ハワイアンジャーナル パルキッズ通信 | 留学, 英会話
2024年11月号ハワイアン子育てジャーナル
Vol.160 | 子どもを英語ペラペラに育てる方法
written by 船津 徹(Toru Funatsu)
※本記事のテキストは引用・転載可能です。引用・転載する場合は出典として下記の情報を併記してください。
引用・転載元:
https://www.palkids.co.jp/palkids-webmagazine/hawaiian-journal-2411
船津徹「子どもを英語ペラペラに育てる方法」(株式会社 児童英語研究所、2024年)
子どもに英語を身につけさせたい、英語ペラペラに育てたい、バイリンガルに育てたい!親であれば誰もが一度は夢見ることでしょう。
グローバル社会の共通語は英語です。子どもに英語力という宝を与えることができれば、進学、就職、キャリア形成など、子どもの人生の選択肢(可能性)は限りなく広がっていきます。
英語の必要性が高まるにつれ人気を博しているのが子どもの「英会話」です。インタースペースが行なった調査(2021年)では、未就学児(3歳〜6歳)の習い事ランキングは、1位スイミング、2位幼児向け通信教育、3位英会話、4位ピアノ、5位体操となっています。
学研総合研究所が行なった調査(2019年)では、小学生(小1〜小6)の習い事ランキングは、1位スイミング、2位学習塾、3位通信教育、4位音楽教室、5位英会話と、やはり「英会話」は人気です。
しかし、ここで冷静に考えてみましょう。「子どもを英語ペラペラに育てたい」→「英会話に通わせる」という選択は正しいのでしょうか?本当に英会話に通わせていれば英語ペラペラに育つのでしょうか?
私は30年以上にわたり、日本、アメリカ、中国で子どもの英語教育に関わってきました。これまでに5000人超の子どもたちをバイリンガルに育ててきましたが、日本で英会話に通って英語が身につく可能性といえば…ほとんどゼロです。
英会話で英語が身につかない理由
残念ながら日本国内で英会話に何年通わせていても英語ペラペラにはなりません。その理由は大きく二つあります。
まず学習時間が圧倒的に足りないこと。英語(外国語)を身につけるには「2500時間前後」の学習時間が必要というのが定説となっています。週1時間の英会話ではまったく時間が足りません。
第二の理由が、日常的に英語を使うことがない日本で「会話中心」の英語学習は現実的ではないこと。香港、フィリピン、シンガポール、マレーシアのように身近に英語を使う環境があれば「英会話」の実践練習を重ねることが可能です。しかし日本でいくら英会話を覚えても実践する場がありませんから、技能が定着しないのです。
日本国内で英語ペラペラに育てるためには「完全英語環境」に浸ることが必要です。すなわちインターナショナルスクールや英語プリスクールに通わなければ無理なのです。インターナショナルスクールに通い、毎日6時間英語の授業を受ければ、6時間×180日(年間授業日数)=1080時間です。目標の2500時間を2年ちょっとで達成です。
この計算はあながち間違っていません。日本からアメリカに移り住んできた子どもが英語力(会話力)を身につけるには、平均2年かかります。アメリカの学校で毎日英語の授業を受け、毎日友だちや先生と英語でコミュニケーションをとっていても、そのくらいの期間、完全英語環境に浸らなければ英語ペラペラにはならないのです。
英会話はスタートではなく、英語学習のゴールである
では海外移住せず、また、インターナショナルスクールに通わせず、日本で英語力を育てるはどうしたら良いのでしょうか?
この答えを知るためには、まず「子どもの英語=英会話」という思い込みを排除しなければなりません。日常的に英語を使うことがない日本で子どもに英語力を身につけさせるわけですから、親が常識を疑う思考(クリティカルシンキング)を働かせる必要があります。
「日本語を自然に身につけるように、英語も英会話からスタートすれば良い」この考えが通用するのは、子どもの周囲に「生きた英語」が豊かにある環境のみです。たとえばアメリカで暮らしていれば、子どもの周囲は英語話者だらけですから、英会話を自然に身につけることができるでしょう。
当たり前ですが「英会話」を身につけるには、英語話者と英語でコミュニケーションを重ねなければなりません。一方通行の会話パターンをいくら覚えても、相手の言っていることが分からなければ「会話」は成立しません。また、自分の考えや気持ちを相手に分かりやすく伝える練習を積まなければ、やはり英語ペラペラになれないのです。
日本国内で「英会話」を育てるには、常識とは「逆」の思考が必要です。すなわち「英会話」は英語学習のスタートではなく「ゴール」と考えてください。英会話というゴールにたどり着くためには、子ども時代に「英語の基礎力」を育てることを優先しなければなりません。
英語はスポーツや音楽の技能習得と同じです。たとえばテニスの試合が楽しめるようになるには、ラケットの握り方を覚え、スイングを覚え、サーブを覚え、相手とラリーを繰り返し練習することが必要です。英語も基礎から始めて、段階的に技能を高めていくプロセスが不可欠なのです。
英語習得のステップ
繰り返しますが、「子どもだから英会話がすぐ身につく」というのは幻想です。子どもであっても英語を身につけるためには、踏襲すべきステップがあります。これらのステップを一つひとつクリアしていくことで、最終的に「英語ペラペラ」というゴールに到達することができます。
私が提唱する「日本で英語を身につける理想のステップ」は以下の通りです。
1)フォニックスで「正しい発音」を身につける
2)リーダーズ(簡単で短い本)の多読でフルエンシーを鍛える
3)留学して「英会話」を実践する
まず「正しい発音」を身につけることからスタートします。子どもは聴覚が大人よりも敏感で、英語の発音を短期間で身につけることができます。一度身につけた英語の正しい発音は「一生使える技能」として定着します。
続いて「英語の本の多読」でフルエンシーを鍛えます。フルエンシーとは早いスピードで流ちょうに読む力です。日本の英語教育最大の欠点が「英語を読む量が足りないこと」です。日常的に英語を話すことがない日本で英語力を育てるには「読書」が最も効果的です。読書を通して英語の全技能を自学自習で伸ばしていくことができます。
そして最終段階として、留学して「英会話」を実践します。英語の発音と読書力が身についていれば、英語圏に留学しても問題なく授業についていくことができます。必要なのはクラスメートや先生とコミュニケーションを重ねることです。留学でハイレベルかつ臨機応変な「英会話力」を身につけることができます。
以上のステップを踏襲すれば、日本の学校に通いながら、受験勉強や習い事(スポーツや音楽など)を犠牲にすることなく、子どもを英語ペラペラに育てることができます!次に各ステップについて詳しく見ていきましょう。
ステップ1:フォニックスで「正しい発音」を身につける
小学低学年(10歳くらい)までの子どもは言語吸収力が高く、英語の「正しい発音」を身につける最適期です。子どもが身につけた「正しい発音」は一生失うことはありませんから、将来、海外留学したり、仕事で英語を話す時に大きな威力を発揮してくれます。
「正しい発音」を身につける上で欠かせないのが「フォニックス」です。フォニックスは英語圏の子どもが「英語の読み方」を学ぶ学習ですが、日本人の子どもにも応用できます。アルファベットの読み方(発音)からスタートして、三文字単語、四文字単語というように徐々に難しい単語が読めるように指導します。
詳細は省きますが、英語は「リズム」を身につけることで習得スピードを向上させることができます。フォニックスを習うことで、英語の正しい発音と英語の「リズム」を身につけることができます。簡単に言えば、英語ネイティブのように「英語が流暢に読めるようになる」のです。
英語が流暢に読めるようになると読解力が向上しますから「読書」を通して効率的に英語力全体を伸ばしていくことが実現できます。最近はフォニックスを教えてくれる子ども向けの英語教室が増えていますので、教室選びの基準とすることをお勧めします。
ステップ2:簡単な本の多読で読解力を育てる
英語の正しい発音を身につけた次のステップが「多読」です。多読と言ってもいきなり分厚いペーパーバックを読むわけではありません。子ども向けに作られた「リーダーズ」と呼ばれる「簡単で短い本」を読む練習をします。
リーダーズは単語や文法に制限を設けて段階的に難易度が上がるように作られた本です。最初は1ページに1〜2行、全体でも16ページ程度の「超簡単な本」からスタートします。各ページにはイラストが含まれていますから、単語力が弱い子どもでも意味を推察しながら読み進めることができます。代表的なリーダーズ(初心者向け)は以下の通りです。
・First Little Readers Parent Pack (Scholastic)
・Sight Words Readers Parent Pack(Scholastic)
・Bob Books Series (Bobby Lynn Maslen)
・My First I Can Read (Harper Collins)
・Step into Reading Level 1〜2 (Penguin Random House)
・Ready to Read Pre Level 1〜Level 1 (Simon Spotlight)
リーダーズには多くのシリーズ、ジャンル、キャラクターがありますから、子どもの興味や好き嫌いに合わせて本を選ぶことができます。お気に入りのシリーズを見つけて「多読」へ導くことができれば、子どもの英語教育は90%成功です。子どもは読書を通して、自分の力で、語彙力、文法力、表現力、リスニング力など、英語の諸技能を伸ばしていくことができます。
ステップ3:留学して「英会話」を実践する
子どもを英語ペラペラに育てる最終ステップが「留学」です。それまでコツコツと蓄積してきた英語の基礎力を大きく飛躍させ「使える英語力」へと引き上げるには留学が最も効果的です。
留学させる時期はティーンエイジャー(13歳〜19歳)が理想ですが、個人的なお勧めは高校時代です。多感な時期に同年代の異文化の仲間と過ごし、多様な価値観に触れることは、子どもの気づきを促し、視野を大きく広げてくれます。また英語圏の高校生活は生涯忘れられない思い出になるはずです。
留学期間は1年間が理想です。留学先はできるだけ日本人が少ない英語圏が望ましいでしょう。留学で得られる経験は子どもの人生の宝となります。英語力はもちろん、コミュニケーションスキル、クリティカルシンキング、そして「自分は世界でやっていける!」という「自信」を得ることができます。
留学の問題は費用ですが、最近は返済不要の奨学金制度も増えてきました。「トビタテ!留学JAPAN」は返済不要の奨学金で海外留学が実現できるプログラムです。経済的に厳しいからと留学をためらっているご家庭では、子どもを奨学金制度にチャレンジさせることを強くお勧めします。
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船津 徹(Funatsu Toru)
1966年福岡県生まれ。1990年明治大学経営学部卒業。教育コンサルタント。米国法人TLC for Kids代表。大学卒業後、金融会社勤務を経て幼児教育の権威、七田眞氏に師事。「パルキッズ」「パーフェクトイングリッシュ」など、しちだ式英語教材制作に従事。2411年ハワイ州、ホノルルにて移民のための学習塾TLC for Kidsを設立。2015年にはTLC for Kidsカリフォルニア州トーランス校を設立。アジア諸国からの移民子弟を中心に4000名以上の子どもの教育に携わる。同氏が手掛けたフォニックス教材は全米で25万人の教師が加盟するアメリカ最大の教育リソースサイト「OpenEd」による「最も効果がある教材部門」で第2位にランクイン。音楽と演劇を組み合わせた独自の教育メソッドは全米で注目されている。著書に『アメリカ最先端の英語習得法』(現代書林)。一男の父。一人息子は日本語・英語・中国語を操るトリリンガル。バラック・オバマ大統領の母校ハワイのプナホウスクールを卒業。ドナルド・トランプ氏の母校であるペンシルバニア大学ウォートンスクールに在学中。