ハワイアンジャーナル パルキッズ通信 | 子育て論, 教育術
2020年2月号ハワイアン子育てジャーナル
Vol.104 | 社会性を育てる方法とは?
written by 船津 徹(Toru Funatsu)
※本記事のテキストは引用・転載可能です。引用・転載する場合は出典として下記の情報を併記してください。
引用・転載元:
http://www.palkids.co.jp/palkids-webmagazine/hawaiian-journal-2002
船津徹「社会性を育てる方法とは?」(株式会社 児童英語研究所、2020年)
子どもが2〜3歳になると、集団性や社会性を必要とする人と人の関わり方が要求されます。保育園や幼稚園に通園する前に、友だちづくり、人との関わり方、集団のルールなどを教えておくことは、子どもの自己肯定感を潰さないためにも大切なステップです。
集団社会に入れても社会性は身につかない
社会性を育てたいからと、幼い子どもをいきなり習い事や幼児教室に入れるケースがあります。残念ながら、人付き合いの方法や集団のルールを知らない子どもを集団に入れても、社会性は身につかないことの方が多いのです。それどころか、モノの取り合いになったり、友だちを突き飛ばしたり、髪の毛をひっぱったり、大きな声を出したり、走り回ったり、友だちのよくない行動に巻き込まれることが多くなり、社会性の発達にとって逆効果になる場合があります。
子どもの社会性を育てるには、まず家庭の中で人付き合いの基本を教えることが大切です。おすすめの遊びが「ままごと」や「ごっこ遊び」です。お母さんごっこ、お父さんごっこ、お店屋さんごっこ、お医者さんごっこ、郵便屋さんごっこ、先生ごっこ、ヒーローごっこなどを通して、子どもは社会のルール、人との関わり方などの基本を学ぶことができます。
ぬいぐるみを使って「こんにちは!うさぎのミミちゃんです。あなたはだーれ?」と、子どもと「ごっこ遊び」をしてみましょう。この短い言葉の中に「元気に挨拶する」「自己紹介する」「質問する」というコミュニケーションの基本が詰まっています。子どもはすぐに乗ってきて「私はサラちゃん。3歳です」と元気に答えてくれます。
また、子どもと「おままごと」をしてみましょう。子どもが人形を使って「お母さん役」をすると「ご飯ができました。いただきまーす。いっぱい食べてね」と、お母さんの言葉をそっくり真似していることがすぐに分かります。子どもは親の姿を見て育つのです。親は子の鏡というのは本当です!
親子の身体を使った遊びが効果的
親子の「身体を使った遊び」は子どもの社会性を育てます。身体を使った遊びの適任者は「父親」です。父親との(やや荒っぽい)身体的な触れ合いを通して、子どもはどこまでの乱暴(荒っぽさ)が許されるのか、父親の表情、声、行動の変化から学び取ることができるのです。子どもの頃に父親とよく遊んだという子どもほど、自分の感情や行動をコントロールする能力、相手の気持や感情を読み取る能力が高度に身につき、社会性の高い人に育ちます。
ケンブリッジ大学のマイケル・ラム心理学博士(Michael Lamb)は、父親が子どもと長い時間を過ごすほど、子どもの社会性の発達がよくなるという研究結果を発表しています。
ハーバード大学医学部のマイケル・ヨグマン博士(Michael Yogman)は、父親が育児に積極的に参加した子どもには以下のような特徴があることを発表しています。
・自尊心が高い
・言語能力がすぐれている
・学校の成績がよい
・うつや不安になりにくい
・学校をずる休みしたり、問題行動を起こす確立が低い
子どもは父親との遊びを通して、社会で人と関わりながら生きていく土台(社会性)を身につけていくのです。さらに、親子の信頼関係が強くなり、自己肯定感が大きくなり、成績がよくなり、レジリエンスが強くなりますから、父親との遊びは子どもにとってよいことだらけなのです。
子どもの成長に応じて子どもとの遊びを発展させていきましょう。屋外で思い切り身体を動かしたり、スポーツをしたり、自然の中で釣りやキャンプを楽しんだり、父親だからできる冒険的な遊びを楽しみましょう。父親との遊びや自然体験の豊かさは子どもの有能感を高め、自己肯定感を大きく育ててくれます。
親子の身体をつかった遊びの例
子どもの社会性を育てる遊びは「身体接触が多いもの」がお勧めです。以下に家庭でできる親子の遊びをいくつかご紹介します。
・おさるの親子(お父さんのお腹に子どもがしがみつく遊び)
・お父さんゴーカート(お父さんの膝の上で車の運転のマネをする)
・メリーゴーランド(子どもの脇の下を手で持って、子どもを持ち上げる)
・お父さん鉄棒(お父さんの腕に登ったりぶらさがったりする)
・スーパーマン(子どもを持ち上げて空を飛ぶ遊び)
・山登り(お父さんの背中を山に見立てて子どもがよじ登る)
・おうまさん(うまになったお父さんの背中にまたって進む遊び)
・宇宙船(仰向けに寝たお父さんの足の裏に子どもを乗せて持ち上げる)
・ペンギン親子(お父さんの足の上に子どもの足を乗せて歩く)
・おすもうごっこ(お父さんと組み合ってすもうをする)
・おいかけっこ(まてーと言っておいかける)
・くすぐりっこ(逃げる子どもを追いかけて、捕まえたら体をくすぐる)
・じゃんけんこちょこちょ(じゃんけんで勝ったら相手をくすぐる)
子どもを集団社会に入れる時の注意
子どもが地域社会(公共の場所、友達の家など)や集団社会(保育園や習い事など)へ参加するようになると、いろいろなルールにぶつかります。それまで家庭で自由気ままに過ごしてきた子どもを、いきなり集団社会に入れて、ルールに従わせようとしてもうまくいきません。
新しい環境に子どもを参加させる時は、必ず「前もって」どこに行き、何をするのかを丁寧に説明してあげてください。ある日突然、幼児教室に連れていき「先生の言うことを聞いてね!」「お友だちと仲良くしてね」と言われても、子どもはどう行動していいのか分かりません。だから不安になって泣き出したり、場所をわきまえず騒いだりするのです。
大人だって何の説明もなく、見知らぬ場所に連れて行かれたらパニックになります。子どもにも必ず、どこで何をするのか、きちんと説明してあげましょう。
「今日は親子教室に行くよ。そこはお友だちと歌をうたったり、先生と体操したり、お絵描きをしたり、楽しいことをたくさんするよ。お教室では先生のお話を聞くのがお約束。◯◯ちゃんはお約束守れるかな?」と聞けば、2歳児でも理解してくれます。子どもが「うん。分かった」と言ったら、「ママはうれしいよ!」と言って抱きしめてあげましょう。
TLCのオリジナルフォニックス
ハワイとロサンゼルスのTLC for Kidsでは英語の「リタラシー教育」を実践しています。音声と映像を多用した楽しいオリジナルのカリキュラムで「英語の読む力」を確実に身につけることができます。TLC for Kidsのオリジナルフォニックス動画はYouTubeで「TLC Phonics」と検索すれば見つかりますのでぜひご活用ください。
【編集部より】
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船津 徹(Funatsu Toru)
1966年福岡県生まれ。1990年明治大学経営学部卒業。教育コンサルタント。米国法人TLC for Kids代表。大学卒業後、金融会社勤務を経て幼児教育の権威、七田眞氏に師事。「パルキッズ」「パーフェクトイングリッシュ」など、しちだ式英語教材制作に従事。2002年ハワイ州、ホノルルにて移民のための学習塾TLC for Kidsを設立。2015年にはTLC for Kidsカリフォルニア州トーランス校を設立。アジア諸国からの移民子弟を中心に4000名以上の子どもの教育に携わる。同氏が手掛けたフォニックス教材は全米で25万人の教師が加盟するアメリカ最大の教育リソースサイト「OpenEd」による「最も効果がある教材部門」で第2位にランクイン。音楽と演劇を組み合わせた独自の教育メソッドは全米で注目されている。著書に『アメリカ最先端の英語習得法』(現代書林)。一男の父。一人息子は日本語・英語・中国語を操るトリリンガル。バラック・オバマ大統領の母校ハワイのプナホウスクールを卒業。ドナルド・トランプ氏の母校であるペンシルバニア大学ウォートンスクールに在学中。