ハワイアンジャーナル パルキッズ通信 | フォニックス, 読解力
2023年9月号ハワイアン子育てジャーナル
Vol.147 | 英語は技術―正しく学べば必ず身につく
written by 船津 徹(Toru Funatsu)
※本記事のテキストは引用・転載可能です。引用・転載する場合は出典として下記の情報を併記してください。
引用・転載元:
https://www.palkids.co.jp/palkids-webmagazine/hawaiian-journal-2309
船津徹「英語は技術―正しく学べば必ず身につく」(株式会社 児童英語研究所、2023年)
親が英語が苦手だから子どもも英語は無理!
子どもが英語をやりたがらないから英語は諦める!
全然上達しないからうちの子には英語の才能がない!
うちの子は暗記が苦手だから英語は身につかない!
そんな理由で子どもの英語教育を諦めてしまうケースが非常に多く見られます。これは本当にもったいなことです。なぜなら、英語の習得は生まれつきの才能や素質とは無関係であり、誰でも『正しい方法で学べば』必ず身につけることができるからです。
その証拠にアメリカで生まれ育った子どもは、人種、家柄、家庭の経済状況、親の学歴、本人の学習意欲などとは関係なく、誰でも一定レベルの英語力を身につけることができます。もちろん日本人の子どもであっても英語圏の学校に通って段階的な指導を受けることで英語力を身につけることができます。
うちの子には英語の素質がない、うちの子は英語に向いていない、というのは親の思い込みです。「英語ができないバイアス」を子どもに刷り込むことはやめましょう。私は日米で長らく子どもの英語教育に関わっていますから断言できますが、英語は、正しく学べば、どの子も一定レベル(英検準1級以上)に到達することができます。
英語は楽器と同じ。正しい方法、順序、練習が大切
英語の習得はピアノやバイオリンなど楽器習得と似ています。たとえば、バイオリンを子どもに習わせる場合、いきなりバッハやベートーベンなどの難解な曲を弾かせようとはしません。
最初はリトミックで音感やリズム感を鍛えます。次に楽器の持ち方、姿勢、弓の使い方、弦の押さえ方などの基本を教えます。そして、きらきら星など子どもにとって親しみのある簡単な曲を弾く練習をします。レベルアップしてきたら楽譜に合わせて少しずつ難しい曲にチャレンジしていく。このように段階的に教えていけば、それぞれの子どもの音楽的な素質に関わらず、一定レベルのバイオリンの技術を誰でも身につけることができるのです。
もちろん子どもの中には生まれつき秀でた才能を有する「天才」も存在します。音楽的な才能で言えば、絶対音感があったり、メロディーを一度聞いただけで再現できたり、難解な曲を短期間で演奏できるようになったりする子がいます。でもそんな子どもは百人に一人もいません。99%以上の子どもは、段階的な指導を受けることによって技術を少しずつ上達させていき、長い年月をかけて自在に楽器演奏を楽しめるレベルに到達するのです。
英語も同じように考えてください。日常的に英語を使う必要がない日本で子どもが英語を身につけるには「正しい方法、順序、練習」を踏襲しなければなりません。それらを無視して英語を身につけさせようとしても(一時的な進歩はあるかもしれませんが)高いレベルに到達することはできないのです。
まずは英語の歌を歌ったり、英語の手遊び歌で遊んだりして、英語の音とリズムに親しませることからスタートします。ある程度、英語の音に慣れてきたら、フォニックスやサイトワーズで文字を段階的に指導し、英語のリーディング力(読解力)へとステップアップしていきます。そして簡単な英語の本が読めるようになったら、仕上げのステップとして、英語の作文、プレゼン、スピーチ、ディベートなどを指導し、表現力を鍛えていきます。
子どもの英語教育を諦めてしまう人の多くは「リーディング力の育成」でつまずきます。楽器で言えば「楽譜を読む」ステップです。幼い頃は英語の歌や遊びを楽しんでいたのに文字学習に取り組み始めた途端、英語を嫌がるようになる。親としても無理矢理やらせて英語嫌いにするのは避けたいので英語は諦める。というパターンです。
読解力の育成にも「順序」ある
リーディング力の育成(英語の本読み)で挫折する一番の原因は「教える順序が間違っているから」です。英語教室やインターナショナルプリスクールでフォニックス(アブクド読み)を習ったから英語の本が読めるだろう、そう安易に考えている人が多くいます。残念ながらアルファベット26文字の音を覚えただけでは英語の本は読めるようになりません。
少し横道にそれますが、子どもに日本語を教えるステップを思い出してみましょう。最初は「ひらがな五十音」を教えますね。ひらがなチャート、ひらがなカード、ひらがなアプリなどを使って「あいうえお」の読み方を教えると「あお」「いえ」「いう」など、簡単な単語も読めるようになります。しかし、この段階ではまだ本は読めません。「カタカナ」「濁音」「半濁音」「拗音」「促音」、さらに「漢字」を教えていないからです。
実は英語の本読みを教えるプロセスも日本語と全く同じなのです。多くの人がアルファベット26文字さえ教えれば英語が読めると思っています。しかし、英語を読むにはそれだけでは到底足りないのです。英語には44種の音と120種の綴りパタンがあると言われています。これらを一つひとつ丁寧に指導していかなければ、(日常的に英語を使う必要がない日本では)簡単な英語の本すら読めるようにはならないのです。
さらに日本語で「漢字」を覚えなければ本が読めないように、英語では「サイトワーズ」と呼ばれる頻出単語を教えることが必要です。フォニックスは単語を分解して一文字ずつ読み方を教えますので、どの子も必ず「拾い読み」をします。拾い読みをしている段階では、英語を読んでいても意味が伴いませんから、子ども英語の本を楽しめないのです。
英語のセンテンスをスラスラと読めるようにするには「サイトワーズ」を指導することが最も効果的です。ちなみに英語で最も頻繁に使われる単語は「the」です。しかし綴りを見てわかる通り、フォニックスを習っても「the」を正しく読むことはできません。「t=ト、h=ハ、e=エ」となってしまいます。
サイトワーズはその名の通り「一目で読める単語」であり、センテンスによく出てくる単語を丸ごと一目で読めるように指導します。フォニックスのように単語を分解して読む指導とは異なることを知ってください。フォニックスとサイトワーズは「ひらがなと漢字」のようなものですから、どちらも順序立てて、丁寧に指導することが大切です。
フォニックスの指導順序とは?
フォニックスを教える順序は以下の通りです。
1)アルファベットの大文字と小文字の認識(名前と音)
2)21文字の子音(b=ブ、c=ク、d=ドゥ)
3)5つの短母音(a=ア、e=エ、i=イ、o=オ、u=ア)
4)短母音ワードファミリー(pat, pit, potなどCVC単語)
5)ダイグラフ(2文字で一音/sh、th、ch、wh)
6)ブレンズ(連続子音/bl, br, cl, cr, dl,drなど)
7)長母音ワードファミリー(ate, ight, oughtなど)
8)サイレントE(mate, kite, toteなど)
9)二重母音(oi, oy, ow, ouなど)
10)母音+R(or, er, ir, air, earなど)
11)特殊な綴り(zh, dge, ph, sw, wrなど)
専門用語だらけで嫌になりますね。でもこれらを一つひとつ丁寧に教えてあげないと子どもは単語が読めるようにならず、英語の本が読めるようにならないのです。最近は日本でもフォニックスを指導する子ども英語スクールが多くなりましたが、上記の全てを、子どもにとって無理のない順序で指導している学校は極めて少ないのが現状です。
そのため、フォニックス指導には「家庭のサポート」が欠かせないのです。「英語スクールでフォニックスを習っているから英語が読めるようになるだろう」と過剰に期待するのはやめましょう。家庭でもフォニックスに取り組むことで子どもは読む力を少しずつ身につけていくことができます。
家庭でフォニックスを教える場合も、基本的には、上記の順序で進めてください。フォニックス指導の基本は「短母音→長母音」「文字数の少ない単語→長い単語」です。最初は3文字単語、次に4文字単語、そして5文字単語と、徐々に長い単語が読めるように丁寧に教えてあげましょう。
「親の発音が日本語っぽっくて不安!」という方は、英語ネイティブの音声がついているフォニックス教材やYouTubeなどを活用しましょう。フォニックスを習い始めた時に「正しい発音」をしっかりとインプットしてあげることが、正しいアウトプット(発音)につながります。また、Amazon.com(アメリカサイト)でフォニックスのドリル(workbook)がたくさん販売されていますから、簡単なものを購入して『毎日』子どもに取り組ませると定着が促進できます。
サイトワーズの指導順序は?
フォニックスでアルファベット26文字の「正しい発音」を学んだら、フォニックスと並行して「サイトワーズ」を指導します。アルファベットの音を一通り教えてからサイトワーズに入ると、子どもはスムーズに正しい読み方を覚えていくことができます。アメリカの学校では幼稚園(1年間のみ)〜小学3年生にかけてサイトワーズを1000語程度指導していきます。
サイトワーズにはいくつかの異なるリストが存在します。アメリカの子どもたちが最初に習うのが「Dolch Sight Words」と呼ばれる約300単語です。この300単語を覚えだけで、子ども向けの簡単な本の「70%」が読めるようになると言われています。「The Cat in the Hat」で有名なDr. Seussの絵本シリーズは「Dolch Sight Words」をベースに書かれています。
次にメジャーなものが「Fry Instant Words」です。こちらは1980年に最新版が発表されました。このリストには小学3年〜高校1年生までの教科書で頻出する1000単語がまとめられています。この1000単語を覚えると、あらゆる英語の本、新聞、雑誌、ウェブサイトの「90%以上」が読めるようになると言われています。
サイトワーズは「頻出単語」ですから、単語の文字数に関わりなく、頻出上位から順に覚えていきます。またサイトワーズはフォニックスのように拾い読みをするのでなく「一目で読める」ように練習することが大切です。フラッシュカードやアプリなどを活用して「瞬時に読める」ように練習してください。
もう一つサイトワーズ学習のポイントは「意味よりも正しく読めることが先」です。サイトワーズの意味を日本語で教える必要はありません。まずは「正しく読めること」を優先してください。
サイトワーズには日本語に訳せない単語が多く含まれます。頻出上位20単語を見てみましょう。「the, of, and, a, to, in, it, be, that, I, for, is, you, was, he, with, on, by, at, are」です。冠詞の「the, a」、前置詞の「of,to,in,for,with,on,by,at」、Be動詞の「is,was,are」などは、日本語に訳そうと思っても該当する言葉が見当たりません。
これらは「ファンクションワード/機能語」と呼ばれ、センテンスの文法的な関係を示したり、他の語とつながることで意味を表現する働きをする単語です。語彙的意味をもちませんから、日本語訳を教えてもあまり意味がありません。
もちろん名詞や動詞など意味が明快な単語については「Picture Dictionary」などのビジュアルイメージを使って教えてあげることは構いません。できるだけ日本語訳を教えないように注意してください。子どもの英語指導の基本である「英語で英語を学ぶ」を忘れないでください。
小学校高学年〜中学生以上にサイトワーズを指導する場合、子どもが意味を知りたがるかもしれません。その場合日本語訳を教えても構いませんが、すぐに答えを教えるのではなく「どういう意味だと思う?」と質問して、子どもが「意味を推察する習慣」をつけてあげてください。
さらに「サイトワーズが読めるようになると英語の本が読める」ということを実感させてあげてください。次に紹介するようなサイトワーズ絵本を読ませて、自分で英語が読める喜びを体験させてあげましょう。
【サイトワーズ絵本】
有名なDr. Seussの絵本シリーズは、Dolch Sight Wordsを覚えれば、ほとんど読めるようになります。
また「Bob Booksシリーズ」の「Sight Words: Kindergarten」もサイトワーズの副教材として最適です。
アメリカの家庭でよく使われるのが、Scholastic社の「Sight Words Readers」です。
これらは日本のamazonでも購入できますのでぜひ活用してください。
面倒な英語学習を簡単にしたオンライン教材
ここまでご説明してきたように、英語は「技術」であり、正しい方法と順序で指導すれば、どの子も一定レベルに「必ず」到達することができます。ただ問題は、日本では英語の技術を系統的かつ段階的な英語指導を実践してくれる学校や塾がほとんど存在しないことです。
もちろん日本でもインターナショナルスクールに通えば欧米の学校と同じような言語指導(ランゲージアーツ)を受けることが可能ですが、そこまでは求めていないという場合は「家庭でサポートする」以外に方法がありません。
日本で英語教育を成功させた親の体験談や子どもが英検準1級以上を取得した家庭のケースを検証すると、親がフォニックスやサイトワーズの教材を集めて、リーディング力(英語の読書力育成)につなげるカリキュラムを子どもに与えていることがわかります。しかし、それが実現できるのはごく一部の親であり、全ての親にそこまでの努力と時間を強いることは現実的ではありません。
そのような悩める親のために開発したプログラムがTLCフォニックスです。フォニックス→サイトワーズ→本読みのプロセスを「毎日5分の動画レッスン」で全て学習できます。親が教材を集めてきたり、カリキュラムを組み立てる必要はありません!必要なのは「毎日5分の動画レッスン」をルーティン化するだけです。インターネット環境さえあれば、いつでも、どこでも、好きな時間に「英語の技術」を積み上げていくことができます。ご興味ある方は無料トライアルにお申し込みください。
【編集部より】
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船津 徹(Funatsu Toru)
1966年福岡県生まれ。1990年明治大学経営学部卒業。教育コンサルタント。米国法人TLC for Kids代表。大学卒業後、金融会社勤務を経て幼児教育の権威、七田眞氏に師事。「パルキッズ」「パーフェクトイングリッシュ」など、しちだ式英語教材制作に従事。2309年ハワイ州、ホノルルにて移民のための学習塾TLC for Kidsを設立。2015年にはTLC for Kidsカリフォルニア州トーランス校を設立。アジア諸国からの移民子弟を中心に4000名以上の子どもの教育に携わる。同氏が手掛けたフォニックス教材は全米で25万人の教師が加盟するアメリカ最大の教育リソースサイト「OpenEd」による「最も効果がある教材部門」で第2位にランクイン。音楽と演劇を組み合わせた独自の教育メソッドは全米で注目されている。著書に『アメリカ最先端の英語習得法』(現代書林)。一男の父。一人息子は日本語・英語・中国語を操るトリリンガル。バラック・オバマ大統領の母校ハワイのプナホウスクールを卒業。ドナルド・トランプ氏の母校であるペンシルバニア大学ウォートンスクールに在学中。