10万組の親子が実践した幼児・小学生向け「超効率」英語学習教材のパルキッズです。


カートを見る
ログイン
パルキッズCLUB

パルキッズ通信 特集 | , , , ,

ヘッダー

2017年3月号特集

Vol.228 | 3級・準2級もスタート!英検ライティングテスト対策

親子でできる!話す・書く力を育てる思考トレーニングって何?

written by 船津 洋(Hiroshi Funatsu)


※本記事のテキストは引用・転載可能です。引用・転載する場合は出典として下記の情報を併記してください。

引用・転載元:
http://palkids.co.jp/palkids-webmagazine/tokushu-1703/
船津洋『3級・準2級もスタート!英検ライティングテスト対策』(株式会社 児童英語研究所、2017年)


| 英検も時代に合わせて変化しているようです

特集イメージ2 公益財団法人 日本英語検定協会が実施している「実用英語技能検定」、皆様おなじみの「英検」ですね。
 英検の試験内容は、もともと選択問題を中心に構成されており、一次試験では、語彙や読解力などの文字情報の処理能力を測るリーディングテストと、音声情報の処理能力を測るリスニングテストのみでした。しかし、これでは筆記能力の測定ができないので、2級以上(※1)の一次試験では短い記述試験(ライティングテスト)が課されています。また3級以上(※2)では、一次試験に合格すると二次試験(面接)があり、口頭における英語の運用力を測定して合否が判定されます。
 そして、来年2017年度第1回(2017年6月実施)検定からは、3級と準2級にもライティングテストが導入されることになりました。
 この変更により、3級以上では「読む・聞く・話す・書く」の四技能のバランスが取れた技能測定ができる、ということのようです。「書く」作業は「話す」作業よりも厳密さが要求されますので、記述試験を課すことによって、より正確に受験者の英語力を測定することができるようになるでしょう。

※1) 2級には2016年度よりライティングテスト導入。 ※2) 5級・4級には2016年度よりウェブサイト上でのスピーキングテスト導入。ただし5級・4級の資格は一次試験の結果のみで認定。


| パルキッズ育ちには有利?

特集イメージ2 受験前の準備としては、小手先の対処法もありますが、特にテスト慣れしていない幼児や小学生の場合、また級が上がる程、いわゆる「試験のテクニック」はほとんど頼りになりません。しっかりとした「実力」の涵養が欠かせないのです。つまり、聞いて理解でき、読んで理解できる能力、さらには、より素早く英語を処理できるスピード感も必要となります。
 英検に限らず、高校や大学の入試問題などを見ても、最近の英語の試験の傾向としては、語彙や文法問題よりも長文読解問題が重視されているようです。重箱の隅をつつくような、しかも日本でしか通用しないような文法問題を解かせていた時代に比べれば、これは大きな進歩でしょう。
 また、この傾向は「パルキッズ」で学習を進めている子どもたちにとっては、大いなるメリットになります。パルキッズの学習では、まず「聴解力」、続けて「読解力」を身につけていきます。当然のことながら、幼児期の英語学習の最大のメリットである「日本語を介さず英語を理解する力」が育ちます。この英語の獲得法では、聴解力にしても読解力にしても、日本語に訳す必要がないので、英語を理解するのに余計な時間がかかりません。我々が日本語を聞いたり読んだりして理解するのと同じように、直感的に英語を理解できるようなります。
 もちろん、高度に抽象的な概念(政治、経済や思想など)を理解することは、幼児や小学生には難しいことですが、上記のような英語の理解力があれば、字句に拘泥せずに「全体としてどんな話なのか」をざっくり把握することができます。その結果、準2級や2級くらいまでなら、パルキッズのレッスンに加えて、実際の英検の問題に慣れる程度で攻略できるのです。さらに、このような子たちにとっては、二次試験(面接)は一次試験よりも簡単です。一次を合格した子は、事前に少し練習をする程度で、難なく二次試験をクリアできます。
 しかし、今後3級と準2級に追加されるライティングテストに関しては、少々対策が必要になります。パルキッズの「英検オンラインレッスン」は準2級対策までは用意ができていますので、読解力や聴解力に関してはこの教材をお使いいただけければ良いのですが、記述問題に関してはオンラインレッスンでは対応できないので、個別に準備する必要があります。
 そこで、今回は記述問題の対策について考えて参りたいと思います。


| 英語を理解するとは?

 さて、最近では、英語教育といえば「四技能」だそうです。英語の四技能に関しては、本誌でもすでに何度か触れているので詳細は避けますが(ご関心のある方は参照記事『いま、学校英語は大混乱?!』をご覧ください)、どうもこの呼び名からは、「読んで理解する技能」「聞いて理解する技能」「考えたことを話す技能」「それらを書く技能」というものがあって、それぞれを磨く、といった具合に理解できます。しかし、実際に頭の中で行われていることは、単純に4つに分類することはできません。四技能ということばは、舌足らずの観が否めないのです。
 ここで、幼児の言語獲得の過程を、四技能に照らし合わせて考えてみましょう。


| 聞いて理解する力

特集イメージ3 幼児は言語獲得において、まず「聴解力」を身につけます。これはひと口に言ってしまえば「聞いて理解する能力」ですが、実は相当複雑なことが行われています。例えば、幼児は1歳にならない段階で、日本語の「音素」を理解します。
 「音素」とは特定の言語において意味を変えてしまう最小単位のことです。例えば、英語では、/l/ と /r/ は異なる音素で、それらが例えば /led/, /red/ のように入れ替わると意味が変わります。一方、日本語には /l/ と /r/ の音素は存在しません。(英語の /r/ の音は舌を硬口蓋に接触させずに発音する [ɹ] の音、/l/ は上歯茎に接触させる [l] の音ですが、日本語の「ラ行」の子音は硬口蓋に軽く触れる [ɾ] です。)そこで、日本人がそれらの英語の音を再現するときに、近い音、つまり日本語の「ラ行」を発音するときに使われる子音で置き換えるようなことが起こるわけです。
 また、日本語には母音も少ないのですが、英語は豊富で、[æ], [ɑ], [ʌ] などは日本語では全部「あ」と置き換えられてしまいます。日本語の音素は英語の音素と重なっている部分も少なくありませんが、この音素の違い(日本語の音素に存在しない英語の音素)が、日本人にとっての英語のリスニングを難しくしている一因です。
 幼児は、このような自分の母語の音素を生後半年くらいで理解し、その音素が組み合わさってできている形態素(単語)を発見するに至ります。これが、聞き取り能力です。
 ただ、もちろん聞き取れるだけでは意味がありません。単語を聞き取れても意味が分からなければ、言語の理解には至りません。しかし幼児たちは、繰り返し同じ形態素(単語)を異なる文脈上で耳にするうちに、その語の意味を理解するようになります。例えば「イヌ」という音が「イヌという物体」と頭の中で結びつくわけです。これらの、音と対象の概念のペアの集合が、個人の語彙です。そして、語彙を組み合わせて、例えば「イヌがいる」という音声を聞き取って、理解することができるようになります。そして、年齢と共にどんどん複雑な文章をも理解できるようになるわけです。これが聴解力です。
 ここで、いくつか気をつけておきたいことがあります。一般に「リスニング」とは「聞くこと。聞き取り。」ですから、リスニング力とは「聞き取る能力」のことです。つまり、「リスニング力」=「聞いて理解できる能力」ではないということです。とりあえずここでは、聞き取り能力を「聴力」、聞き取ってさらに理解する能力を「聴解力」と分けて呼んでおくことにしましょう。ちなみに、聞き取るためには「音素の知識」が必要なので、がむしゃらに英語を聞いてもリスニング力は身につきません。大切なのは、英語の音素をしっかりと理解することです。これに関しては長くなるので、拙著『英語の絶対音感トレーニング』(フォレスト出版)をご参照ください。
 また、もうひとつ気をつけるべきは、すでに述べたように「聴解力」とは単語を聞き取って「直感的に」イメージできる能力であるという点です。聞き取った英語を日本語に訳して理解するのは、厳密には英語の聴解力とは呼べません。これは「聴力」+「翻訳の技術」です。
 パルキッズの学習では、英語を聞き取れる「聴力」だけではなく、聞き取った英語を日本語に訳すことなくイメージしたり理解できる「聴解力」の育成が達成されます。この点、我々大人が中学からの英語学習で身につけてきた英語のリスニング力とは、次元の違う能力であることを記憶しておかなければなりません。


| 読んで理解する力

特集イメージ4 さて、母語獲得において「聴解力」が身についた子どもたちは、続いて母語を口にするようになります。「話すこと」に関しては後述するので、次の段階へ話を進めます。話すようになった子が、次に獲得する言語能力は「読解力」です。
 読解力も、聴解力同様に分析してみると、以下のようになります。まず初めは、絵のようにそれだけでは意味を持たない、抽象的な記号、つまり「文字」が目に入ります。これらの記号を解読するためには、日本語ならば「仮名」や「漢字」を知ることが必要となります。こうした記号の知識をもとに、記号を音声化します。
 日本語の音韻は「かな」で表されますので、最初は「かな」を音声化しながら、文中に単語を発見していきます。日本語は英語のように分かち書き(語の区切りに空白を挟んで記述)されないため、「かな」ばかりの文章は単語の発見しにくく読みにくいものです。しかし、段階が上がって「漢字かな交じり文」を読むようになると、単語の発見はずいぶん楽になります。語を発見し、その語がその個人の「語彙」に含まれていれば、直感的にその語の指す概念がイメージ化されます。
 他方、中学生になって、初めて英語の学習をスタートする子の場合を考えてみましょう。この場合には、あらゆる英単語を一度日本語に訳してから、日本語としてイメージ化することになります。この点、「聴力」と「聴解力」の関係と似ています。英語の音韻を表す「アルファベット」の知識を身につけて、英文を読めるようになっただけでは、これは「読力」に過ぎません。例えば、’I can’t put up with him.’ という文章を音声化する能力を「読力」と呼びます。しかし、この文章を読んだとき直感的にイメージが湧かなければ、あくまでも「読力」であって、「読解力」ではありません。聴解力と同じで読解力に関しても、日本語に置き換えるというひと手間が掛かりますが、これはあくまでも日英対訳式で英語学習をスタートする者の経る過程です。
 我々大人は、学校での英語教育の経験から「英語を日本語に訳して理解すること」=「英語を理解すること」だと漠然と感じてしまっています。しかし、パルキッズで学習している皆さんのお子さんたちは、英語を理解するときに「日本語のフィルター」を通しません。聴解に関しても読解に関しても「日本語訳」の段階を飛び越えて理解するのです。繰り返しますが、これはとても重要な点です。後述する筆記力の段階で、間違った指導をしないためにも、常に念頭においておきましょう。


| 「出力」する能力

特集イメージ5 さて、ここまでを整理すると、英語の文字情報や音声情報を、読んだり聞き取ったりする能力が「読力」と「聴力」でした。そして、大抵の日本人はそれらの情報を一旦日本語に置き換え、英文法の知識に照らし合わせて、正しく並び替えて理解します。厳密に言えば、このような理解は英語の「読解力」や「聴解力」によるものではなく、英語の「読力」や「聴力」に「翻訳」というひと手間を加えて理解する方法です。しかし、幼児期から英語環境を与えられて育った子どもたちは、そのひと手間を飛ばして、英語の文字情報や音声情報を直感的にイメージ化することができます。つまり、英語の「読解力」や「聴解力」を有していることになるのです。

 さて、それではスピーキングとライティングの能力とはどのような位置づけになるのでしょうか。結論から言ってしまえば、これらは表出の手段が異なるだけで、それ以前の心的に行われている作業は同じものに過ぎません。
 例えば、母語である日本語の場合を考えてみましょう。まずは頭の中で何事かを思い浮かべます。次にそれらの思考を、時系列に順序立てて整理します。これが言語の特徴のひとつです。言語は絵画ではないので、同時にいろいろなメッセージを伝えることができません。音声化するにしても、記号化するにしても、順序立てて出力していかないと、相手に意図を巧く伝えることができません。そして、整理整頓できたら、それを相手と共有する言語(日本語)の文法のルールに照らし合わせながら、発話もしくは記述していきます。これが、スピーキングとライティングです。
 ここで、混乱を避けるために、スピーキングとライティングに関して、どちらも、「思考の整理」と「表出」の二段階に分かれていると考えることにしましょう。「思考の整理」はとあるテーマに関してイメージを思い浮かべ、それらがどんな要素から成立しているのか、または情報の重要度を分類します。つまり(論理的)思考です。次にそれを言語のルールに則って作文します。ここまでが頭の中で行われる思考の整理としましょう。続いて、それを発話したり記述したりという方法で「表出」します。日本語や英語で話したり書いたりすることはもちろんのこと、手話や点字なども、この表出系の部類です。


| 一段階目が重要

特集イメージ5 さて、出力の一段階目を「思考の整理」、二段階目を発話や記述の「表出」と考えると、それらのトレーニングの目標はよりクリアになります。前後しますが、一段階目の思考は後回しにして、まず二段階目の発話や記述の技術の向上に目を当ててみましょう。
 発話、つまりスピーキングの練習には、どのようなものが考えられるでしょうか。例えば、人前でスピーチをすると想像してみましょう。まずは正しく発音することが求められます。滑舌良くクリアな発音で話す練習が必要となるのです。さらに、発声練習も欠かせません。いくら発音が良くても、声がか細くて相手に届かないようではせっかくの美声も意味を持ちません。また、ステキな声で音量が豊富であっても、単調では魅力に欠けます。そこで、スピーチにメリハリを付ける必要があります。強調する部分や、ポーズなどの練習です。さらにはジェスチャーや表情など、スピーチは多くの技術から成立しています。これが、スピーキングの練習です。
 記述の練習は、これに比べて簡単です。きれいな字で書く。このひと言に尽きます。つまり、ライティングの練習というのは突き詰めてしまえば、きれいに書くことに集約されてしまうのです。
 しかし、問題はどちらかといえば第二段階の表出ではなく、第一段階の思考にあります。皆が俳優になるわけではありませんし、演説家になる必要もありません。また書家を目指すのでもない限り、普通に読める文字を書ければそれで事足りてしまうからです。大切なのは、表出の前段階にある思考の整理の部分なのです。


| 思考の整理、論理的思考

特集イメージ5 発声練習や演技の練習をすれば、話をする際に表面的なインパクトは与えられますし、きれいな文字を書ければ、それだけで読む人に好印象を与えます。ただ、やはり重要なのは話したり書いたりする、その「内容」です。
 発声練習や筆記練習は個別に大いにやっていただくとして、同時にアウトプットするその内容を左右する思考の整理術を身につける練習は必ず行わなくてはいけません。
 アメリカでは広く行われている「クリティカル シンキング(批判的思考)」などが、この論理的思考を育むトレーニング法です。クリティカル シンキングとは、誤解を恐れずに言えば「与えられた情報を『本当か?』と疑い、その上でよく考え自分なりの結論を出す」ことです。日本ではこのトレーニングがまったく行われていません。大学に入って、学部によっては行われる程度ではないでしょうか。この考え方に従えば、メディアからの情報はまず疑う(商売なので必ずバイアスがかかっています)、友人の情報も疑う(嘘だと決めつけるのではありません)、先生の発言すら疑う(先生だって人間です)わけです。もっとも、これが行きすぎると、屁理屈ばかり言う人格に育ちかねない危険性を孕んでいます。そこで重要なのが、「論理的な思考」と「高品質な情報の収集力」です。
 クリティカル シンキングをしなさいと言っても、先生すら疑ってかかるなどといった不遜な行動は、従順な日本人の気質には似合いません。しかし、論理的な思考自体は不遜でも不敬でもないので、せっせと行うべきでしょう。
 では、どのようなところから、論理的な思考力を育てていけば良いのでしょうか。答えは簡単です。話す前に考える癖をつけることです。話す前に考える作業を日常的に行うようにすれば良いのです。
 今回は、英検の記述問題の対策がテーマです。それでは英検の記述問題の対策として、論理的な思考を英語で行う練習をすれば良いのでしょうか?英語で書く練習をするわけですので、書く前に考える練習も英語で行う必要がありそうです。ここで、少し論理的に物事を考えてみましょう。  まず、トレーニングしたいのは論理的な思考法です。思考の整理整頓は、英語で行っても日本語で行っても構いません。つまり、何かを考えて整理するときには、どの言語を使っても良いのです。ちなみに、僕の場合には、日本語で書くときには日本語で、英語で書くときには英語で考えます。それによってでき上がる文章は、比べてみるとまったく違う物になります。同じアイデアや考え方が書かれているのですが、表現の仕方が言語によって異なります。
 英語でも日本語でも考えられるのであれば、思考の整理整頓の際にどちらの言語を使っても構わないのですが、英語で考えることが難しい場合は、そこは日本語で行えば良いのです。また、付け加えれば、論理的な思考を育むことに関しては、書いて練習しても、口頭で行っても構いません。あくまでも「思考法」の練習ですから、言語や表出系統は選びません。ということは、日本語での日常会話の中でも、親の語りかけによって、そのような練習を行うことができるのです。


| ディスカッション・クエスチョン

特集イメージ5 練習方法は至ってシンプルです。「親が質問をする。子が考えて答える。」以上です。
 例えば、英検対策を念頭におくと、以下のような質問となります。(「英検」対策ですが、思考整理の練習なので日本語で質問します。)
 まずは簡単なところから、「好きな食べ物は何?」「好きな季節は?」「好きな教科は?」などの質問をします。ポイントは、できる限り具体的な質問にすること。「好きな食べ物」よりは「好きな果物」「好きな飲み物」「好きなお菓子」など、絞り込んだ質問をするように心がけてください。
 それに対して、例えば「イチゴ」という答えが返ります。そこで今度は、「なぜイチゴが好きなのか、理由を2つ挙げる」ように求めます。その答えとしては「好きだから」というのは理由になっていないのでNGです。「おいしいから」というのも好ましくありません。なぜなら、「では、メロンは?リンゴは?おいしくないの?」と質問できてしまいます。もちろん、最初はこのように親が子どもの思考を深めてやる手順を踏んでも結構です。つまり、「メロンもリンゴもおいしいけれども、なぜイチゴが好きなの?」と掘り下げます。そこで、「赤いから」「甘いから」などの答えが返ります。これも突っ込めばいくらでも突っ込めますね。「リンゴも赤いし、メロンも甘いのに、なぜイチゴなの?」と。すると「ケーキに乗っているから」とか「甘酸っぱいから」とか「形と見た目がかわいいから」などと、かなり具体的な答えが返ってくるかもしれません。
 このような作業が大切です。「私は、数ある果物の中で、なぜイチゴが好きなんだろう?」と考えさせるのです。答えは何でも良いですし、あるときには「イチゴ」、あるときには「メロン」でも結構です。重要なのは、質問されたときに、自分がなぜそのように答えたのかを自覚することなのです。
 慣れてきたら、上記のような単純な質問から、もう少しレベルを上げて「休みの日にしたいことは何?」なども聞いてみましょう。これに対して「友だちと遊びたい」「ゆっくりしたい」「散歩をしたい」「本を読みたい」など、答えはいくらでも考えつくようになるでしょう。そして、答えるときには、理由を2つ添えるような習慣を付けていくわけです。
 さらに、レベルを上げれば、「学校は制服を廃止すべきだと思う?」「高校生のバイトは制限すべきだと思う?」「ボランティアには積極的に参加すべきか否か」などといった中高生でも答えられるようなものから、「日本は難民を受け入れるべきか否か」「生活保護を手厚くすべきか否か」「医療保険の個人負担を増やすべきか否か」「アメリカの保護主義には賛成か否か」など内容を濃くしていけば、英検準1級や1級にも十分対応できる論理的な思考力が身につくと同時に、社会で起きていることをより身近に感じることができるようになるでしょう。
 言うまでもありませんが、この練習は大人も意外と楽しめます。責任ある大人であるはずの我々も、思いの外、適当にメディアから発せられる情報を鵜呑みにしたりして、根拠なく会話をしていることが多いのです。返答に「理由を2つ挙げる」ことを習慣づけてみると、思いも寄らない自分の思考の傾向に気づくかもしれません。
 このようなディスカッション・クエスチョンは曖昧性を避け、できる限り具体的に、またイエス・ノーで答えられないような質問にする必要があります。そして、質問を生成する親の方も、これまた思考の整理整頓の練習になってしまうのですから一石二鳥でしょう。


| 最後に英語で。

特集イメージ5 思考の整理の練習は、できれば毎日行いましょう。朝に問題を出して、夕方に答えさせても構いませんし、毎夕食時にそんな取り組みを行えば、習慣付けもしやすいでしょう。繰り返しますが、親の仕事は良質の質問を生み出すことです。そこが年の功、腕の見せ所です。
 さて、このようにして思考整理の練習をしながら、英検対策としては、これをそのまま英語で行うようにします。そして、ここでようやく書く練習です。質問し、それに対して答えを書かせます。試験本番では時間が限られていますが、練習の段階では瞬発力は不要です。
 適当な用紙に、親が質問を英語で書き、それに対して、子どもは翌日までに答えを書く、そんな要領で良いでしょう。なぜ英語で書かせるのかといえば、もちろん英検対策ということもありますが、お子さんたちはすで「英語で考える」能力を持っているので、その能力を使わせるのです。ただ、親御さんの中には英語が苦手な方もいらっしゃるでしょうから、口頭による対話式ではなく、筆記で行うというわけです。
 3級レベルでは、解答語数の目安が 25~30語ですので、記述とすら言えないほど短い書き物になります。例えば、“What is your favorite subject at school?” という問いであれば、“I like physical education best for two reasons. Firstly, I like to move and exercise my body. And secondly, it is always fun to play sports with my friends.” と、こんな感じで十分でしょう。
 準2級では、50~60語と倍増しますが、やることは同じです。まずは、質問に対して答えとなる結論を述べます。そして、2つの理由を挙げて、最後に結論を述べれば良いわけです。例えば “Should schools abandon their uniforms?” という問いに対して反対意見ならば、まず、“I think schools should not abandon school uniforms.” と、問いに対する答えを述べ、次に2つの理由を挙げます。理由は何でも構いません。「制服があれば毎日着ていく服を考えなくて良い」「服をあまり買えない学生にも平等だから」「ひと目でどこの学生だか分かるので行動を慎むから」「制服があると学生の一体感が得られるから」などなど、何でも良いのです。また、制服廃止に賛成意見の場合であれば、「制服は表現の自由を奪っている」「制服があるとファッションセンスが育たない」「制服は高い」「制服はダサイ」など、それこそ理由は何でも良いのです。
 重要なのは、ある問いに対して、自分の意見を持つことです。そして、その意見を持つ理由を論理的に述べることです。
 2級になると80~100語、準1級では120~150語の論述となりますが、基本的な取り組み方は同じです。質問のテーマが、単純で具体的なことから、複雑で抽象的なことへと高度になっていくだけで、基本的な取り組み方は一緒なのです。
 また、このような論理的な思考力は、大学へ入ってから、社会に出てから、また責任ある発言をする立場になればなるほど、重要かつ貴重な武器となります。せっかくですから、このたび日本英語検定協会さんが記述問題を導入してくれることを切っ掛けにして、論理的な思考のトレーニングをしてみると良いでしょう。ちなみに、ディスカッション・クエスチョンはいろいろなサイトで紹介されているので、うまく活用されると良いでしょう。下記にいくつか掲げます。

*参考サイト
“163 Questions to Write or Talk About”
“Conversation Questions for the ESL/EFL Classroom”


次の記事『子どもの自信に根拠はいらない?』


次の記事
子どもの自信に根拠はいらない?

プロフィール

船津 洋(Funatsu Hiroshi)

株式会社児童英語研究所 代表、言語学者。上智大学言語科学研究科言語学専攻修士。幼児英語教材「パルキッズ」をはじめ多数の教材制作・開発を行う。これまでの教務指導件数は6万件を越える。卒業生は難関校に多数合格、中学生で英検1級に合格するなど高い成果を上げている。大人向け英語学習本としてベストセラーとなった『たった80単語!読むだけで英語脳になる本』(三笠書房)など著書多数。

この記事をシェアする

関連記事