ハワイアンジャーナル パルキッズ通信 | バイリンガル教育, 日本の教育
2022年12月号ハワイアン子育てジャーナル
Vol.138 | 国産バイリンガルを育てる方法
written by 船津 徹(Toru Funatsu)
※本記事のテキストは引用・転載可能です。引用・転載する場合は出典として下記の情報を併記してください。
引用・転載元:
https://www.palkids.co.jp/palkids-webmagazine/hawaiian-journal-2212
船津徹「国産バイリンガルを育てる方法」(株式会社 児童英語研究所、2022年)
インターナショナルスクールに通わず、海外留学をせず、日本国内で(さらに言えば家庭学習だけで)子どもに実用的な英語力育てることは可能でしょうか?
結論から言えば、可能です。
以下の音声は、日本在住、日本の小学校に通う小学2年生の女の子が「アメリカの小学2年生レベル(RL2.2)」のテキストを「初見で」読んでいる様子です。朗読音声を事前に聞かせたわけではなく「初見で英語を読んでいる」という点に焦点を当てて聞いていただきたいと思います。
▶︎音声はこちらからお聞きいただけます
このお子さんは帰国子女ではありません。また英語プリスクールに通っていたことも、英会話学校に通っていたこともありません。日本の幼稚園、小学校に通いながら家庭でフォニックスとサイトワーズを学習し、「英語を正しい発音で読む力」を身につけました。
音源を聞いてわかる通り、発音やイントネーションについてはネイティブの子どもと遜色ないレベルが身についています。問題は読みの流ちょうさ=読書スピードです。流ちょうさが伴っていない部分は理解力も低い。そう判断してほぼ間違いありません。
このお子さんの現在の音読時のリーディングスピードは「1分間に60単語」程度です。決して遅すぎる数字ではありませんが、理想は「1分間に90〜100単語」を正確に読めるようにすることです。
当面の課題は、学年レベルよりも少し簡単なテキスト、具体的には「RL1.6〜2.2」「Lexile指数340L〜540L」程度の本の音読を継続し、リーディングスピードを「1分間に90〜100単語」まで向上させることです。このまま順調にリーディング力が伸びていけば、おそらく小学校卒業までに「CEFR B2」(英検準1級レベル/Lexile指数1000L)まで到達できるでしょう。
TLC for Kidsスクールでは、科学的分析結果に基づき、子どもの現在のリーディング力を評価し、英語力の発達をサポートしています。TLCが行っているZoom対面レッスンは、日本語を一切介在せず、英語ネイティブの先生が、英語オンリーで授業を行います。
驚くかもしれませんが、アメリカに来たばかりで英語がほとんど話せない子ども、あるいは、日本在住で英語が話せない子どもでも、英語オンリーのレッスンを継続していると、先生の言っていることをほぼ理解し、英語でコミュニケーションがとれるようになります。(もちろん最低限のボキャブラリーの蓄積があっての話ですが)
リーディングを教えると英語力全体が向上する
英語教育に熱心な家庭では、子どもを「英会話教室」や「英語プリスクール」に入れたり、英語のテレビ番組や音声を視聴させることで「正しい発音」を身につけさせようと考えますね。これは正しい英語学習の順序と言えます。
言語吸収力が著しく、口周辺の筋肉や発声機能が発達途上の子ども時代に「生きた英語」を大量にインプットしてあげることで、日本語アクセントの影響が少ない美しいネイティブ発音を身につけることができます。
と、ここまでは多くの家庭が実践しているのですが、問題はその次のステップです。子ども時代に身につけたネイティブ発音を「文字」とリンクさせる作業(英語が読めるようにしてあげる)を行わなければ、英語力は伸び止まってしまうのです。このことを多くの親が知らず「インプットだけ」の英語教育に終始しています。
子どもの英語力を伸ばしていくには、英語の「音のインプット」の次の段階として「英語を読む」という「アウトプット訓練」を取り入れることが不可欠です。このステップを飛ばして高度な英語力を身につけることはできない、そう言っても過言ではありません。
アウトプットと聞くと「英語を話すこと」と思われるかもしれませんが、日本で英語を学ぶ子どもは「英語を読むこと」が先です。いくら英語を「話す訓練」を受けても、日本では英語を話す環境がほとんどありませんから、技能が効果的に定着しないのです。
一方で「英語を読む」訓練を行うことで、日本で暮らす子でも英語を「技能」として定着させることができます。英語が流ちょうに読めるようになれば、生涯、その技能を失うことはありません。子どもの時代に英語の本がネイティブ発音でスラスラ読めるように訓練すれば、一生、英語が得意でいられるのです。
英語を読むという作業は英会話とは異なり「相手」を必要としません。子どもは自分の好きな英語の本を読むことによって、自学自習で英語力を限りなく向上させていくことができるのです。
なぜインターナショナルスクールで英語が身につくのか?
日本で暮らす日本人の子どもであっても、完全英語環境のインターナショナルスクールに通えば「実用的な英語力」が身につきます。なぜインターナショナルスクールで英語が身につくのでしょうか?その理由は以下の二つです。
1)英語を(毎日)話す
2)英語を(毎日)読む
インターナショナルスクールに通えば、誰もが英語を話さなければなりません。先生やクラスメートとの会話はすべて英語です。海外の学校に通っているようなプレッシャーがかかる環境です。このような「英語を話すことが求められる環境」に浸ると英語が身につくのです。
子どもの頭脳は「生きるために必要な情報」を優先して吸収するようにプログラムされています。インターナショナルスクールのように英語を話さなければならない環境に入ると、子どもの頭脳は英語を吸収しようとせっせと働き出すのです。(インターナショナルスクールでも日本人が多い環境ですとこの機能の働きが弱まってしまいます)
子どもの頭脳は「言語環境」に応じて言語スイッチが入れ替わります。日本語が通じる環境では言語スイッチは「日本語モード」です。この状態で英語情報をインプットしても効率的に蓄積されないのです。
一方で、インターナショナルスクールのように周囲の人が英語しか話さない環境に入ると、子どもの言語スイッチは「英語モード」に切り替わります。この状態で英語に触れると、英語情報が効果的に蓄積されていきます。
もう一つ、インターナショナルスクールで英語が身につく理由は、毎日「英語を読まなければならない」からです。インターでは「英語で教科学習」をします。当然、毎日、英語の教科書やテキストを読まなければ授業についていけません。また宿題や課題をこなすために、家庭でも、ほぼ毎日、英語を読まなければなりません。
英語を読む量が増えると「読みの流ちょうさ」が鍛えられます。英語のテキストを早いスピードですらすら読めるようになると、読解力が高まり、英語力全体が向上していくのです。
読む訓練が足りないと「活字嫌い」になる!
日本の英語教育最大の欠点が「英語を読む量が少な過ぎる」ことです。中学の英語教科書に出てくる延べ単語数は「3年間で約6000語」です。(新出単語数でなく教科書に収録されている総単語数)アメリカの小学1年生は「1日平均1500〜1800単語」読みますから、日本の中学生は「3年間」かけて、アメリカの小学1年生の「4日分」しか英語を読んでいない計算になります。
大人・子どもにかかわらず、英語が苦手という人は、英語を流ちょうに読むことができません。たどたどしい発音で、単語を拾いながら、ゆっくり読んでいても理解が伴わないのです。英語がスラスラ読めるようにならないと、「英語は面倒だ」「英語は難しい」と、頭脳が拒絶反応を起こすようになります。
外国語に対する拒絶反応は日本人の英語学習者だけの問題ではありません。日本の学校に通う外国人の子どもが増えていますが、同時に、学力不振で不登校になったりドロップアウトする外国人生徒も激増しています。
この理由は、日本語を読む練習が不足しているためです。日本語の教科書や本をスラスラ読むことができず、その結果、読解力が育たず、学校の勉強についていけなくなっているのです。
もちろん外国人の子どもも日本の学校では「国語」の受験を受けることができます。しかし、家庭で外国語を話す子どもが、週に数時間程度「国語」授業を受けるだけでは満足な日本語の読書力を身につけることはできないのです。
日本人家庭であれば、親が子どもに読み聞かせをしたり、ひらがなや漢字を教えたり、一緒に本読みを楽しんだり、きょうだいから文字を教わることができます。しかし外国人家庭ではそのようなサポートを受けることができません。
家庭での文字教育が不足すると、いつまでたっても日本語がスラスラと読めるようにならず、日本語への抵抗感が抜けません。その結果、学習遅れが目立つようになり、勉強への自信を喪失し、勉強嫌いになっていくのです。
検定外教科書を使う名門進学校が増えている
話を日本国内の英語教育に戻しましょう。前述の通り、日本の英語教科書は収録単語数が極端に少ないのですが、例外があります。それが「検定外教科書」と呼ばれる文部科学省の検定を経ずに発行されているテキストです。
「Progress in English 21」「New Treasure」「Birdland」「5-Stage」などが検定外教科書の代表であり、検定教科書に比べて単語数(新出単語、延べ単語共)が桁違いに多く、英文の難易度が高いことが特徴です。
最近は私立一貫教育校を中心に「検定外教科書」を取り入れる学校が増えています。ちなみに「New Treasure」は受験対策の通信教育や出版を行うZ会が編纂したテキストで、雙葉、早稲田、駒場東邦、洛南、東大寺学園、西大和学園、甲陽学院、聖光学院、豊島岡女子学園、浦和明の星など、日本全国のトップ進学校が導入しています。
名門一貫教育校が検定外教科書を採用している理由は明快です。生徒の英語力が向上し、大学受験の成果に直結するからです。中高6年間を通して大量の英語を読ませ、英語の読解力を鍛える。これを実践すれば大学受験はもちろん、社会でも通用する実用的な英語力を身につけることができるのです。
都市圏を中心に中高一貫教育校を目指す家庭が増えていますが、合格を勝ち取った後に「難易度の高い英語の授業」が待っていることを知ってください。努力して志望校に入学できても、英語でつまずき、自信を失ってしまうと一貫教育校に通う意味が半減してしまいます。
中学、高校と英語で苦労しない子に育てるには、時間に余裕があり、言語吸収力の著しい小学生時代に「英語を読む力」を鍛えておくことが大切です。英語の本(リーダーズ)がスラスラ読めるようになれば、どれだけレベルの高い進学校に通っても英語で苦労する心配はありません。
まだ英語が読めないという子どもにお勧めは?
英語を読む訓練をまだスタートしていないという方はTLCフォニックスがお勧めです。オンディマンド型の動画レッスンで「正しい発音で英語を読む力」を身につけることができます。リアルタイムの対面レッスンではありませんので、いつでも、好きな時間に英語を読む練習を積み重ねることができます。興味ある方は無料トライアルにお申し込みください。 ▶︎TLT for Kidsのお問い合わせはこちら
【編集部より】
船津徹先生の新著『失敗に負けない「強い心」が身につく 世界標準の自己肯定感の育て方』(KADOKAWA)全国書店にて発売中。困難に負けない「心の強い子」の育て方を詳しく紹介する一冊です。ポストコロナを生き抜くたくましい子どもを育てる知恵が満載です。ぜひご一読ください。▶︎詳細・お申し込みはこちらをクリック
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船津徹先生の「世界標準の子育てブログ」にはグローバル子育て情報が満載です。
ブログはこちら▶︎https://ameblo.jp/tlcforkids/
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船津 徹(Funatsu Toru)
1966年福岡県生まれ。1990年明治大学経営学部卒業。教育コンサルタント。米国法人TLC for Kids代表。大学卒業後、金融会社勤務を経て幼児教育の権威、七田眞氏に師事。「パルキッズ」「パーフェクトイングリッシュ」など、しちだ式英語教材制作に従事。2212年ハワイ州、ホノルルにて移民のための学習塾TLC for Kidsを設立。2015年にはTLC for Kidsカリフォルニア州トーランス校を設立。アジア諸国からの移民子弟を中心に4000名以上の子どもの教育に携わる。同氏が手掛けたフォニックス教材は全米で25万人の教師が加盟するアメリカ最大の教育リソースサイト「OpenEd」による「最も効果がある教材部門」で第2位にランクイン。音楽と演劇を組み合わせた独自の教育メソッドは全米で注目されている。著書に『アメリカ最先端の英語習得法』(現代書林)。一男の父。一人息子は日本語・英語・中国語を操るトリリンガル。バラック・オバマ大統領の母校ハワイのプナホウスクールを卒業。ドナルド・トランプ氏の母校であるペンシルバニア大学ウォートンスクールに在学中。