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2013年01月号ハワイアン子育てジャーナル

Vol.19 | バイリンガルのメリット

written by 船津 徹(Toru Funatsu)


※本記事のテキストは引用・転載可能です。引用・転載する場合は出典として下記の情報を併記してください。

引用・転載元:
http://palkids.co.jp/palkids-webmagazine/hawaiian-journal-1301
船津徹『バイリンガルのメリット』(株式会社 児童英語研究所、2013年)


 「バイリンガル=うらやましい」というイメージが定着している日本では考えにくいのですが、長らくアメリカでは「バイリンガル=学業不振児」というレッテルが貼られ社会からマイナスイメージで見られていました。事実バイリンガルの子どもは、学力を獲得していく過程で学習不振に陥るケースが多く、移民の子どもが多い地域を中心にバイリンガルに対して否定的な風潮が生まれたことは理解できます。
 その後、様々な分野で研究が進み、バイリンガルは創造性に富み、コミュニケーションの幅が広く、他者に対する寛容性・柔軟性が高いこと、また学力面でも適切なサポートを得ることでマイナスの影響は受けないことが分かり、社会のバイリンガル観は肯定的なものへと変わってきました。国際化が進行する今日、国境を越えたアイデンティティを有するバイリンガルはグローバルリーダーとしてのポテンシャルを持つ存在として注目され始めています。


|広い視野と異文化適応能力

 バイリンガルの一番のメリットは偏りのない広い視野を持てることです。一つの見方に捕われることなく、物事を様々な角度から観察・分析できるのがバイリンガルの特徴です。英語ができれば世界中の情報にアクセスできますから、世界的視野で物事を見渡し、創造的に問題解決していくことができます。
 二番目の利点は異文化適応能力の高さです。海外で育つバイリンガルの子どもは成長過程で自文化と他文化を同時に受け入れる経験をします。この経験を通して、異質な文化を享受する柔軟性、自己の文化と同様に他者の文化を理解し尊重する態度を身につけます。 特定の文化や習慣に偏らない価値観を持つことは、人格形成途上にある子ども時代にのみ可能であり、大人になってから身につけることは極めて困難です。あらゆる分野で国際理解と国際協調が求められる現代社会において地球的視野から問題解決できるバイリンガルへの期待は高まっていくことでしょう。


| バイリンガルは頭がいい!

 カナダの心理学者エレン・ビアリストク博士は、バイリンガルは知的な問題の処理や複数の思考を同時に行なう能力がモノリンガルよりも優れているという研究成果を発表しました。またバイリンガルは、関連のない情報を排除し、重要な情報に集中する能力や一つの作業から次の作業へと混乱せずに頭を切り替えていく力が高いとも報告しています。
 英国のストラスクライド大学は、バイリンガルは問題解決能力、創造的思考が高度に発達するほか、言葉の意味をより細部まで豊かに把握する力が高いという研究発表をしています。二つの言語を同時使用するには「頭の回転」とも言えるメンタルの敏捷性が必要であり、これが訓練されることによって他の思考発達も促されるのではないかと分析しています。
 バイリンガルは一つの言語から他の言語へと言葉のスイッチを絶えず切り替えています。複数言語で円滑なコミュニケーションを実現するためには、環境の変化を敏感に察知し対応できる注意力と適応力が必要です。バイリンガルは二つの言語を操る中で、自然と「脳力アップトレーニング」を行なっているのです。


|グローバル人材に育てるには!

 多様な文化や価値観と共生することが求められるこれからの社会において、バイリンガルの子どもたちは優れたリーダーとなる素質を秘めています。高度な言語力、異文化適応能力、コミュニケーション力、そして彼らだけが持っている新しい世界観、これらはかけがえのない財産です。
 日本において子どもをグローバル人材へと育てるには、二つの言葉を育てるだけでなく、両親がグローバル感覚を持って子育てに当たることが大切です。多様な価値観を理解し受け入れることができる子ども、他者への共感性が高い子どもに育てることを意識しながら子どもにとって必要な環境を整えてあげましょう。


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プロフィール

船津 徹(Funatsu Toru)

1966年福岡県生まれ。1990年明治大学経営学部卒業。教育コンサルタント。米国法人TLC for Kids代表。大学卒業後、金融会社勤務を経て幼児教育の権威、七田眞氏に師事。「パルキッズ」「パーフェクトイングリッシュ」など、しちだ式英語教材制作に従事。2001年ハワイ州、ホノルルにて移民のための学習塾TLC for Kidsを設立。2015年にはTLC for Kidsカリフォルニア州トーランス校を設立。アジア諸国からの移民子弟を中心に4000名以上の子どもの教育に携わる。同氏が手掛けたフォニックス教材は全米で25万人の教師が加盟するアメリカ最大の教育リソースサイト「OpenEd」による「最も効果がある教材部門」で第2位にランクイン。音楽と演劇を組み合わせた独自の教育メソッドは全米で注目されている。著書に『アメリカ最先端の英語習得法』(現代書林)。一男の父。一人息子は日本語・英語・中国語を操るトリリンガル。バラック・オバマ大統領の母校ハワイのプナホウスクールを卒業。ドナルド・トランプ氏の母校であるペンシルバニア大学ウォートンスクールに在学中。

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