ハワイアンジャーナル パルキッズ通信 | 子育て論, 文武両道
2017年6月号ハワイアン子育てジャーナル
Vol.72 | 世界標準の子育て2
written by 船津 徹(Toru Funatsu)
※本記事のテキストは引用・転載可能です。引用・転載する場合は出典として下記の情報を併記してください。
引用・転載元:
http://palkids.co.jp/palkids-webmagazine/hawaiian-journal1706/
船津徹『世界標準の子育て2』(株式会社 児童英語研究所、2017年)
7月にダイヤモンド社から私(船津徹)の新著が発売されます。タイトルは『世界標準の子育て』です。世界で活躍できる「たくましい子ども」を育てるノウハウをご紹介しています。以下『世界標準の子育て』からの抜粋です。
子どもを「文武両道」に育ててください。私はいつもそう皆さんにお伝えしています。「受験のことを考えて勉強だけさせておけばいいのでは」「習い事など時間のムダでは」と思われる方もいるかもしれません。
しかしこれには理由があって、勉強だけで「自信」を得るのは、実はかなり難しいのです。
例えば、算数が得意な子がいたとします。努力して学年で1番になりました。周りからは「算数が得意だね!」と言われます。本人も「算数が得意だ」と自信を持っています。
でも算数が一番の生徒は隣りの学校にも、その隣りの学校にもいるのです。さらに、他の学年にもいます。中学、高校、大学と、競い合う相手が広がるにつれトップの成績を収めることは難しくなっていきます。
| 世界のトップ大学に進学するも…
韓国は猛烈な学歴主義で、ハーバードなどの難関大学への進学率はアジアでトップクラスになりました。しかし、せっかく合格したアメリカの大学をドロップアウトする率は4割を超えています。
アメリカの大学には、世界中から天才が集まってきます。それまで地元では「天才」と言われてきたのに、大学では平均点すら取れない! といったこともざらに起きるのです。強みが強みでなくなってしまった時の挫折感は、並大抵のものではありません。
つまり、勉強は誰もがすることなので才能を伸ばしやすいのですが、それだけでは壁にぶつかった時、一気に自信を喪失してしまうのです。
そのために、勉強以外のことで自信をつけていくのがよいのです。スポーツ、音楽、演劇、何でも構いません。子どもが興味を持って継続できそうな習い事、子どもの強みを活かせる習い事に挑戦させてみてください。
| マルチな「武器」の持ち主マシ・オカさん
ハリウッドで活躍する日本人俳優のマシ・オカさん。 人気ドラマ『HEROS/ヒーローズ』で準主役を演じ、その名を世界で知られるようになりました。日本では「バイリンガル役者」として知れていますが、実は本職はコンピューターエンジニアなのです。
マシ・オカさんは幼少期に母親とアメリカに移住し、名門ブラウン大学に入学。(ハーバード大学にも合格するが辞退)そこでコンピューターサイエンスを学びます(12歳の時には「アジア系アメリカ人の卓越した頭脳」という『タイム誌』の特集で表紙を飾るほどの秀才でした)。
さらに、日本語と英語に加えてスペイン語とフランス語を話すマルチリンガル。剣道は有段者。大学時代はアカペラグループでボイスパーカッションを担当するなど、勉強以外の分野でも武器を身につけてきたのです。
その結果、「右脳と左脳の両方を使うことで人間の可能性を追求する」といって、役者の世界に足を踏み入れました。培ってきたさまざまな武器を融合させることで、ハリウッドで活躍しているのです。
| 「タフネス」作りにはスポーツが一番
日本では「文武両道」という言葉はもはや死語になりつつありますが、欧米ではスポーツに真剣に取り組んでいる子どもほど “Well-Rounded Person” に育つという考え方があります。
スポーツ経験は、子どものメンタルタフネスの育成、つまり人間形成にとって不可欠なプロセスだと認識されているのです。
コツコツ努力する根気強さ、チャレンジ精神、プレッシャーに負けない精神力、負けても再び立ち上がるたくましさ、チームの一員としての責任感、コーチやサポートしてくれる人たちへの感謝心や尊敬心。
スポーツで得られる資質は、世界が求めるリーダー像そのものです。一番重要なことは、とにかく長く続けるということ。何かひとつでいいので「10年以上真剣にやっている」という事実があれば、それが「根拠のある自信」となって子どもを挫折や逆境から救い出してくれます。
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船津 徹(Funatsu Toru)
1966年福岡県生まれ。1990年明治大学経営学部卒業。教育コンサルタント。米国法人TLC for Kids代表。大学卒業後、金融会社勤務を経て幼児教育の権威、七田眞氏に師事。「パルキッズ」「パーフェクトイングリッシュ」など、しちだ式英語教材制作に従事。2001年ハワイ州、ホノルルにて移民のための学習塾TLC for Kidsを設立。2015年にはTLC for Kidsカリフォルニア州トーランス校を設立。アジア諸国からの移民子弟を中心に4000名以上の子どもの教育に携わる。同氏が手掛けたフォニックス教材は全米で25万人の教師が加盟するアメリカ最大の教育リソースサイト「OpenEd」による「最も効果がある教材部門」で第2位にランクイン。音楽と演劇を組み合わせた独自の教育メソッドは全米で注目されている。著書に『アメリカ最先端の英語習得法』(現代書林)。一男の父。一人息子は日本語・英語・中国語を操るトリリンガル。バラック・オバマ大統領の母校ハワイのプナホウスクールを卒業。ドナルド・トランプ氏の母校であるペンシルバニア大学ウォートンスクールに在学中。