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2019年7月号ハワイアン子育てジャーナル

Vol.97 | 早期英語をリーディングにつなげる方法

written by 船津 徹(Toru Funatsu)


※本記事のテキストは引用・転載可能です。引用・転載する場合は出典として下記の情報を併記してください。

引用・転載元:
http://www.palkids.co.jp/palkids-webmagazine/hawaiian-journal-1907
船津徹「早期英語をリーディングにつなげる方法」(株式会社 児童英語研究所、2019年)


 外交官の父親に伴って3歳〜5歳までの3年間をアメリカで過ごしたNさん。アメリカのプリスクールに通っていた時は英語がペラペラで、自分をアメリカ人だと思っていたそうです。Nさんは帰国後に日本の小学校に通い始めました。するとあれだけ得意だった英語をすっかり忘れてしまったというのです。
 Nさんには3つ年上の姉(渡米時6歳)がいました。お姉ちゃんは日本に帰ってきてからも英語を忘れることがありませんでした。忘れるどころか日本でも(インターに通うことなく)英語力を伸ばし、受験や就職でも英語を武器に成功を勝ち取ったというのです。一体二人の間にどのような「違い」があったのでしょうか?


英語教育は年齢が小さいほど効果的?

 父親の海外赴任などで英語圏に移り住んだ時、家族の中で誰よりも早く英語(英会話)を身につけるのは、年齢の一番小さい子どもです。両親よりも、お兄ちゃんよりも、3歳児の方がはるかに短期間で英語を身につけることができます。現地のプリスクールに通えば、家庭で英語教育を施さなくても、1年〜2年で日常英会話ができるようになります。
 年齢の小さな子どもほど環境適応能力(言語吸収能力)が高く、スムーズに、そしてストレスが少なく、異なる言葉を享受することができます。こと「英会話」については年齢が小さいほど有利であることは明白です。
 しかしその一方で、幼児期に労せず身につけた「英会話力」というのは、Nさんの例のように、環境が変わり英語が必要なくなると、忘れてしまうのも早いというデメリットがあるのです。


早期英語教育をリーディングにつなげることが大切

 では渡米時に6歳だったお姉ちゃんは、なぜ帰国後も英語力を維持・向上できたのでしょうか?その答えは「リーディング」です。お姉ちゃんはアメリカの小学校で「英語のリーディング」を身につけていたのです。
 日本に帰国する時には、英語のチャプターブックが一人で読めるようになっていました。そして帰国後も大好きな読書を継続することで、自主学習で英語力を伸ばしていったのです。英語の読書には、英語を話す力、聞く力、理解する力、思考する力など、英語力全体を向上させる働きがあるのです!
 「英会話力」は、年齢が小さい子どもほど苦労なく、短期間で身につけることができます。早期英語教育に大きな効果があることは私の経験からも明らかです。しかし、「早期英語教育をすれば英語が身につく」というのは迷信なのです。肝心なのは早期英語教育で培った「英会話力」を「リーディング力=英語の本が早いスピードで読み解ける力」へとつなげていくことです。
 早期英語教育を実践している人の多くがこのことを知らず、小学生になってからも「会話中心」の英語学習に終始しています。豊かな会話力を身につけても、リーディング力の獲得へつなげていかなければ、年齢と伴に、会話力も英語に対するモチベーションも下がってしまうのです。英語のことわざ“Use it or lose it.”(使わなければ無駄になる)を心に留め置くことが大切です。


いつリーディング学習をスタートすべきか?

 リーディング学習をスタートする最適期は4歳〜8歳です。英語圏ではリーディング学習はキンダーガーテン(4歳〜5歳)から始めるのが一般的です。そして小学3年生頃(8歳)までに基礎的なリーディング力を身につけ、さらに高度なリーディング力(クリティカルリーディング)へとレベルアップしていきます。
 英語のリーディング学習は4歳以前の子どもに対しても不可能ではありません。しかし英語の文字指導法である「フォニックス」はルールが複雑で、例外が多く、4歳以前の幼い子どもには難易度が高い(論理的すぎる)と考えられています。
 では反対に8歳を過ぎたらリーディング学習は手遅れか?というと、そんなことはありません。英語のリーディング力は何歳でも身につけることが可能です。事実、中学から英語学習を始めて、アメリカの大学レベルの英語力を身につけたという人はたくさんいます。私自身、英語は中学からのスタートでしたが、リーディング学習のおかげで現在はビジネスレベルの英語力を獲得しています。


英語習得のカギは「何を学習するか」

 英語学習はスタートする年齢よりも、何を学習するかの方がはるかに重要です。乳幼児期の子どもであれば、英語の音やリズムに慣れさせるためのインプット中心の学習(無意識を応用した学習)が最も効果があります。
 4〜5歳からは無意識のインプットに加えて、アルファベットに触れさせるなど、アウトプット学習(意識的な学習)を導入していくことで高い成果が期待できます。日本語が定着してくる頃になると子どもは文字(シンボル)に興味を持ちます。そのタイミングで英語の文字読みを紹介すると、たちまち子どもは覚えてしまいます。
 6歳を過ぎた子どもには、インプットとアウトプットを同時に学習する方法がベストです。具体的には英語の音に触れながら、英語の文字学習であるフォニックスやサイトワーズ、英語のリーディング指導であるリーダーズの多読などを導入します。
 6歳以上の子どもには無意識を応用したインプット学習は効果が薄れますので、いかにモチベーションを維持するかがポイントです。子どもがお気に入りの英語の本や英語のキャラクターを見つけることができれば、それをトリガーとして主体的な英語学習へと導くことができます。


日本語の読書教育がリーディング力を左右する

 リーディング力を身につける上で大切なポイントが「読書力」です。日本語で「読書力」が育っているかどうかが、英語のリーディング力の習得に影響します。私は日本、アメリカ、中国で子どもの英語教育に関わってきましたが、高度な英語力を達成した子どもの共通点は「母国語の読書力」が備わっていることです。
 遠回りに思うかもしれませんが、英語のリーディング力を獲得する近道は「日本語の読書力を育てること」なのです。日本語で本好きに育てば英語でも本好きに育ち、日本語で読解力が高ければ英語でも読解力を発揮するようになります。
 家庭では日本語の読書教育(読み聞かせ)を実践してください。読み聞かせは子どもを本好きに育てることはもちろん、想像力を働かせて理解する力=読解力を育ててくれます。このイメージ化の訓練が将来の「リーディング力」の獲得を左右するようになるのです。


ハワイイメージ1【編集部より】
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プロフィール

船津 徹(Funatsu Toru)

1966年福岡県生まれ。1990年明治大学経営学部卒業。教育コンサルタント。米国法人TLC for Kids代表。大学卒業後、金融会社勤務を経て幼児教育の権威、七田眞氏に師事。「パルキッズ」「パーフェクトイングリッシュ」など、しちだ式英語教材制作に従事。2001年ハワイ州、ホノルルにて移民のための学習塾TLC for Kidsを設立。2015年にはTLC for Kidsカリフォルニア州トーランス校を設立。アジア諸国からの移民子弟を中心に4000名以上の子どもの教育に携わる。同氏が手掛けたフォニックス教材は全米で25万人の教師が加盟するアメリカ最大の教育リソースサイト「OpenEd」による「最も効果がある教材部門」で第2位にランクイン。音楽と演劇を組み合わせた独自の教育メソッドは全米で注目されている。著書に『アメリカ最先端の英語習得法』(現代書林)。一男の父。一人息子は日本語・英語・中国語を操るトリリンガル。バラック・オバマ大統領の母校ハワイのプナホウスクールを卒業。ドナルド・トランプ氏の母校であるペンシルバニア大学ウォートンスクールに在学中。

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