ハワイアンジャーナル パルキッズ通信 | グローバル人材, 自己表現
2012年10月号ハワイアン子育てジャーナル
Vol.16 | ハワイのバイリンガル事情 その16 ~個性を育てる~
written by 船津 徹(Toru Funatsu)
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引用・転載元:
http://www.palkids.co.jp/palkids-webmagazine/hawaiian-journal-1210
パルキッズ通信2012年10月号ハワイアン子育てジャーナル『 ハワイのバイリンガル事情 その16 ~個性を育てる~』(著)船津徹 ©株式会社 児童英語研究所
ハワイに住む日本人の子どもたちが現地の小学校に通い始めると、共通して出会う問題があります。アメリカの学校では成績評価に「Participation(授業参加)」という項目があるのですが、日本の子どもたちは、この評価が非常に低いのです。日本の学校では、生徒が授業中に発言したり、議論に参加することはほとんどありませんが、アメリカではそうはいきません。
アメリカ流のコミュニケーションというと「自己主張」ばかりと思っている方が多いのですが、それは事実ではありません。相手の感情や意見の違いに気を配りながら「考えを伝える技術」は、多様な文化と価値観が共存する社会で人々が信頼関係を築くために重要なスキルです。ですから学校でも、授業に参加し有意義な議論を展開できる生徒は高く評価され、そうでない生徒はマイナスに評価されるのです。
|日米の子育て文化の違い
一般的に日本人の子どもはアメリカ人に比べておとなしく、自己主張が少ないですね。これは子どもの英語力や性格による要因もありますが、それ以上に、日米の子育て文化の違いによる影響が大きいと思われます。
ある研究によると、日本の母親は赤ちゃんと一緒にいる時間がアメリカの母親に比べてはるかに長いにも関わらず、赤ちゃんへの言語的な働きかけがアメリカの母親よりも極端に少ないことが分かっています。
アメリカの親は赤ちゃんを一人にしておくことが多いのですが、そばにいる時は頻繁に話しかけ、赤ちゃんが言葉に対して反応したり、活動するように働きかけます。アメリカ流の子育ては「言語的コミュニケーション」を早く発達させ、「自己表現」を通して個性を育てることに重点が置かれているのです。
一方、日本の母親はいつも赤ちゃんのそばにいる反面、黙っていることが多く、言語的な働きかけを重視しません。日本の子育ては身体的接触を強調することで「口に出さなくてもお互いの気持ちが分かる」という連帯意識を高め、母子の依存関係を育てることが重視されるのです。
| 人間は違うのが当たり前
周囲との協調が強く求められる日本社会では「人と違っていたい」と思える子どもが育ちにくいですね。日々の子育てやしつけの中で、親自身が気づかないうちに、子どもの個性や自主性を潰してしまっている場面が多いように思えます。しかし、国際社会で活躍できる人材に子どもを育てたければ、自信を持って自分の意見を主張できるように育てなければなりません。
子どもが2、3歳になると「自分で、自分で」という時期がきます。日本では反抗期は否定的に捉えられていますが、欧米では子どもに自我が芽生え、自立への道を歩み始めた現れとして好意的に考えられています。人の手を借りずに自分でやってみたい、自分で試してみたいというのは人間の自然な欲求です。
この時に、日本人のお母さんは「危ないから」「時間がないから」と手出し、口出し、干渉し過ぎるのです。子どもが自分の「やる気」でしたいと思っていることを親が先取りしてしまうのを「過干渉」と言います。過干渉は子どもの自主性を減少させ、自立心を萎えさせ、個性を潰します。
子どもの個性を伸ばす子育てというのは、親に「我慢強く待つ忍耐力」と「見守る勇気」を要求します。子どもの主体性を尊重し、やりたい事をやらせてあげる、子どもを信じて見守ってあげる、手出し・口出し・先回りをグッとこらえるというのは、実は、干渉するよりもはるかに大変なことなのです。
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