パルキッズ通信 特集 | 子供の成長, 子育て論, 早期教育, 語彙, 論理的思考力
2021年9月号特集
Vol.282 |「ごっこ遊び」で伸ばす論理性
やらなければ損をする簡単な取り組み
written by 船津 洋(Hiroshi Funatsu)
※本記事のテキストは引用・転載可能です。引用・転載する場合は出典として下記の情報を併記してください。
引用・転載元:
https://www.palkids.co.jp/palkids-webmagazine/tokushu-2109/
船津洋『「ごっこ遊び」で伸ばす論理性』(株式会社 児童英語研究所、2021年)
企業が新卒学生に求める能力として、主体性やチャレンジ精神、あるいは誠実さや責任感と並んで必ず上位に挙がってくるのが「コミュニケーション能力」、さらには「協調性」などです。
学生たちを間近に眺めていると、「誠実さ」や「責任感」、あるいは「協調性」に関しては “言われるほど” 欠落しておらず、逆に従順な彼らは余るほどそれらの気質を持ち合わせていると感じます。
しかし確かに「主体性」に欠ける若者が多いのは日常的に感じることですし、「コミュニケーション能力」の低さも今時の学生には共通している点でしょう。
これらはあくまでも新卒に求められる能力ですが、これが中堅社員になると様子が変わります。彼らには「問題解決能力」や「リーダーシップ」と並んで「論理的思考」が求められるようになるようです。
この点に関しても、「問題解決能力」が低ければ、そもそも中堅であるか否かに関わらず、社員としての能力を満たしていないので問題外であると思われます。しかし「リーダーシップ」や「論理的思考」は、平均的な日本人全般に押し並べて欠ける能力ではないでしょうか。
そもそも、組織に「誠実」であろうとすることは、「論理的思考」とは相反する側面を包含しています。誠実さを求めるとある企業があれば、論理性を求める企業もある。個人的には学生たちには、論理性を求める企業への就職を勧めたいところです。
さて、いずれにしても、「コミュニケーション能力」や「論理性」、「主体性」や「リーダーシップ」はこれからの社会を生きていく上で、どの企業で働くのか、あるいは自ら起業するのかに関わりなく、必要とされる能力であることは間違いありません。
また、日本人全般に不足した傾向のこれらの能力を有することは、不透明な時代に未来を生きていく子どもたちには果てしないメリットを与えることでしょう。
これら「コミュニケーション能力」や「論理性」は国語力と直結していることは、直観的に理解できると思います。また、コミュニケーションにおいて使用される言語表現それ自体が論理性に欠けていては、健全なコミュニケーションそのものが成立しなくなります。
つまり、本誌でも繰り返し触れてきたように、「論理的思考回路」という強力なツールとそれと並んで重要である「語彙力」の下支えがあってはじめて、リーダーシップ、あるいは主体性を発揮するときに不可欠なコミュニケーション能力が成立するのです。
今回は「論理思考」を軸に、「コミュニケーション能力」をいかに育てるのかを考えていきたいと思います。
増えている「気になる子ども」たち
発達障害とは診断されないまでも、発達に遅滞のある子、いわゆる “グレーゾーン” にいる子を「気になる子ども」と呼ぶらしいのですが、そんな「気になる子ども」は小中学校で6.5%に上るそうです。
自分が小学生だった頃、つまり50年前に思いを馳せてみると、クラスや学年に1人や2人は、確かに「気になる子ども」がいました。また、長男・次男が小学生だった20年前を振り返ってみても、「気になる子ども」に思い当たります。しかし、こちらもあくまでも1クラス、あるいは1学年に数名です。感覚的な当てずっぽうですが、1~3%位ではなかったでしょうか。
以上は小中学校での話ですが、どうやら保育所では、もっと高い割合でそんな気になる子たちが存在するようなのです。公立保育所で20%、私立で13%にも上るらしいのです。1クラスを35名と想定すると13%で4名、20%では7名もいることになります。
もちろん、この数字は保育所での話です。ひょっとすると保育所では「気になる子ども」の割合が異常に高いのかも知れません。保育所と幼稚園に通う幼児たちの割合はざっと半々です。他方の幼稚園では「気になる子ども」の割合はぐっと低いのかも知れず、結果として彼らが机を並べる小学校では、幼稚園出身の子たちが、その割合を下げているとも想像もできます。
さて、そんな「気になる子ども」の言語能力やコミュニケーション能力などを、「ごっこ遊び」の指導を通して伸ばす試みが行われています。
その研究は、発達遅滞のある5歳児に対して行われました。その子は医学的な診断名を持たない「気になる子ども」で、生活年齢の60ヶ月に対して語彙年齢が36ヶ月と、24ヶ月の遅滞がありました。また、その年齢では通常ならとうにクリアしている「サリーとアン課題」も未通過でした。
その子に、レストランのシチュエーションにおけるごっこ遊びを通して支援を続けた結果、5ヶ月間で20ヶ月分の発達の上昇が見られたそうです。これは劇的な改善ではないでしょうか。
しかし、ここでひとつ疑問が。
ごっこ遊びによって、短期間で劇的に改善できるような、語彙力やコミュニケーション能力の発達における問題点が、なぜ幼児たちの間で広く放置されているのでしょうか。しかも、どう見ても昭和や平成よりも令和の今日の方が、その放置の割合が高くなっているのはなぜでしょう。
この問いに対する答えは、ここでは保留しておくことにします。
いずれにしても、ごっこ遊びのような定形のことばの使用を通して、遅れた言語力を取り戻すことができるなら、あるいはさらに言語能力を伸ばすことができるのならば、これは積極的に取り入れない手はないでしょう。
思いのほか「バラエティーに富んでいない」日常会話
ヒトの言語能力の基本的な特徴は、離散無限性だと言われています。簡単に言えば、ヒトは30~40程度の限られた音声を組み合わせて、無限の言語表現を創り出すことができるのです。
さて、その無限の言語表現ですが、整理整頓してみると、無限どころか思いのほか限定的であることが分かります。
現に『英語で旅するハワイ』(総合法令出版)や『2時間で「話せる・わかる」トラベル英会話』(だいわ文庫)などを執筆した経験から言わせていただけば、旅行で使われる会話表現などたかが知れています。
入国審査やレンタカー店でのやりとり、観劇やイベントのチケットの手配、レストランの予約や注文、あるいは商品に関する問い合わせや購入など、パターンは決まっています。従って、上記の著作物は「それだけ覚えておけば、海外旅行で困ることは9割方ないよ」というスタンスで作られています。
もちろん、日常生活ではもっと多くの会話のパターンが行われます。特に雑談においては、相手によって千差万別。雑談の内容も多岐にわたり、それこそ無限といって良いほどのパターンがあることは間違いありません。
しかし、それはあくまでも「大人の雑談」の話。雑談を除けば日常生活における言語表現は、上記の旅行英会話のパターンと同様に極めて限定的です。
どれくらい限定的であるのかの分かりやすい指標として、いきなりですが、壮大なごっこ遊びのテーマパークである「キッザニア」を引き合いに出すことにします。
おそらく、日常的な会話のパターン、あるいは子どもたちのごっこ遊びのパターンは、キッザニアで体験できる程度ではないでしょうか。つまり、キッザニアを制覇すれば、日常生活で使用される他人との会話パターンはクリアしたと言っても過言ではないのかも知れません。
キッザニアでは、職場の裏側で行われる職業技術や、そこで取り交わされる会話に関して、良い体験になるでしょうし、80種類もの職業経験をできるのは教育的にも興味深いことは間違いありません。
念のため、キッザニアの回し者ではないことは断っておきます。それが証拠に、キッザニアで行われる程度の日常生活における様々な職業との出会いは、家庭のごっこ遊びでも再現できるのです。これに関しては、後に見ていくことにします。
ごっこ遊びと論理性
さて、思わぬところからキッザニアの話になりましたが、話をごっこ遊びに戻します。
先の研究では、ごっこ遊びによって、表出される語彙の増加が確認されています。また、課題のあった周囲とのコミュニケーションの改善も見られています。
実際にごっこ遊びを通して会話パターンを口にするわけですから、会話パターン、つまり文のパターンは習得されることは間違いありません。そして、文のパターンをマスターすれば、適宜語を入れ替えて、それこそ無限の作文が可能になります。そのような文の構造をマスターすることが、産出できる語の増加と関係あることは容易に想像できます。
また、文のパターンをマスターすることは、そのまま日常生活への応用に繋がりますので、他者とのコミュニケーションが円滑に行えるようになることは言うまでもないことでしょう。
しかし、ごっこ遊びから得られるものは、表出語彙が豊かになることや円滑なコミュ二ケーション能力の獲得だけではありません。実は、思考の論理性を高めることができるのです。
夢の中の子どもたち
子どもの思考は極めて直観的で夢想的です。
幼稚園の5歳児クラスにおいて、とある設定(ここでは八百屋で得たお金の使い方を通して子どもたちや指導者の間で交わされた会話)を観察した研究があります。この研究では、子どもたちの言動から、彼らが直観的な思考と論理的な思考の間を行き来していることが観察されています。
子どもたちの思考は、直観的で衝動的です。彼らの頭の中では様々なイメージが浮かんでは消えています。いままで幼稚園の友だちの話をしていたかと思いきや、いきなり消防車の話になったり、過去の旅行の思い出話をしていたと思いきや、イマジナリーフレンドの名前が飛び出したりします。
考えるに、思考自体が論理性を欠いており、衝動的に、突発的に様々なイメージが浮かんでくるのでしょう。
大人の日常における思考では、ある程度以上に秩序が保たれています。記憶を辿る場合にも、想像する場合にも、そこには連続性や論理性があります。しかし、その一方で大人でも、夢を見ているときなどは荒唐無稽なイメージが浮かんだりするので、このあたり子どもの思考と似ているのかも知れません。
「夢か現か」などと言いますが、「うつつ」の方では筋が通ったストーリーが展開される一方、「夢」の方ではそうではない。そう考えれば、子どもたちは、現実の世界に存在しながらも、思考は未だ夢の中なのかも知れません。そして、幼児から児童期へと移るあたりで、現実と夢の世界の間を行き来しつつ、大人になっていくのでしょう。
夢か現か
そさて、この実験で観察された論理的思考と直観的思考の「ゆらぎ」をいくつか紹介しておくと、実際に畑で取れたメロンをどうするか?という議論において、売る、食べるなど様々な意見が飛び出してきます。
その中で、いくらで売るのかという問に対して「100万円」と言う子もいれば、「食べる」と言う子もいました。おそらく100万円という具体的な価値は理解しておらず、「100」と「万」という多くを表す数字を使い高い価値を表現しようとしていたのでしょう。「100億万円」などという存在しない単位が飛び出すのも、この時期の子どもたちの発話の特徴です。
ここには、現実的な論理世界での単位を使いながら、直観的な価値を表現しようとしている試みが見て取れます。
また、メロンを「食べる」という発言に続いて「みんなで食べたい」「半分ずっこで食べる」「みんなと」などの意見が飛び出します。
その後の「小さくてみんなの分がないんじゃない」という発言において、ずいぶんと論理的な思考をしているなぁ、と感心してしまいました。
具体的に1個のメロンを1クラスで分けると、どれくらいになるのかを想像した結果、上記の発言になったのでしょう。この点からも、子どもたちは直観的ではありながら、論理的に物事を考えている様子がうかがえます。
物には順序がある
このように夢と現の狭間をさまよっている子どもたちの思考を、より現実世界へと近づけていくのが「ごっこ遊び」です。
直観的な思考、つまり夢にも似た思考ではイメージは突発的に浮かんできますが、論理的な思考をすると、そこに順序や秩序が入り込んできます。
例えば、夢の中では中空に浮かぶことができても、現実的な思考の中では、そのようなイメージは排除されなくてはいけません。また、出来事には前後関係や因果関係があり、物事は順序立てて起こります。
ごっこ遊びも現実に起こることの模倣である限り、秩序と順序が大切になります。
卑近な例で恐縮ですが、我が家の3歳児のごっこ遊びをいくつか紹介しましょう。
彼の思考も突発的で衝動的です。しかし、論理思考も育ってきていることが、彼のごっこ遊びから見て取れます。
例えば、温泉旅館に宿泊予約をする “ごっこ” では、電話をかけるところから始まり、予約が完了して電話を切り、その後旅館に到着するあたりまでのシチュエーションが展開されます。
彼の「明日の予約をお願いしたいのですけれども」から始まり、相手となる大人の「何名様ですか?」「何時にご到着ですか?」「お名前とお電話番号をお願いします」などの質問に次々と彼が答える形で展開されます。
その中で、いきなり「名前と電話番号」を伝えるという順序違反は起こらないし、彼もいきなりそこから会話を切り出すようなことはありません。
また、119番ごっこでは、「火事です」から始まり、彼の中にある「火事の光景」を質問に沿って具体的に述べてくれます。あるときなど、110番に電話して「火事です」から始めてしまい、こちらは警察ですがと指摘すると「間違えました、すみません」と謝りを入れたりするので、微笑ましい限りです。
ガソリンスタンドごっこでは、燃料の種類に関して「ハイオク満タン」とか、支払いに関しては「カードでお願いします」と答えたり、給油後に道路に出る際には「右に行くか左に行くか聞いて」と質問を促したりもします。
このようなごっこ遊びが、あるときは依頼者の立場で、またあるときは受託者の立場で行われます。
このようなごっこ遊びを繰り返すうちに、これらの日常的な作業における順序を間違うことなくやりとりができるようになります。
つまり、散発的なイメージの集合体ではなく、論理性を伴ったイベントの連続体として日常の作業を思考できるようになるのです。
ごっこ遊びの具体例
先に、日常会話のパターンは無限ではなく、限定的であると述べました。整理してみると最も多いのが、各種サービスにおける金銭の授受のシチュエーションです。続いて交通機関の利用、消防や病院などのシチュエーション、そして家への来訪者への対応などでした。
以下に、それぞれのシチュエーションとそこでカワされる代表的な会話の内容を簡単に記しておきます。
★レストラン
入店に際しての店側の発言は「こんにちは」「いらっしゃいませ」「何名様ですか?」「ご注文はお決まりですか」などなど型は決まっています。
それに対して、「これは辛いですか?」「氷なしでください」「持ち帰りできますか?」など客側には比較的自由な発言が許されています。
最後には「お会計お願いします」「おいくらですか?」「3000円です」「クレジットカードは使えますか?」「こちらにサインをお願いします」「ごちそうさまでした」「ありがとうございました」などなど、これもある程度型が決まっています。
★デパート、スーパー、コンビニなど
デパートなどでは「いらっしゃいませ」から始まり「何かお探しですか?」「ギフト包装しますか?」、あるいは客側からは「いつまで保ちますか」など商品を決定するまでの会話が想定されます。
また、スーパーやコンビニではレジにて「袋はご利用ですか?」「ポイントカードはお持ちですか?」などのレジスターの発言から、「カードでお願いします」など支払い方法に関する客側の発言などが考えられます。
★美容院、ガソリンスタンド
美容院での会話では、「何月何日何時」と予約の日時の決定や、「カット」や「カラー」などの内容に関することが想定されます。
ガソリンスタンドでは、燃料の種類と量、洗車の有無、洗車するのであれば洗車の種類や車内清掃の有無などの指定が必要となります。ここで重要なのは、燃料の種類(ハイオク・レギュラー・軽油)など「下位概念」をきちんと織り込むことです。
最後には支払い方法、出庫の方向などもリアルに想定すればするほど、子どもたちの頭の中で、物事が秩序と順序を保って整然とイメージされることになります。「可能な限り具体的に」再現することを心がけると良いでしょう。
★お弁当屋さん
時節柄、弁当屋や出前を利用する機会も増えるでしょう。これらもできる限り具体的に、店と客との会話を再現しましょう。注文内容、大盛り・半ライス、味噌汁をつけるのか、あるいは「10分ぐらいで戻りますのでお願いします」などなど、極めて限定的な会話のやりとりが行われます。
★バスの案内、電車の案内
特に男の子は、電車やバス、タクシーなどが好きな場合が多いでしょうし、それらの玩具も持っているでしょうから、より具体的に彼らの中でイメージを膨らますことができます。
最近は便利になったもので、「電車名・駅名・アナウンス」などのワードで検索すると、実際の音声の録音されたものをパソコンやスマホで何度でも再生することができます。これらには英語のアナウンスもついているので、パルキッズたちにとっても楽しいごっこ遊びとなるでしょう。
ちなみに、東海道新幹線の車内アナウンスは2歳児でも覚えられます。これも、たどたどしい英語で発音するのを聞いていると微笑ましい限りでしょう。
「次は○○」などバス停の名前なども正確に取り入れると、具体的な道のりも想像できるので楽しめます。ただ、バスのアナウンスは広告が入っていることが多いので、それを楽しめるかどうかは親御さんの判断でしょう。
★タクシー
タクシーのシチュエーションでは、「○○デパートまでお願いします」「××通りから□□を左折でお願いします」「次の信号の手前で降ろしてください」など、道順をイメージしながら会話を展開できます。
2、3歳になれば、通りの名前や、交差点の名前、目的地の名前などをイメージしながら、ごっこ遊びを楽しめると思います。
また、「タクシーに忘れ物をしたらどうするか?」などタクシー会社に連絡するイベントを起こしてみるのも楽しいでしょう。
★宅配便受け取り、出前受け取り
家で玄関のベルが鳴るシチュエーションも頻繁に起こりますが、こちらも、宅配便、出前などある程度パターンが決まっています。
「あ、お客さんだ。誰だろう」「どちら様ですか?」「はい、いま開けます」、あるいは「ヤマトです」「ウォルトです」など配送業者側を演ずることもできるでしょう。
★旅行予約、飛行機予約、レンタカー
旅行に関する電話でのやりとりも、子どもたちの想像力を刺激します。飛行機の手配では、行き先、日時、人数、席の並びの希望、会員番号、氏名、電話番号、料金の支払い方法など、宿泊やレンタカーに関しても、より具体的にやりとりを再現すると良いでしょう。
繰り返しますが、和室・ベッドの大きさなど部屋についての希望や、レンタカーの車種なども、とにかくできる限り具体的に下位概念で再現することが、子どもの語彙力を伸ばすことになります。
★消防・警察・病院
これこそ「ザ・ごっこ遊び」です。実際に消防や警察に電話することはないでしょうから、子どもたちの想像力が試されます。
「事故です」「火事です」から始まり、より具体的に子どもの頭の中のイメージを聞き出すようにしましょう。その際にも「玉突き事故」「マンションの○階から火が出ています」など、現場のイメージをしっかりと描写できるように聞き取りしましょう。
病院のお医者さんごっこでは、「今日はどうされましたか?」から始まり、患部・症状など説明をさせます。実際に役立つので、是非機会をつくって取り組んでください。
相手の気持ちも考えられるように
上記のように日常生活で取り交わされる会話のパターンは、雑談を除けば、ある程度限定的です。
小さい子どもたちが愚図ったり、むずがったりする理由に「現状の理解」と「未来の見通し」ができないことがあります。0歳児でも状況が理解できていれば、安心して環境に身を任すことができます。
また、コミュニケーションが苦手な子の場合には特に、見通しの立たないことに対する不安を抱く傾向があるようなので、ごっこ遊びによって解決されることは少なくないと思われます。
さらに、ごっこ遊びの指導を続けることで、独り遊びや平行遊びから共同遊びへと発達して、結果としてコミュニケーションを取ったり、相手の気持ちになってものを考えるという、かなり高度な思考までできるようになることも期待されます。
冒頭の「気になる子ども」の例では、5ヶ月間でわずか6回のレストランごっこのセッションを通して、語彙力やコミュニケーション力の飛躍的な改善が見られています。ごっこ遊びは気づいたときに、もしくは子どもが乗ってきたときに、積極的に取り入れられれば、それで十分でしょう。
それだけで、語彙力、コミュニケーション力とともに、秩序と順序づけられた論理的な思考力も身につけられるのです。
また、ごっこ遊びは夢の世界の住人を、現実世界へと誘う取り組みです。これを延々と続ける必要もありません。一度現実的な思考ができるようになれば、そこから先はフリーカンバセーション、つまり雑談力へと国語力を伸ばすことができるのです。その入り口が、ごっこ遊びだと考えると良いでしょう。
さて、今回は英語とはまったく関係ない「ごっこ遊び」の話でしたが、語彙力と論理的思考力を育てることは、それ即ち国語力に影響することとなり、国語ができる子は英語もできる(『パルキッズ通信2021年7月号』参照)わけですから、ぜひ積極的に取り入れていただきたいものです。
*参考文献
『スクリプトのあるごっこ遊びを通した幼児への言語 およびコミュニケーションスキルの発達支援』(篠原他 2018)
『5歳児クラスの話し合いにおける論理的思考と直感的思考のゆらぎ :担任による実践記録からの分析』(塚越他 2014)
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児童英語研究所・所長、船津洋が書き下ろした『子どもの英語「超効率」勉強法』(かんき出版)でご紹介しているパルキッズプログラムは、誕生してから30年、10万組の親子が実践し成果を出してきた「超効率」勉強法です。書籍でご紹介しているメソッドと教材で、私たちと一緒にお子様をバイリンガルに育てましょう。
船津 洋(Funatsu Hiroshi)
株式会社児童英語研究所 代表、言語学者。上智大学言語科学研究科言語学専攻修士。幼児英語教材「パルキッズ」をはじめ多数の教材制作・開発を行う。これまでの教務指導件数は6万件を越える。卒業生は難関校に多数合格、中学生で英検1級に合格するなど高い成果を上げている。大人向け英語学習本としてベストセラーとなった『たった80単語!読むだけで英語脳になる本』(三笠書房)など著書多数。