ハワイアンジャーナル パルキッズ通信 | 多読, 英語学習方法
2024年2月号ハワイアン子育てジャーナル
Vol.151 | 英語を「強み」にする!
written by 船津 徹(Toru Funatsu)
※本記事のテキストは引用・転載可能です。引用・転載する場合は出典として下記の情報を併記してください。
引用・転載元:
https://www.palkids.co.jp/palkids-webmagazine/hawaiian-journal-2402
船津徹「英語を「強み」にする!」(株式会社 児童英語研究所、2024年)
英語を話せない人が大多数の日本において英語は「強み」です。英語ができる人は学業、進学、就職、転職など人生の岐路で周囲から頭一つ突き抜けることができます。また英語ができれば、学びの場、働く場、生活の場が日本から世界に広がりますので、子どもの将来の選択肢が広がることはもちろん、自分らしく自己実しやすくなります。
多くの日本人が英語は生まれつきの「才能」だと思い込っています。英語ができるタレントやスポーツ選手などをテレビで見ると「頭がいいんだ!」「才能があるんだ!」と思いますね。しかし、少し考えてみてください。日本人であれば誰もが日本語を話せますが、すべての日本人が語学の天才であったり、認知能力が高いわけではありません。
同様にアメリカに生まれ育てば誰もが英語を流ちょうに話すことができますが、アメリカ人が皆語学の天才というわけではありません。こと語学に関しては、生まれつきの才能や素質はほとんど関係ありません。極論を言えば、英語は誰でも身につけられるのです。私はこれまでに5000名以上のバイリンガルを育成してきましたから(海外在住者だけでなく、日本国内での学習者を含む)「日本人でも英語が身につく!」そう断言できます。
日本人に英語が苦手な人が多い一番の原因は「学習順序が間違っている」からです。皆さん(子どもを含む)に語学の才能がないわけではないのでご安心ください。子どもに英語を身につけさせたければ、これまでの常識を疑うクリティカルシンキングが必要です。
ランゲージアーツとは何か?
アメリカの小学校における英語の授業は「ランゲージアーツ」と呼ばれます。ランゲージアーツの授業では、対話・質問・説明・報告の方法、議論やディベートの進め方など「聞く・話す」技術、そして、文字の読み書き、本の読み方、文章の分析方法、批判的に読む方法、日記・作文・感想文の書き方、文法や句読点のルール、プレゼンテーション資料の作成方法などの「読む・書く」技術が段階的に訓練されます。
ランゲージアーツで最も重視されているのがリーディング(読解力)です。多くの小学校では毎日20〜30分の読書を課題として義務づけています。小学校に上がったばかりの子どもに大量の読書を要求する理由は、読書スピードを高め、リーディングフルエンシー(読みの流暢さ)を身につけることが「読解力」に直結するからです。
2018年に米国教育庁は「読みの流ちょうさ」とリーディング力の関係を調査しました。(The 2018 NAEP Oral Reading Fluency Study)小学4年生を対象にテキストを読むスピード、正確さ、感情表現を自動音声分析システムによって測定した結果、読むスピードが遅く、読みミス(発音ミス、二度読み、戻り読み)が多く、抑揚が少ない読み方をする子は「リーディング力(読解力)が弱いこと」がわかったのです。
英語を流ちょうに読む力は「読解力」に影響するのです。近年、日本の国語の授業でも「音読が読解力を高める」ことが知られてきましたが、英語もまったく同じです。子どもの英語力を伸ばしたければ、単語の意味や文法を教える以前に「読みの流ちょうさ」を鍛えることが近道なのです。
リーディング(読解力)は技術、正しく学べば誰でも身につく!
NPR(National Reading Panel)はリーディング力を習得する「最高の方法」を調査することを目的に米国連邦政府によって1997年に設立されました。言語研究者や教師などで構成された専門家チームが調査・研究を行い、2000年に最終報告書を提出しました。
NPRは子どもにリーディング力をつける「最高の方法」は、以下の6つの指導の組み合わせであると結論づけています。
1)フォネミック・アウェアネス(歌や言葉遊びでリズムを教える)
2)フォニックス(文字と音の関係を教える)
3)リーディグ・フルエンシー(読みの流ちょうさを育てる)
4)オーラル・リーディング(感情を込めて音読する)
5)ボキャブラリー(新たな語彙を増やす)
6)コンプリヘンション(理解しながら読む)
リーディング力を育成する際に重要な項目が上記の1)〜4)です。これらは英語を正しい発音で読むための基礎となる取り組みですが、日本の学校教育ではほとんど指導しません。正しい発音で英語の本をスラスラ読む指導を学校で受けたという人は少ないと思います。
本来、解釈を教える前に、英語の本がスラスラと読めるように段階的に訓練することが重要なのですが、日本の英語教育は反対の順序で指導しています。すなわち、最初から理解しながら読むことを生徒に求めるのです。内容理解は一番最後、リーディング力育成の仕上げのステップであることを知ってください。
まずは内容理解を横に置いておき、英語の本がよどみなく読めるように練習を重ねることが大切です。日本語でも同じですね。ひらがなを読み始めの小学1年生に解釈を求めることはありません。それよりも、日本語の本がスラスラと正しく音読できることを優先しているはずです。
英語の本がある程度読めるというお子さんでも「流ちょうさ」が伴っていることが重要です。発音が日本語っぽかったり、読み方がたどたどしかったり、リズムが悪かったり、イントネーションがおかしかったり、読みミスが多かったり、二度読み・戻り読みが多い場合は上記の1)〜4)の取り組みを見直しましょう。
発音の改善方法としてはフォニックスとサイトワーズ学習が効果的です。フォニックスはアルファベット26文字の発音を覚えれば終わりというわけではありません。英語には44の音と120通り以上の綴りパタンがあると言われています。これらを一通り学ぶことによって英語を正しい発音で読む力が育ちます。また英語の頻出単語であるサイトワーズを一目で読めるように訓練することでリーディング力を一気に向上させることができます。
まだ本が読めない、あるいは、フォニックスを学んでいないという子どもは、TLCフォニックス(www.tlcphonics.com)がお勧めです。オンラインでフォニックスとサイトワーズの両方を学ぶことができます。学習時間は「毎日10分」ですので、短い時間で効果的にリーディング力を育てることができます。
英語学習のゴールを設定する
話しを元に戻しましょう。日本で英語を「強み」にするにはどの程度の英語力を目指せばよいのでしょうか?その答えはズバリ!「CEFR B2/英検準1級以上」です。
英語の外部試験を導入している大学では「B2レベル」を達成すれば(大学によって異なります。あくまでも目安です)で英語試験は免除、加点、もしくは満点扱いとなります。CEFR B2を高校までに達成できれば、大学入試で有利になることはもちろん、英語を武器にキャリア形成に活かしたり、英語圏の大学へ留学して、さらに見識を深めることも視野に入ってきます。
では「CEFR B2レベル」以上の英語力を持つ高校生はどのくらいいるのでしょうか?以下は文部科学省が全国の高校3生約7万人(国公立約480校)を対象に2014年に実施した英語力の調査結果です。
B2レベル達成者は「読むこと」0.2%、「聞くこと」0.3%、「書くこと」0%という結果となっています。この数字を見ると高校生時代にB2レベルを達成することは難しい!と感じてしまいますね。しかし実際にはCEFR B2レベルはデータで見るほど難しくはないのです。正しい学習方法(ランゲージアーツ)を取り入れればCEFR B2は小学生でも実現可能なレベルです。
日本でTLCフォニックスと英語多読に取り組んでいる小学6年生の男の子が先日「英検1級」合格しました。英検1級保持者は全ての日本人の「0.1%程度」と推定されますから、このお子さんは、小学生にして「日本人トップ0.1%」の実力の持ち主ということです。他の学業分野では小学生が日本人全体のトップ0.1%になることは難しいですが、こと英語については小学生でも実現可能なのです。
「英語の書き言葉」を学べば世界で通用する
多くの日本人は、英語学習の重点は「英会話」を身につけることだと思っています。しかし英語には方言があり、シンガポール英語、インド英語、アメリカ英語、イギリス英語など、どこで、誰から習うかによって通じる範囲が限定される可能性があります。
また臨機応変な「英会話」を身につけるには「話し相手」が必要です。日常的に英語を話す必要がない日本において「話し言葉」を習得するには、インターナショナルスクール、英会話学校、オンライン英会話などを利用することが不可欠であり、大変コストがかかる学習方法なのです。
さらに「英会話」はTPOをわきまえないで使うと相手を不愉快にさせたり、誤解を与えることがあります。ネイティブ相手にスラングを連発したり、日本語のように主語や目的語を省略したり、文法を無視した表現を多用すれば「何が言いたいのか分からない人だ」「品のない人だ」と思われてしまいます。
一方で世界標準の英語である「リーディング」で英語を学ぶことによって、多少の堅苦しさは残りますが、相手を不快にしたり、誤解を与える心配はなくなります。英語は論理的かつ直接的な言語ですから文法ルールに則った「書き言葉」を学習することで、相手に正しく伝わりやすい英語力を身につけることができるのです。
たとえば、日本語を勉強している外国人が「はじめまして。私の名前はスティーブです。よろしくお願いします」と教科書通りに「書き言葉」で自己紹介をしてきても不快に感じることはありません。むしろ誠実な人という印象を受けるのではないでしょうか。
リーディング力を身につけるために必要な出費は「英語の本」だけですからコストがあまりかかりません。またリーディング力を身につければ、インターネット上の英語情報を通して世界の価値観や視点に触れたり、テキストチャットなどを通して世界中の人たちとつながることができるのも大きなメリットです。
英語の本が正しい発音で読めるようになれば、英語は身についたも同然です。そこから先は子どもの興味や関心に合った本やテキストを読むことで語彙力、文法力、表現力、構文力、読解力を(自学自習で)高めていくことができます。
読解力は英語多読で鍛える
正しい発音で英語が読めるようになった!という方は次のステップである「英語多読」を実践してください。英語多読を進める上で大切なのが「英語を日本語に翻訳しないこと」です。辞書は使わずに英語を英語のまま読み進めることが読解力を鍛えるポイントです。
日本の学校英語では英単語の意味を日本語で教え、文法ルールを日本語で教え、英語を日本語に、日本語を英語に置き換える方法を教えます。しかし、英語多読をする際は、一切日本語を介在させずに、英語オンリーで学習する方法が最も効果的です。
日本語に訳さずにどうやって理解するの?と疑問が湧きますね。基本的な単語についてはピクチャーディクショナリーと呼ばれる、イラストや写真がついた辞書やイラストがついたフラッシュカードを活用してください。先にご紹介したTLCフォニックス(www.tlcphonics.com)では生活基本単語と学習単語をイラスト付きのフラッシュ動画で学習できます。
また子ども向けの英語アニメやテレビ番組に親しませていると、映像や動きやシチュエーションから英語を英語で理解できるようになります。日本語と英語を使い分けるバイリンガルは、日本語は日本語、英語は英語で理解しています。頭の中で言葉を翻訳することがないのです。このバイリンガルと同じ頭の使い方を目指すことが英語成功の秘訣です。
私が主宰するTLC for Kidsでは「英語ネイティブが英語オンリー」でレッスンをします。全く英語が話せない子どもでも授業は「英語オンリー」です。先生が英語しか話せないことが分かると、子どもの思考スイッチが日本語から英語に切り替わります。英語を英語のまま理解しようと、想像力をフル動員して、先生の表情、ジェスチャー、語気などの非言語情報を読み取ることにフォーカスします。
もう一つ英語多読で重要なのが「簡単で短い本」を大量に読むことです。どんなに英語に自信がある子どもでもスラスラ読めて「簡単!」と感じる優しい本からスタートしてください。うちの子は英語が得意だからと難し過ぎる本、長すぎる本を与えると子どもは英語多読を楽しめず、英語の読書を嫌がるようになってしまいます。最初は5分程度で読み切れるやさしくて短い本からスタートしましょう。読む本が増えるにつれ英語を英語で理解する力が育っていきます!
英語多読の体験談
最後に英語多読を実践した方の体験談をご紹介しますので参考にしてください。
『息子はインターナショナル幼稚園を卒業後、公立の小学校に入学したため、英語力の維持に当初かなり苦労していました。しかしながら、英語多読に出会えてからは全てが変わりました。息子と同じ卒園生の子たちが園のアフタースクールに通っているにも関わらず、みるみる英語を忘れていき、全然話せなくなっていく中、息子はこちらの本(世界で活躍する子の英語力の育て方)の内容を実践することで、英語力は維持どころか、どんどん力が付いていきました。先日7歳で準二級を取ることができました。本当にこの本には感謝しかありません。オススメです!
先日9歳で二級を合格しました。この本に書いてある通り、本人の好きそうな洋書を買ってくるだけです。勉強せずにこんなにも英語力がつくものかと驚きです。』
英語多読を成功させる道のりを紹介した本が拙著『世界で活躍する子の英語力の育て方』です。ご興味ある方はぜひご一読ください。
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船津 徹(Funatsu Toru)
1966年福岡県生まれ。1990年明治大学経営学部卒業。教育コンサルタント。米国法人TLC for Kids代表。大学卒業後、金融会社勤務を経て幼児教育の権威、七田眞氏に師事。「パルキッズ」「パーフェクトイングリッシュ」など、しちだ式英語教材制作に従事。2402年ハワイ州、ホノルルにて移民のための学習塾TLC for Kidsを設立。2015年にはTLC for Kidsカリフォルニア州トーランス校を設立。アジア諸国からの移民子弟を中心に4000名以上の子どもの教育に携わる。同氏が手掛けたフォニックス教材は全米で25万人の教師が加盟するアメリカ最大の教育リソースサイト「OpenEd」による「最も効果がある教材部門」で第2位にランクイン。音楽と演劇を組み合わせた独自の教育メソッドは全米で注目されている。著書に『アメリカ最先端の英語習得法』(現代書林)。一男の父。一人息子は日本語・英語・中国語を操るトリリンガル。バラック・オバマ大統領の母校ハワイのプナホウスクールを卒業。ドナルド・トランプ氏の母校であるペンシルバニア大学ウォートンスクールに在学中。