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2014年08月号特集

Vol.197 | だから英語がわからない!

「使える英語力」に欠かせない「理解力」の最短習得法

written by 船津 洋(Hiroshi Funatsu)


※本記事のテキストは引用・転載可能です。引用・転載する場合は出典として下記の情報を併記してください。

引用・転載元:
http://palkids.co.jp/palkids-webmagazine/tokushu-1408/
船津洋『だから英語がわからない!』(株式会社 児童英語研究所、2014年)


| 英語学習の四技能?

 外国語の学習について、しばしば「四技能」なるものが口の端に上ります。「読む・聞く・話す・書く」とか「リーディング・リスニング・スピーキング・ライティング」などと英語で呼ばれたりする、皆さまおなじみのスキルです。「これらにバランスよく取り組みながら、語彙や文法を学習していくことが英語学習の基礎である」などと見聞きすれば「なるほど」と妙に納得してしまう。そんな、英語学習とは切っても切れない言葉たちです。
 また、これらの四技能は教育現場ばかりではなく、一般的な外国語学習者の中でも日常的に話題に上ります。「読み書きはできるけど、会話が苦手だ」とか「リスニングができないから、そこを学びたい」とか「英語を話せるようになりたい」などといった具合に、得手・不得手や要・不要論とともに語られることが広く一般的に行われています。
 現に私も、講演会終了後のちょっとした相談コーナーで「うちの子には英会話を身につけさせたい」とか「子どもが英語で話してくれなくて困る」とか、または、もっと学習の進んだ方からは「なかなか読めないのですがどうしたら良いでしょう?」などのご質問を受けます。
 それら世間一般の「四技能」獲得意欲を受けてかどうか、「聞くだけ」「読むだけ」「会話を通して」、などなど様々な学習方法が用意されています。
 また、近年では社会的な風潮として、学校英語では「読み・書き」はある程度身につくが、実用的な英語、つまり「聞く・話す」は身につけられない、という考え方が広く浸透しています。そして、それに呼応するように政府や文科省でも「使える英語」教育に力を入れる方向へシフトすることを検討している、といった報道も見受けられます。
 ところで、この「四技能」という分類の仕方。我々も何となく、あまり深く考えることもなく受け入れてしまっていますが、この分類の仕方が、そもそも英語の技能を正しく分類できているのか、今回はそのあたりについて少し掘り下げて考えてみましょう。


| 英語の授業はすべて英語で?!

 「読む・聞く・話す・書く」の四技能と呼ばれるものは、一般的には「読む・書く」の文字系統と「聞く・話す」の音声系統に二分されます。つまり以下のような具合です。「学校では受験のための “読み・書き” は学ぶが、受験とは関係の薄い “聞く・話す” 技術は教えてくれない」。この発想から「読む・書く=受験対策英語」、そして「聞く・話す=使える英語」と単純化してきて「学校でも “読み・書き” ばかりでなく、”聞く・話す” 技術も教えるべきだ」となり、結果として「学校の英語の授業をすべて英語で行う」などという、船頭多くして云々的な、明後日の方向に向かってしまうのでしょう。
 しかし、ちょっと待ってください。果たしてこの二分類の仕方がすべてなのでしょうか。文字系統の学習だけではダメだから、音声系統の学習に重点を移すべきという考え方は正しいのでしょうか?
 この点に関しては、はなはだ疑問が残ります。「文法学習」は読んだり書いたりしながら、文字を使った学習で進める方が、スキットなどの会話形式で進めるよりよほど効率的でしょう。また「語彙」を増やす場合も同様で、会話やリスニング素材の中から語彙を増やすとなると学習場所や学習時間帯にかなりの制限ができるので、こちらも学習場所や時間を問わない文字系統の学習の方が効率がよいといえるでしょう。
 しかも、学校英語の世界では、従来の教授法・教授内容だけでも時間が足りません。それに加えて「聞く・話す」授業を入れるとなると、かなりの時間が余計に必要になるでしょう。また、資質の問題も未解決です。教わる方の学生たちが「英語で授業を受ける」準備ができていないばかりではなく、教える方の先生方も「英語で授業をする」ことはもちろん、多くの方はリスニング・スピーキングにも慣れていないので、学習効率も落ちるのではないでしょうか。単純な理屈ですが、日本語でできることは、これまで通り日本語で学べば良いのです。
 このように、文法や語彙の学習においては、文字系統の学習に軍配が上がりそうです。


| 読んだらわかるけど聞いたらわからない?

 さて、大半の日本人が英語を「読めるし書ける」が「聞き取れないし話せない」と漠然と感じているようです。おそらくこの考え方に対応すべく、リスニングやスピーキングなど、「音声系統の学習法を取り扱った教材」が山のように市場にあふれているのでしょう。
 また、私たち日本人は「文法」や「語彙」の学習も大好きなので、それらの学習素材も探すに事欠きません。しかし一方で、検定対策ものを除けば、「リーディング」や「ライティング」などの文字系統の学習に関する書籍は人気薄のようです。
 そのような社会の風潮があり、文字系統つまり紙上の学習より、音声系統の学習がもてはやされている今日ですが、それでは、音声系統の学習で日本人の英語力は向上しているのでしょうか?リスニングの練習をしてリスニング能力が向上したのでしょうか?もしくはALTを増やし外国人と話す機会を増やしたことによって、リスニングやスピーキングの能力の根本的な向上に結びついているのでしょうか?
 どうやら長年の個々の努力や、専門家たちによって世に送り出された数々の学習メソド、外国人たちの協力をもってしても、なかなか日本人の英語力の「本質的な向上」には至っていないようです。
 さて、そんなこんなの英語の四技能ですが、ちょっと視点を変えてみましょう。切り口を変えれば「文字系統・音声系統」といった分け方以外にも、「読む・聞く=入力系統」と「話す・書く=出力系統」に二分できることに気づきます。


| 「入力」と「出力」に分ける

 英語学習を、「音声と文字」に分けるのではなく「入力と出力」に分けて考えてみると、同じ入力系統でも、音声系(リスニング)が苦手で、文字系(リーディング)の方が比較的得意、という方は少なくありません。いや、大半の日本人がこの状態に当てはまるのではないでしょうか。
 たとえば、“They are screaming at each other.” という一文。読めばわかるかもしれませんが、実際に音として聞こえてくるとわからないかもしれません。英語は日本語と異なり「分かち書き」なので、単語と単語の間にはスペースがあり、そのスペースとスペースに挟まれた文字群がひとつの単語を形成しています。つまり、文字化された英語の世界では、単語は一目瞭然で認識できるのです。
 しかし、音声英語の世界では、状況は一変します。上の文章を音声化してそれをアルファベットに置き換えると次のようになります。“Theierskriiminatiichather.” 参考までに発音記号で書くと “ðeɚskrímɪŋətíːtʃʌðɚ” となります。さらに無理矢理カナ表記すると「ゼァスクリーミナディーチャザ」となります。和風のカナ化英語「ゼイアースクリーミングアットイーチアザー」とは大違いです。
 なぜこのようなことが起きるのか。これは英語と日本語の性質の違いによります。
 まずは、音素の違いです。簡単に言えば、日本語は開音節の言語で「母音もしくは子音+母音」でひとつの音素を構成するのに対して、英語は閉音節の言語なので「子音が連続」したり「単語が子音で終わる」ことができるのです。日本語では子音が連続することができませんし、もちろん子音で単語を終えることもできません。例えば、英語では “strike” (straik)という1音節の単語も、日本人が口にすれば「ストライク(su to ra i ku)」と、いつの間にか5音節に変換されてしまいます。これが日本語なまりの英語の正体です。日本語は、とくに関西地方の発音に見られるように、ひとつひとつの母音が強調される、どちらかといえば「べたべたした音」なのに対して、英語は子音ばかりの「歯切れの良い音」で構成されているのです。
 しかも、さらにやっかいなことに、英単語のほとんどが子音で終わります。なぜ単語が子音で終わるとやっかいなのか。それは、前の単語の語尾の子音と、次の単語の語頭の母音が、音声上くっついてしまう「リエゾン」現象を引き起こすからです。しかも、このリエゾンは珍しい現象ではありません。英単語はほとんどが子音で終わりますが、副詞や前置詞といった、最も頻繁に使用される単語群の多くは母音で始まるのです。つまり、リエゾンの確率は非常に高いのです。
 文字化された、つまり「書かれた文章」であれば、単語は一目瞭然のひとかたまりで表記されていますが、音声化され単語同士が次々とリエゾンしてくっついてしまった文章からは、なかなか単語を探し出すことができません。単語の切れ目がわからないのです。これが、日本人が英語のリスニングが苦手な理由です。


| 読んでもわからない!

 このように書くと、「ほら、リスニングは苦手だが、読めばわかるじゃないか」といわれそうですが、ことはそれほど単純ではありません。「言語の入力系統」という意味においては、確かにリーディングよりリスニングの方が苦手です。しかし、問題はそれだけではないのです。
 この点の詳細に関しては拙著『子どもの「英語脳」の育て方』に譲るとしましょう。ここでは簡単に説明しますが、我々は「英語を聞いてわからない」だけではなく、「読んでもわからない」場合が非常に多いのです。
 例えば、“Apples are growing on me.” “I’m in on it.” “How to stop pantyhose runs.” などの文章は、読むには読めても、意味がわからない方がほとんどでしょう。学校の授業で、辞書に載っている訳し方で解決できないような例文を使用することは、ほとんどありません。そんなことをしたら学生たちが混乱します。しかし、英単語は日本語訳と一対一で完全対応するような、そんな単純な代物ではありません。get, have, take, give, come, go… などなどの頻出単語は、辞書で検索すれば数十から百以上の日本語訳と、数十のイディオム(熟語・慣用句)が掲載されています。それらをすべて記憶し適切な訳を導きだすことは、多くの学生にとってほぼ不可能でしょう。
 そのような状況下、日本の学校教育の中では、それぞれの英単語の持つ「代表的な意味」しか教わりません。教える時間も教わる余裕もないのです。従って、日本人向けに作られた教科書以外の英文、たとえば外国人が自然に発する英語(本物の英語とか、生の英語といわれるもの)が理解できないことが日常的に起こってしまいます。


| 聴(解)力と読(解)力

 入力系統は「聴解力」とか「読解力」などと一般に呼ばれますが、実はこれらの分類では複数のことを一語で表しています。
 まず「聴解力」に関していえば、こうなります。―我々はリエゾンしている英単語を単語単位に分解することができないため、聞き取りができない。もし仮に聞き取れた場合でも、英単語を代表的な日本語訳に置き換えて並べ替えただけでは意味が通じないため、理解できない―。つまり「聴解力」を、まず聞き取るだけの「聴く力」と、次に聞き取った文章を理解する「理解力」のふたつに分けて考える必要があるのです。
 同様に「読解力」という言葉にも同じことがいえます。日本人は「英単語を読めないから英語を理解できない」のではありません。発音の正確さはさておき、ひとまず「読む」ことはできます。つまり、英語を「読む力」はあるが、その意味を「理解する力」がないのです。私たちは、これを「読力」と「読解力」と分けて考えています。「読む力」と、読んだ上でさらに理解できる力「読解力」は異なる能力なのです。
 英語を頭に入力するためには、「聴く力」あるいは「読む力」またはその両方が必要です。繰り返しますが、ここで言う「聴く力」とは英語の音声から単語を切り出す能力、そして「読む力」とは文字化された英単語を認識し音声化する能力です。
 これらの音声化、または文字化されている英語を、聴力や読力をもって「単語の連続」として頭の中に放り込みます。そして、その上でようやく「理解」する段階となります。
 「読めるからわかる」とか「聞き取れないからわからない」と言うことではなく、英語を読む能力、聞き取る能力とは別の次元に「英語を理解する処理能力」があると考えれば良いのです。
 とあるAさんがもっている、英語を「読む力」と「聴く力」は大いに異なるでしょう。しかしAさんの「英語の理解力」はひとつです。たとえば、リスニングの苦手なAさんのために、日本語のように英語を読んで聞かせるとしましょう。あたかも分かち書きされているかのように、リエゾンさせずに単語単位にひとつずつくっきりと読みあげるのです。すると、Aさんはその英文を、まるで文字を目にしたかのように頭の中に放り込むことができます。この英文が、Aさんの英語の理解力の範囲内であれば、その内容を理解することができます。
 しかし、英文の内容がひとたびAさんの理解力を超えてしまうと、いかにわかり易く単語に分けて読んであげたとしても、とたんに理解できなくなります。Aさんの理解力の範囲を超えた文章は、聞き取れたとしても、すらすら読めたとしても、残念ながらAさんは理解できません。入力回路として読む力や聴く力はもちろん必要ですが、その上で理解力がなければ、何にもならないのです。


| 理解力を養う

 いかがでしょう。リスニングの練習をして理解力は高まるでしょうか? 会話の練習をして、理解力は向上するでしょうか?リスニングが上手になったとしても、発音が上手になったとしても、それは「英語の理解力」とは違う次元の話であるということは、ご理解いただけたと思います。
 さて、それでは英語学習において、特に入力系統(入力から理解する段階)においてはどんな学習が必要なのでしょうか。
 日本人は、放っておいて英語のリスニングができるようになることはありませんし、放っておく時間が長ければ長いほど「聴く力」の獲得は困難になります。まずは「聴く力」の涵養につとめるべきでしょう。
 我々はこの「聴く力」のことを「リズム回路」と呼んでいます。「リズム回路」は、幼児期であれば半年から1年で身につけることができます。そして、「リズム回路」を身につけた子どもたちには、英語は「英語らしき音の塊(ダンゴ)」ではなく、まるでスペースで区切られた分かち書きで書かれているかのように「単語(タンゴ)の連続」として知覚されます。(うらやましい話です)
 ただ、それだけでは英単語が頭の中に入ってくるというだけで、意味のある文章としての理解ではありません。しかし、これまたありがたいことに、幼児期の子どもたちは、ひとつの単語に異なった文脈の中で繰り返し出会うことによって、単語ひとつひとつに「この単語はこんな感じ」とイメージ付けをしていくのです。この作業はまったく無意識のうちに行われます。子どもたちが意識すらしていないのに、彼らの脳が勝手に「おっ、またこの単語だ、この単語はこんな意味かな?」と単語に意味付けをしていってくれるのです。
 そんな、大人にはとうてい真似できない特別な能力を持っている幼児たちですから、ちょっとした働きかけ、つまり「パルキッズ」によるナチュラルで効果的な刺激を与えるだけで、いとも簡単に英語のリスニング力や理解力までも身につけてしまうのです。
 もちろん、これは幼児期から小学校低学年までの子どもたちに限られた言語処理能力ですので、それ以降に英語学習を開始するお子さんのケースでは、別の学習法が必要になります。可能であれば、幼児期から小学校低学年までの、子どもたちの脳が柔軟でしかも優秀な言語分析をしてくれている時期に、英語学習をスタートさせるのが理想です。


| 理解力を高める読力

 「パルキッズ」の学習の中で、我々がとても重視しているのが「読力の育成」です。「なぜ?幼児期ならば、聞いてわかるようになったら、あとは話す練習じゃないの?」とお感じになる方もいらっしゃるかもしれません。しかし一度、聴く力とある程度の理解力が育ったら、次に必要なのは、会話などの出力ではなく、「入力のもうひとつの系統」である読む力なのです。
 「パルキッズ」の学習では、聴く力と理解力が育ちます。耳にした文章を、次々と単語ごとに切り出していき、直感的にそれをイメージ化する能力が身につきます。”Did you have fun at the pool today?” と聞かれれば、今日プールで遊んだことを思い出し、それが楽しかったのであれば、”Yes!” と答えるでしょうし、”Let’s eat out tonight.” と声をかけられれば、デザートのアイスやみんなで楽しく外食しているところを思い浮かべて”Yeah!” と答えることでしょう。こんな「直感的な」英語の理解は、「パルキッズ」の学習で簡単にできるようになるのです。
 しかし、英語の学習はここでは終わりません。「パルキッズ」の学習ではおおよそ英検準2級から2級程度の実力を身につけられますが、それでは英語力としては充分とは言えません。社会に出て、もしくは外国へ行って、英語で十二分に世界の人々と渡り合えるような道具や武器としての英語力となると、準1級でも少々心許なく、英検1級は欲しいところです。
 幼児期に「パルキッズ」で聴く力を身につけてしまった子たちにとって、リスニングはそれ以上トレーニングの必要はありません。次に伸ばすべきなのは「理解力」です。ところが、聴く力を使っての言語情報の入力には限界があります。場所や時間などに制限が多く、しかもコストもかかります。さらに子どもたちは成長とともに、どんどん忙しくなります。勉強やスポーツに忙しく、英会話スクールに通ったりする時間もなくなります。「効率の良い理解力の向上」には、聴力からの英語学習は不向きなのです。そこで、必要となるのが、聴力と並んでのもうひとつの入力系統の「読む力」なのです。


| 日本語だったら?

 国語(日本語)の能力を例にとれば、簡単に理解できることです。もし、お子さんの国語の能力を高めたいと思ったら、どうしますか?日本語会話学校へ通わせますか?(そんなものがあれば、の話ですが…)そんなことはしないでしょう。一番手っ取り早く効果的で、場所もとらずお金もかからない学習法は「読書」でしょう。子どもたちは、読書からたくさんの語彙を身につけていきます。文法面でも「こんな言い回しもあるのか」と、様々な表現や型を身につけていくでしょう。そんなお手軽で効果的な学習を可能にするには、ひとつだけ条件があります。それが、「読力を身につけていること」なのです。
 そのためには、いきなり2つのこと(「読む」「理解する」)を一度にさせるのではなく、まずは読めるように育ててあげましょう。この段階では、文字を一生懸命追っているだけ、それを音声化するのに精一杯、そんな状態で良いのです。読める漢字が少なければ、少ないなりに拾い読みからスタートすれば良いのです。
 小学校では、国語の教科書の「音読」が宿題として出されますが、これが効率的です。―毎日決まった量を(できれば大量に)無心で読む。意味はどうでも良い―。読力を育てる段階では、意味ではなく、まず目の前の文字を日本語のスムーズな音に変換できるようになれば良いのです。
 そして、それを続けるうちにスムーズに読めるようになってきます。もちろんその間、何度も繰り返し読むうちに文章の意味も理解できるようになるでしょう。しかし、まずは読む力です。最初のうちは読むだけで、理解するのに時間がかかるかもしれませんが、慣れて読力が身についてくると、理解のスピードも速くなります。ついには、集中して読んでいれば次々と文章がイメージとして結像していく、つまり、理解できるようになっていくのです。
 一度、この読力を身につけてしまえば、あとは簡単です。身につけた読力を使って読書を進めるうちに、表現や語彙のストックが増えていき、理解力も向上していくのです。
 英語もまったく同じです。聴力から身につけた理解力は、まだまだ幼稚で未熟な理解力です。その理解力に磨きをかけていくのは、やはり「読書」なのです。そのために「パルキッズ」の学習では「読力の育成」に重点を置いているのです。


| 逆もあり!

 と、ここまではラッキーな子どもたち(幼児期に「パルキッズ」をスタートできた子どもたち)の話をして参りました。聴く力、読む力と理解力の話のついでに(少し長くなってきましたので)、手短に、幼児期以降の話をしましょう。
 中学校からの勉強で、いったいどれくらいの英語の理解力が身につくのか。これは「あるポイント」をクリアするか否かで決定的になります。あるポイントをクリアすれば、中学生以降の学習でも充分バイリンガルに育ちます。しかし、そのポイントをクリアできなければ、どんな学習法を、何十年試みたところで、「使える英語」を身につけることは困難でしょう。
 そのポイントとは。聴力?読力?理解力?…やはりポイントは「理解力」です。では、この「理解力」とはどのようなものなのでしょうか。
 幼児たちは、耳からの学習で英語を聴き取る力を身につけ、そのあと理解力を身につけることは述べました。そして、その理解力とは「直感的な」理解力であることも書きました。直感的な理解力、つまり耳にした瞬間に像が浮かぶ、そんな「イメージ力」と呼んでも良い能力です。
 例えば、「今日は幼稚園で何したの?」と聞かれたら、思考するのではなく、直感的に記憶を呼び起こしてイメージが浮かび、そして「粘土とプール」と答える。そんな能力です。つまり、それが英語でできれば良いわけです。“What did you do today?” と聞かれて、反射的にプールでの水遊びを思い浮かべる。この程度の非常に原始的なイメージ結像力が、「初期段階の理解力」です。そして、年齢が上がってからの英語学習では、まずはこの「初期段階の理解力」がクリアすべきポイントなのです。
 では、そのためにはどうしたらよいのか?
 小学生の国語の宿題のように、毎日毎日せっせと「英語の音読」をこなせば良いのです。まずは、内容を理解しようなどと考えず、すらすら読めるように、目の前の文章を英語のスムーズな音声に変換する作業に専念します。最初はわからなくても、繰り返し同じ文章を読んでいれば、いつしか何となくイメージできるようになります。また、英語独特の「リズム」が身についていきます。すべての単語をひとつずつ目で追っていかなくても、ある程度ずつの英単語のまとまりで読めるようになるのです。
 ここで重要な点は、「簡単な本を選ぶこと」です。難しすぎてまるで内容がイメージできなければ、さすがに飽きてしまうでしょう。また難解な本は、すらすらとリズム正しく読むことが困難です。なぜなら、一文が長いと主語(部)や述語(部)を発見するのが困難なので「どこで区切って読むのか」がわかりにくいからです。まずは、短く簡単な単語で構成されている文章を、大量に読んで、「英語の読力」―表記されている英語を音声に置き換える能力―を身につけていくことです。そしてこれを繰り返すうちに、英語を日本語に訳さず、直感的にイメージできる初期段階の理解力が育って行きます。


| リスニングテストは理解力勝負

 最後に、聴く力、読む力と理解力について「英語の試験」を例に説明しましょう。
 リスニングテストの点数向上に最も貢献するのは「聴く力」ではありません。リスニングテストでは、きわめてクリアに英文が読まれますので、日常会話を聞き取るほどの優れた聴力までは要求されていません。リスニングテストの良否は「理解力」に左右されるのです。
 もちろん、聞き取れないことにはリスニングテストになりませんので、ある程度の聴く力は必要です。しかし、それよりも何よりもリスニングテストを困難にしているのは、理解力の低さです。しかし理解力といっても、論理性・専門性の高い高度な文章の理解ではありません。前述の「聞いたらすぐにイメージできる」ような、初期段階の理解力が低いのです。
 日本人は、文章題は比較的解ける一方、リスニングが苦手な傾向にありますが、その理由は、リスニングテストは後戻りできないという点にあります。文章題は、何度も読み返すことができますが、リスニングは聞き返すことができません(英検準2級以上や、TOEFL, TOEICなどのリスニングテストには繰り返しがありません)。したがって、耳にした瞬間に次々とイメージしていかないと、話はどんどん先へ進んでしまいます。もちろん、日本語に訳している暇などありません。
 そうなのです。「日本語に訳していては点数がとれない」。ここがポイントです。私たちは、英語は日本語に訳すものだと思い込んでいるので、頭の中でせっせと日本語に訳しているのですが、リスニングテストでは日本語に訳していては間に合いません。リスニングが苦手なのも当然です。
 しかし、この「リスニングが苦手」という問題も、学習方法次第で解決できます。
 英語の聞き取りが苦手な日本人が、英語の理解力を高める方法はひとつです。「読力」を通した理解力の涵養以外に道はありません。たくさんエッセイを読んだり、過去問題や類似の問題を徹底的に解いたり、そんな習慣をつければ良いのです。しかも、同じものを繰り返し読むのではなく、次々と新しいものに取り組み、読み飛ばして「全体を把握する」練習が必要です。
 リスニングというのは、繰り返し読むことの禁止された長文読解のようなものです。エッセイなどに目を通し次々とイメージ化して理解していく練習が、「文章全体を把握する理解力」の向上に貢献し、その結果、余裕を持ってリスニングテストへ臨めるようになるのです。

 使える英語を効率的に身につけるためには、「幼児期に英語の聴力、初期段階の理解力、さらに読力を身につけ、読書を通して高度な理解力を育てていく」これがベストです。しかし、これが叶わない場合には、「読力を身につけ、音読を繰り返しさらに大量に読み飛ばすことで、日本語に訳さず英語のままイメージ化できる初期段階の理解力を身につける」そして「読書を通して理解力を向上させる」という段階を踏む方法もあります。
 いずれにしても、しっかりと目的を持って英語学習を進め、横道にそれないように(たまには結構なことですが)理解力の育成に努めることが、使える英語力の効率の良い獲得へとつながるのです。

 と、長々と書いて参りましたが、今回は四技能のうちの入力系にしか触れることができませんでした。残りの出力系統(スピーキングとライティング)について、さらに、それら出力の質を決定づける論理思考については、またの機会に触れて参りたいと思います。

 「パルキッズ」の学習もオンライン化によって、入力系統ばかりでなく出力系統もしっかりと育てられるように進化しています。「パルキッズキンダー」や「アイキャンリード」 にお取り組み中で、まだオンラインレッスンに進まれていらっしゃらない方は、夏休みのこの機会に、ぜひ出力系のオンラインレッスンに取り組んでください。また、9月からは、キンダーの弟分「パルキッズプリスクーラー」もオンライン版となります。今後とも「パルキッズシリーズ」で、未来を見据えた、お子さまの将来への投資を進めていただければ幸いです。


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プロフィール

船津 洋(Funatsu Hiroshi)

株式会社児童英語研究所 代表、言語学者。上智大学言語科学研究科言語学専攻修士。幼児英語教材「パルキッズ」をはじめ多数の教材制作・開発を行う。これまでの教務指導件数は6万件を越える。卒業生は難関校に多数合格、中学生で英検1級に合格するなど高い成果を上げている。大人向け英語学習本としてベストセラーとなった『たった80単語!読むだけで英語脳になる本』(三笠書房)など著書多数。

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