ハワイアンジャーナル パルキッズ通信 | 子供の成長, 子育て論
2023年12月号ハワイアン子育てジャーナル
Vol.149 | 英語は「強み」になる!
written by 船津 徹(Toru Funatsu)
※本記事のテキストは引用・転載可能です。引用・転載する場合は出典として下記の情報を併記してください。
引用・転載元:
https://www.palkids.co.jp/palkids-webmagazine/hawaiian-journal-2312
船津徹「英語は「強み」になる!」(株式会社 児童英語研究所、2023年)
突然ですが、みなさんは子どもの頃に「打ち込んでいたこと」がありますか?
スポーツ、楽器演奏、歌、ダンス、演劇、バレエ、絵画、クラフト、そろばん、書道、将棋、囲碁、チェス、競技かるた、ボーイスカウト、山登り、昆虫採集、釣り、読書、漫画、外国語、ゲーム、マジック、プラモデル、鉄道写真…何か一つはあると思います。
次に子ども時代に「打ち込んでいたこと」が、今の仕事、生活、人間関係にどのような影響を与えているのか、少しだけ、考えてみてください。
「打ち込んでいたこと」の仲間は今も親友だ
「打ち込んでいたこと」のおかげで人間関係の輪が広がった
「打ち込んでいたこと」で培った粘り強さが仕事に活きている
「打ち込んでいたこと」で培ったコミュ力が仕事に活きている
「打ち込んでいたこと」で培った度胸が仕事に活きている
「打ち込んでいたこと」の延長戦上に今の仕事がある
「打ち込んでいたこと」が今もストレス発散になっている
「打ち込んでいたこと」が今もリラックスの手段になっている
子どもの頃に「打ち込んでいたこと」は、みなさんが思っている以上に、大人になってからの「人生に強い影響」を与えます。ちなみに私は「ギター少年」でしたが、今も仕事で教育音楽を製作したり、息抜きで楽器演奏をしたり、おやじバンドを結成してチャリティー活動をしたりしています。子ども時代に「意欲で何かに打ち込む」ことで、学校では教えてくれないライフスキル(多くは社会で要求される技能)を身につけることができます。
今、アメリカの教育界で注目されているのが、「Strength-based Education/強みを伸ばす教育」です。これは一人ひとりの子どもに生来備わっている「強み」を見極め、引き上げ教育です。なぜこれが注目されているのかと言うと、子どもの優れた部分にフォーカスすることで「自己肯定感」が高まり、パフォーマンスの最大化が実現できるからです。
子どもの「弱み」や「悪い面」を改善しようとすると、どうしても「できない自分」に向き合う場面が多くなり自己肯定感が下がっていきます。これを繰り返していると「自分には無理」「自分にはできない」と、消極的な態度が形成され、人生に向き合う姿勢が後ろ向きになることがあるのです。
一方で「良い面」にフォーカスすると、子どもは「できる自分」「最高の自分」「輝いている自分」に出会えるチャンスが多くなります。試合で勝った自分、人前でダンスを披露して拍手喝采を浴びた自分、難しい技を成功させた自分、練習以上の力が発揮できた自分、ゾーンに入った自分、プレッシャーを克服した自分など、自分自身の最高の状態を見る機会が増えると、自己肯定感が高まるわけです。
自己肯定感が高い人は、自主的な「やる気」で物事に向き合えるようになります。「自分はできる」と信じているから、勉強にも、部活にも、人間関係にも、就職活動にも、キャリア形成にも、粘り強くチャレンジを継続できるのです。「やる気」が大きければ「人生で成功できる可能性が高まる」ことは、誰もが納得できるのではないでしょうか。
トップ大学に合格する子に共通することは?
私は25年に渡りアメリカで学習塾を経営し、5000人以上の「優秀な日英バイリンガル」を育ててきました。卒業生の多くは、東京大学、慶応大学、早稲田大学など日本のトップ大学を始め、ハーバード大学、イェール大学、プリンストン大学、コロンビア大学、ペンシルバニア大学など、世界最高峰と言われるアイビーリーグ大学に進学し、グローバルに活躍しています。
このように文字にすると「簡単そう」な印象を持つかもしれませんが、日本人が世界のトップエリートと渡り合える英語力を身につけ、アイビーリーグ大学合格を勝ち取ることは並大抵の努力では実現できません。近年、日本屈指の進学校である開成や灘などからもアイビーリーグに挑む学生が増えていますが、合格者は毎年1人いるかいないか、ほんの一握りなのです。
アイビーリーグ大学には、数学オリンピック、物理オリンピック、模擬国連大会、ディベート大会といった「世界規模のコンテスト受賞者」が押し寄せてきます。また、スポーツ、音楽、アートなどの分野で「国家代表レベル」の学生が受験してきます。さらに、アメリカだけでなく、世界中の国々から「国家最高レベルのエリート」が挑んでくるのです。当然「キラリと光る何か」を持っていなければ、その他大勢の受験生の中に埋もれてしまいます。
世界のトップ大学に進学し、社会に出てからも活躍し続けている子どもに共通するのが、人に負けない「強み」があることです。「強み」は学業、スポーツ、音楽、アート、性格的なものなど様々ですが、誰もがその分野で頭一つ突き抜けています。自分の得意分野でズバ抜けてくると、モチベーションが高まり、(勉強などの)苦手なことも克服できるようになっていくのです。
私は塾を経営していますから勉強を教えるのが仕事なのですが、生徒の強みが勉強以外の場合、「強み作りを優先してください」ときっぱり伝えます。(もちろん最低限の勉強は続けてもらいます。あくまでも優先順位です)
また、子どもに勉強への「やる気」が見えない場合は、「本当にやりたいことを見つけてください」と伝えます。親や先生からうるさく言われて渋々勉強するのと、子どもが「やる気」で勉強するのでは、どちらが成果が上がるのかは明白です。打ち込める何かを見つけて「モチベーションを上げる」ことが先なのです。
「やる気がない子」には「良い面」を言葉で伝える
子どもの「やる気のなさ」は、多くの親が抱える悩みです。勉強はイヤイヤ、習い事はダラダラ、新しいことに取り組ませようとしても「ムリ!」で片付けてしまう。楽しそうなのはゲームをしている時とご飯を食べている時くらい。このような子どもには、「強み」に気づかせて、「自信を大きくする」働きかけが効果的です。どんな子にも必ず「強み」があります。子どもの悪い部分には触れず、わが子の「良い面」を見つけて、具体的に言葉で伝えることから始めてください。
実は、多くの子どもは自分の強みに気づくことができません。自分が得意なことは「できて当たり前」だからです。記憶が良い子にとって記憶が良いのは当たり前、手先が器用な子にとって手先が器用なのは当たり前なのです。他の人も自分と同じようにできると思っていて、それが自分の強みであると自覚できないのです。
だから、親が「ここが優れているよ」「この部分をもっと活かすといいよ」と、言葉に出して教えてあげることが大切です。親が強みを言葉で伝えてあげると、子どもは自分の強みを強く意識するようになり、実際にその能力(技能)が高まります。
子どもに伝える時は、具体的にわかりやすくがポイントです。「キックが正確なのは才能だよ」「リズム感がいいのは素質だよ」と良い面を伝えます。「サッカーの才能があるね」「音楽の素質があるね」となんとなく伝えるよりも、はるかに効果的です。
「うちの子には優れた部分がない!」「何もかも人並み!」という方は、子どもの悪い部分の裏に隠れている「強み」を見つけてみましょう。紙と鉛筆を用意して、子どもの「悪い面」を思いつくだけ書き出してみてください。
「やる気がない」「落ち着きがない」「衝動的」「飽きっぽい」「うるさい」「意気地がない」「臆病」「人見知り」「お人好し」「マイペース」「優柔不断」「負けず嫌い」「頑固」「こだわりが強い」‥‥良い面は出てこなくても、悪い面ならたくさん見つけられるのではないでしょうか。
子どもの弱みの裏には「強み」がある
悪い面を書き出したら、悪い面の反対にある「良い面」に目を向けてみましょう。繰り返しますが、子どもの悪い面と良い面はコインの表裏であり、一つの心の働きです。問題はどちらを見るか、なのです。以下を参考に、子どもの悪い面の裏側にある良い面を書き出してみましょう。キラリと光る、才能の芽に気づくはずです。
【弱みを強みに置き換えるエクササイズ】
落ち着きがない→行動力がある
飽きっぽい→好奇心旺盛
いいかげん→おおらか、前向き、楽観的
ふざける、お調子者→ユーモアがある
おっちょこちょい→行動的
うるさい、おしゃべり→言語力が高い、社交性がある
人見知りが激しい→観察力が高い
意気地がない、臆病、気が弱い→慎重、誠実
お人好し→優しい、共感力が高い
八方美人→共感力が高い、調性が強い
おっとりしている→慎重、ンタルが強い
行動が遅い→慎重、思慮深い
優柔不断→思慮深い
言うことを聞かない→意志が強い
単純→素直
心配性→慎重、思慮深い
頑固、我が強い→芯が強い、誠実
勝ち気、負けず嫌い→向上心がある
自己主張が強い→主体性がある、誠実
マイペース→落ち着いて対処できる、情緒が安定している
こだわりが強い→探究心がある、几帳面
神経質→感性が強い
気が弱い→思いやりがある
面倒くさがり→効率よく行動できる
主体性がない→協調性がある
すぐ泣く→共感性が高い
無関心→合理的、論理的
どの子にも「強みの芽」が備わっている!
私のもとには、日々「うちの子には才能がない」「うちの子には特技がない」と悩みが寄せられますが、問題の本質は「子どものあり方」ではないと私は考えています。
この世に特性のない子など、ただの一人もいません。誰もが輝かせるべき特性の芽を持って生まれてきます。他の子どもとは違ったところ、目立っているところ、興味や関心の強いこと、必ず一つ以上は持っています。
しかし、親がその「特性の芽」に気づいていない、あるいは、子どもの本当の特性を無視した教育や環境を与え続けていると、子どもは自分らしさをどんどん失っていくのです。
親の行動次第で、どんな子どもも天才になれますし、どれだけ才能がある子どもでも、親があり方を間違えれば自己肯定感が低く、やる気の小さい子どもにも育ってしまいます。「パッとしない」「平凡」と言われながら育った子どもは、当然ながら自分の特性にふたをし、そのとおりの子どもになってしまうのです。
ノーベル賞受賞者アルベルト・アインシュタインは、子どもの頃から天才だったわけではありあせん。言葉を話すことが苦手で、友だちが少なく、同級生から「のろま」というあだ名をつけられていたほど、何をやっても人並みにはできなかったそうです。
しかし、両親はアインシュタイン少年の特性(興味があることについてとことん探求する気質)を尊重し、学校の学習ペースに合わせようと詰め込み教育をしたり、無理に友だち付き合いをさせることはありませんでした。代わって彼の特性を刺激するために、様々な環境や道具を「家庭で」与えたのです。
アインシュタイン少年は、5歳のころ父親から羅針盤(コンパス)をもらったことをきっかけに「自然界の仕組み」に強い関心を抱くようになります。そして、9歳のときに「ピタゴラスの定理」を知ったことで、数学への興味が高まり、才能が一気に開花していったのです。
アインシュタイン少年の「優れた面」を見出し、情熱を引き出すことに特化してサポートしてきた家庭教育が天才を生み出したのです。のちにアインシュタインはこんな言葉を残しています。
「私に特別な才能はない。ただ強烈な好奇心を持っているだけだ」
私の新著『強みを生み出す育て方』12月6日発売決定!
【子どもの強みの見つけ方・伸ばし方】を、科学的エビデンスをベースに、家庭で簡単に行える35の具体的なメソッドに落とし込んだ1冊です。「この世に強みのない子など、いない。すべての子が“強みの芽”を持って生まれている!だからこそ、1人1人に合った“強み育て”が大切だ」。これが、本書でお伝えしたいことです。
前半では、わが子が生まれながらに持つ「気質5タイプ」「才能5タイプ」と「ピッタリの習い事」を判定し「強みの芽」を見極めます。さらに、全タイプの強み育てにおいて不可欠な「やる気の引き出し方」「学業と習い事の両立方法」について具体的ノウハウを体系化しています。
幼児から小学生のお子さんを育てている方、子どもの強みがわからない、どんな習い事が向いているのかわからないという方におすすめです!ぜひご一読ください。
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船津 徹(Funatsu Toru)
1966年福岡県生まれ。1990年明治大学経営学部卒業。教育コンサルタント。米国法人TLC for Kids代表。大学卒業後、金融会社勤務を経て幼児教育の権威、七田眞氏に師事。「パルキッズ」「パーフェクトイングリッシュ」など、しちだ式英語教材制作に従事。2312年ハワイ州、ホノルルにて移民のための学習塾TLC for Kidsを設立。2015年にはTLC for Kidsカリフォルニア州トーランス校を設立。アジア諸国からの移民子弟を中心に4000名以上の子どもの教育に携わる。同氏が手掛けたフォニックス教材は全米で25万人の教師が加盟するアメリカ最大の教育リソースサイト「OpenEd」による「最も効果がある教材部門」で第2位にランクイン。音楽と演劇を組み合わせた独自の教育メソッドは全米で注目されている。著書に『アメリカ最先端の英語習得法』(現代書林)。一男の父。一人息子は日本語・英語・中国語を操るトリリンガル。バラック・オバマ大統領の母校ハワイのプナホウスクールを卒業。ドナルド・トランプ氏の母校であるペンシルバニア大学ウォートンスクールに在学中。