような世界の話ばかりではありません。
 「日本史」を勉強した人であれば、機上から古墳を眺めて「あれは仁徳天皇陵か?」などと思うでしょうし、奈良や京都へ行けば往事に思いを馳せ、寺社仏閣を眺めても感慨一入でしょう。「地理」を勉強した人ならば、旅行先ではツアーガイドのように、様々な情報を引き出すことも出来るでしょう。  「日本史・世界史」を良く知れば、昨今の国際情勢や日本を取り巻く隣国との関係なども、ニュースで報じられる内容を鵜呑みにすることなく、冷静に判断を下すことも出来るでしょう。
 「古文」や「漢文」を知る人にとっては、それらは単なる意味不明の古くさい文字の羅列ではなく、活き活きと当時の姿を蘇らせる文学です。
 つまり「知識」です。知識があることによって、いろいろな物が見えてくるのです。知識がない人にとってはモノクロに見える風景が、知識豊かな人の目には鮮やかな色彩に彩られた風景に映っているかもしれません。
 そんな、情報を引き出す力の源、つまりモノクロの世界を鮮やかなカラーの世界へ変革させる源が「知識」なのです。
 ただやらされるだけの勉強よりも、このように「知識」を身に付け、世の中から「情報」を引き出すための勉強だと考えてみれば、楽しくなると思いませんか?


| 情報の宝庫

 では「英語」は?そうです。英語も同様です。
 世の中には情報があふれていますが、その中で群を抜いて情報量が多いのが言語情報です。書籍やインターネット、メディアでは言語を通して情報を流しています。
 さて、その言語ですが、最も多くの情報を発信している言語は英語です。母語とする人口では中国語には敵わないものの、公用語として、または英語人口となると、世界人口の20%が英語を日常的に使っています。学習人口ともなれば、見当も付かないほど多くなります。それを反映して、言語別の出版物数では、英語が4分の1ほどを占めています。インターネット上での使用言語も同様に25%は英語です。つまり、そこにはそれだけの膨大な情報があるわけです。
 しかし、英語が分からない者にとっては、せっかくの情報も「無い」に等しいのです。見えざる者には見えません。逆に、ひとたび英語が分かるようになってしまえば、世の中の景色は一変します。狭い日本語の世界の外側に暗闇として広がっていた「英語の世界」が、一気に目の前に広がるのです。
 止まらないグローバル化の世の中で英語が出来ないということは、日本語の世界に閉じこもるか、または懐中電灯も持たずに英語の暗闇の中をさまよい歩く以外に道が無いということです。何が無くとも、せめて英語だけはやっておかないと、情報が錯綜する今後の世界を成功裏に生き抜くのは難しくなるでしょう。


| 見せれば分かる

 さて、無目的から大学中退の話、そして勉強の必要性から英語の話と気の向くままに話を進めて参りました。やはり自己を高めて世の中をしっかりと理解するためには、知識や、そのための勉強が必要なことは分かってきましたが、それを頭では理解できても、子どもたちは「人生の目標」を見い出せないかも知れません。
 すでに将来の夢がある子、将来の職業のために目的を持って勉強している子たちはラッキーです。しかし、ほとんどの子は夢がないまま、将来がまるで見えないまま、今を生きている。さぞや不安なことでしょう。
 そこで、ひとつ提案です。
 今日からで結構です。子どもたちと、彼らの未来について少しずつ話をするようにしましょう。「君はおそらく○○大学へ行くんだよ」「将来どんな職業に就くのかな」「どんな人と結婚するのか」「どんな子育てをするのか」などなど話をしてあげるのです。
 そんな話をするうちに、「お医者さんって仕事が大変そう」「投資家ってどんな仕事?」「飛行士になるにはどうしたらいいの?」など、少しずつ子どもたち自身が将来のことを考えるようになるでしょう。
 また、そんな将来の生活を支える「お金の話」も大切です。「家族みんなでハワイに行くといくらかかると思う?」「そのためにはいくらお給料が必要?」など、この程度の話であれば、小学校の中学年生でも十分に理解できます。そこから、塾の費用、合宿の費用、将来の学費、生活費など、一体生きていくためにはいくら位のお金が必要なのか(家計簿まで見せる必要はありませんが)大ざっぱに理解させておくと、子どもながらに「なるほど~」と分かってくるのです。自分はどんな暮らしをしたいのか、そのためには、自分が何をしなくてはいけないのかも、ぼんやりと考えるようになるでしょう。
 このように、将来の話(お金の話はしつこくならない程度に)を子どもと交わし続けることで、彼らは、彼らの将来像を描けるようになります。つまり、未来が見えてくるのです。それでも「不安」は残ります。現に、今現在を生きている大人たちも不安で一杯でしょう。その中で少しでも未来が見えることが、どれほど不安を軽減し、希望を持たせ、やる気を喚起できるのかは、改めて語るまでもないでしょう。

 さて、最後になりましたが、ご卒園・ご卒業、並びに、ご入園・ご入学おめでとうございます。
 季節は春。新しいことの始まる季節です。これを期に、ぜひ子どもたちと将来を語り合ってみてください。それを繰り返すうちに、子どもたちには自分の未来像が次第に見えてきて、自分をサポートしてくれる親に感謝するようになるでしょう。そして同時に、お子さんが自分のやるべきことに日々邁進してくれることを祈って已みません。


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プロフィール

船津 洋(Funatsu Hiroshi)

株式会社児童英語研究所 代表、言語学者。上智大学言語科学研究科言語学専攻修士。幼児英語教材「パルキッズ」をはじめ多数の教材制作・開発を行う。これまでの教務指導件数は6万件を越える。卒業生は難関校に多数合格、中学生で英検1級に合格するなど高い成果を上げている。大人向け英語学習本としてベストセラーとなった『たった80単語!読むだけで英語脳になる本』(三笠書房)など著書多数。

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