ハワイアンジャーナル パルキッズ通信 | 留学, 英会話
2020年7月号ハワイアン子育てジャーナル
Vol.109 | 日本で英語を使う環境を作るためには
written by 船津 徹(Toru Funatsu)
※本記事のテキストは引用・転載可能です。引用・転載する場合は出典として下記の情報を併記してください。
引用・転載元:
http://www.palkids.co.jp/palkids-webmagazine/hawaiian-journal-2007
船津徹「日本で英語を使う環境を作るためには」(株式会社 児童英語研究所、2020年)
幼児期は楽しく英語学習に取り組んでいた子どもが、小学生になると突然、英語を嫌がるようになることがあります。小学校に通い始め、日本語による教科学習が始まると、「英語は学校で必要ないこと」「日本で英語はほとんど使わないこと」に気づくからです。
そして英語よりも日本語の主要教科で良い成績を取ることの方が大切だと感じ、それに伴い英語学習へのモチベーションが下がっていくのです。小学生になってから英語学習をスタートした子どもにも同じことが起きます。最初は英語を楽しんでいても、やがて、やる気が停滞していきます。学校の授業とは関係ない英語学習に価値を感じられず、身が入らなくなるのです。この、小学生時代に起きる「英語の停滞期」をいかに乗り越えるかが、子どもの英語学習や異文化へ向き合う態度を決定づけます!
外国人とコミュニケーションする機会を作る
小学生以上の子どもには、外国人と英語でコミュニケーションをとる機会を作ってあげましょう。子どもが自分から外国人を見つけて話しかけることはないですから、まず親が外国人と話すチャンスを作ってあげることが大切です。
外国人とのコミュニケーションを経験すると「英語は役に立つ」「英語が通じると楽しい」と子どもが実感できるのです。
今は日本でも生の英語に触れるチャンスがたくさんあります。どの学校にもネイティブの先生(ALT)がいますし、各自治体にも「異文化交流」や「国際交流」を促進する部署があります。またオンラインで世界中の人たちと英語で交流することも可能です。
あまり知られていませんが、海外の市町村と姉妹都市を締結している地方自治体が多くあります。自治体国際化協会(CLAIR)のウェブサイトでは、地方自治体の姉妹都市提携状況を見ることができます。お住まいの市町村名を調べれば、どの海外の都市と交流関係にあるのか分かります。
子どもが参加する国際交流プログラムの他にも、日本にいながら、家族ぐるみで地域に住む外国人と交流したり、地域を訪れる外国人を短期間受け入れるホームステイプログラムを実施している自治体がたくさんあります。
横浜市は「横浜市国際交流ラウンジ」と呼ばれる外国人支援、国際交流施設を設けており、子どもから大人まで、多くの外国人&日本人が文化イベントや国際交流に活発に参加しています。
札幌市は、市民レベルの国際交流を推進するためにホームステイ制度を設けています。国際交流を目的に外国から訪問してくる人を家庭に迎え、家族ぐるみでの交流を実現するものです。基本は3泊までの短期ホームステイです。
埼玉県では「ワンナイトステイ事業」と呼ばれる1泊2日のホームステイプログラムを実施しています。1泊するのは、世界各国で日本語を教えている外国人の教師たちです。
新型コロナウィルスのパンデミックで多くの国際交流プログラムの実施が難しくなっていますが、現代はインターネットを駆使すれば、世界中の人たちとコミュニケーションをとることが可能です。親が想像力を働かせて調べてみると、身近に英語を使うチャンスがたくさんあることがすぐ分かるはずです。
ホストファミリーになって留学生と生活を共にする
小学高学年以上の子どものモチベーションを一気に伸ばす方法が「ホストファミリー」です。外国人留学生を、家族の一員として受け入れるのです。おすすめは「AFS日本協会」の留学プログラムです。こちらもコロナウィルスによって今すぐの実現が難しいかもしれませんが、将来の計画として視野に入れてください。
AFSは国際的なボランティア団体で、営利を目的としない民間組織です。AFS留学生は世界の50カ国から来日します。留学生は高校生で、英語力を身につけています。受け入れ期間は1週間から1年まで。ホストファミリーはボランティアですから、協会からの金銭支援はありません。
長期の受け入れの場合、留学生は地域の高校に通います。年齢の近い高校生のお兄さん、お姉さんと生活を共にする経験は、子どもにとってはもちろん、家族全員にとっても国際感覚を養う絶好のチャンスです。
AFSのウェブサイト(afs.or.jp)では、ホストファミリーの条件、アドバイス、体験談など、たくさんのサポート情報が掲載されています。それらを参考に外国人留学生を受け入れる不安や疑問を一つひとつ解消していき、ホストファミリーになることを前向きに考えてみましょう。
家が狭いから、マンション暮らしだから、誰も英語が話せないからと、ホストファミリーを諦める必要はありません。日本に来る留学生は、飾らない日常の日本の生活や習慣や文化に興味があるのです。
子どもが一人増えたと思って、我が子と同じように接すればよいのです。子どもの学校に体験入学したり、地域のお祭りやイベントに参加したり、一緒にスポーツをしたり、海や山やプールで遊んだり、そんな普通のことが留学生にとっては貴重な体験となります。
外国人留学を受け入れることによって、子どもは身近なアイドルを持つことができます。「日本に一人で来るなんて勇気があるな!」「私も外国に行ってみたい!」「英語ができるようになりたい!」と、子どもは留学生からたくさんの刺激を受けると同時に、自分の将来の夢についても考えるきっかけになります。
サマーキャンプで英語を使う体験をする
最近は日本でも、自然体験キャンプや山村留学体験キャンプなど、集団生活を経験ができるプログラムが増えてきました。夏休みにただ遊ばせておくだけではもったいないですね。小学高学年からは夏休みを利用して、子どもを一回り成長させるサマーキャンプへの参加を検討してみてはいかがでしょうか?
いつもとは異なる仲間との共同生活を体験できるサマーキャンプは、子どもの視野を広げ、思考を豊かにし、コミュニケーションスキルを伸ばし、自信を大きくしてくれるチャンスです。
サマーキャンプでは「自分のことは自分でやる」のが原則です。自分で起きて、自分で食事を作り、自分で片付ける。親元を離れて身の回りのことを自分でやることで「自立」を学ぶことができるのです。
このサマーキャンプに「英語」をプラスした「英語サマーキャンプ」が日本でも開催されるようになりました。インターナショナルスクールのキャンパスを利用したもの、大自然の中で様々な活動に従事するもの、スポーツ、ダンス、演劇などを集中指導するものなど、子どもの興味に合ったプログラムを「英語で」体験できます。
サマーキャンプを楽しむには、知らない人の中に飛び込んで行けるように日頃からコミュニケーションスキルに着目することが大切です。コミュニケーションは放っておけば自然に身につくと考えている方が多いのですが、多くの場合、正しい方法を教えてあげなければ良いコミュニケーションは身につきません。
と言っても難しく考える必要はありません。笑顔で挨拶する、相手の目を見て話す、他人に親切にする、ありがとうやごめんなさいを素直に言えるようにするなど、親がコミュニケーションの基本を教えてあげれば、子どもは短期間で身につけることができます。
日本国内の国際交流プログラムに参加する
中学生以上になると、子どもが参加できる国際交流プログラムの選択肢が一気に増えます。日本国内で実施するもの、短期間海外に行って行なうもの、書類審査や面接をパスすれば奨学金を得て無料で参加できるものがあります。
受験のための英語でなく、自分を成長させるための英語、将来社会で役立つための英語を体験するためにも、国際交流プログラムへの参加を検討してみてください。まずは親が調べて「こんな面白そうなプログラムがあるけど挑戦してみない?」と子どもに提案してあげてください。
前述の「AFS日本協会」は、中高生を対象に様々な国際交流プログラムを実施しています。お勧めは外国人留学生たちと4日間の共同生活を行なう「国際交流サマーキャンプ」です。日本全国七カ所で毎年実施されています。
世界中から日本に来ている同年代の留学生たちと真剣に語り合い、思いを伝え合う経験は、子どもの一生を変える大きな出会いとなることでしょう。
「自分の人生を変えてくれた!」
「世界を見る目が広がった」
「自分のことを今まで以上に考えるきっかけになった」
「言葉がうまく通じなくても、相手に伝える気持ちと笑顔、そして思いやりがあれば自分の気持ちを伝えられることに気づいた」(AFSウェブサイトより)など、大変充実した経験をすることができます。
新型コロナウィルスの影響で多くの国際交流プログラムやサマーキャンプの実施が難しくなっています。しかし治療法やワクチンが普及する日はそう遠くありません。ポストコロナで子どもが突き抜けるためにも、今、国際交流についての情報を集め、プランニングをしておくことをお勧めします。
【編集部より】
船津徹先生の新著『失敗に負けない「強い心」が身につく 世界標準の自己肯定感の育て方』(KADOKAWA)全国書店にて発売中。困難に負けない「心の強い子」の育て方を詳しく紹介する一冊です。ポストコロナを生き抜くたくましい子どもを育てる知恵が満載です。ぜひご一読ください。▶︎詳細・お申し込みはこちらをクリック
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船津 徹(Funatsu Toru)
1966年福岡県生まれ。1990年明治大学経営学部卒業。教育コンサルタント。米国法人TLC for Kids代表。大学卒業後、金融会社勤務を経て幼児教育の権威、七田眞氏に師事。「パルキッズ」「パーフェクトイングリッシュ」など、しちだ式英語教材制作に従事。2007年ハワイ州、ホノルルにて移民のための学習塾TLC for Kidsを設立。2015年にはTLC for Kidsカリフォルニア州トーランス校を設立。アジア諸国からの移民子弟を中心に4000名以上の子どもの教育に携わる。同氏が手掛けたフォニックス教材は全米で25万人の教師が加盟するアメリカ最大の教育リソースサイト「OpenEd」による「最も効果がある教材部門」で第2位にランクイン。音楽と演劇を組み合わせた独自の教育メソッドは全米で注目されている。著書に『アメリカ最先端の英語習得法』(現代書林)。一男の父。一人息子は日本語・英語・中国語を操るトリリンガル。バラック・オバマ大統領の母校ハワイのプナホウスクールを卒業。ドナルド・トランプ氏の母校であるペンシルバニア大学ウォートンスクールに在学中。