2016年8月号パルキッズ塾
Vol.40 | 休みにスケジュール管理を学ぼう
written by 小豆澤 宏次(Hirotsugu Azukizawa)
※本記事のテキストは引用・転載可能です。引用・転載する場合は出典として下記の情報を併記してください。
引用・転載元:
http://palkids.co.jp/palkids-webmagazine/palkids-juku-1608/
小豆澤宏次『休みにスケジュール管理を学ぼう』(株式会社 児童英語研究所、2016年)
夏休みはいかがお過ごしでしょうか。夏休みは普段の生活リズムとは違い、学習に充てられる時間が増える反面、上手にスケジュール管理をしなければ、せっかく作った学習習慣が崩れてしまうこともあります。うまく使えば普段の取り組みにプラスして、英検対策やなかなか取り組むことができなかったドリルやプリント学習を行うことができるでしょう。もちろん学校から出される夏休みの宿題もこなしていかなくてはいけません。
さて、幼児の場合は基本的に学習管理はパパ、ママが行っているため、夏休みに学習のリズムが崩れることはあまりありません。しかし、私が子どもたちを見ていると、特に小学生の学習のリズムが崩れる場合が多いようです。小学生の場合、幼児と比べて友だちと一緒に遊ぶことも多いでしょうし、今夏世間を賑わせているゲームに夢中になることもあるでしょう。
そこで今回は小学生の夏休みの学習習慣にスポットを当てて、夏休みだけでなく将来的にも非常に重要な「スケジュール管理」を楽しく学べる方法をお伝えしていきます。
| 原因は「何だかたくさんあるな~」
これは大人でも言えることですが、勉強や仕事、家事などしなければいけないことに取り掛かる時に重い腰をあげなければいけない方は多いでしょう。「あ~嫌だけどやらなきゃ」そんなことを思っているうちに時間ばかりがすぎて、結局だらだらと先延ばしになってしまう。私にもそんな経験はあります。小学生の夏休みの宿題はその典型でしょう。夏休みが始まり、宿題をやらなければいけないのはわかっているけれど、まだひとつも終わっていないわけですから「何だかたくさんあるな~」と憂鬱な気分になります。しかし、まだまだ時間がたっぷりある、だから今重い腰をあげる必要がないという考えに至るかもしれません。8月に入ってそろそろ宿題に取り掛からなくてはいけなくなっても、宿題を前にすると「何だかたくさんあるな~」となってしまいます。お盆をすぎてそろそろお尻に火がついてきました。それでも宿題を前にすると「何だかたくさんあるな~」と重い腰がさらに重くなり、結局ママに叱られながらいつ終わるかもわからない状態で宿題に取り組むわけです。
こうなる原因はどこにあるのでしょうか。子どものやる気?学習習慣がついていないこと?パパ、ママがもっと早めにお尻を叩くべきだったこと?いえ、そんなことではありません。原因は「何だかたくさんあるな~」にあります。すべきことの量が「たくさん」と思うと人間誰しも重い腰がさらに重くなるものです。これは部活動の練習でただ単に「走れ」と言われているようなもので、何キロだとか、何分という具体的な数字で示されていない、つまりゴールとゴールまでの道のりがわかっていないことほど辛いことはありません。夏休みの宿題が先ほどのようになってしまう原因は、宿題の量が具体的に見えていないのが原因だったのです。
| タスクを見える化しよう
まず、夏休みの宿題であれ、普段の取り組みであれ、ゴールまでどれだけの取り組み量があるのかを書き出してみます。いわゆる To Do List を作成するわけです。ゴールが見えたところで、その量を取り組む期間で割って1日あたりの取り組み量を導き出します。これで1日の取り組み量がわかりました。1日の取り組み量がわかったところで、その取り組みに対してどれぐらいの時間をかけるのかを算出します。これで1日あたりの取り組み時間がわかりました。普通であればこれで終わりなのですが、これでは面白くありません。実際の生活スケジュールに落とし込まなければ子どもたちは日常生活の中で学習に取り組んでいる自分の姿をイメージすることができません。
| スケジュールを作ろう
次に用意するのがスケジュール帳です。これはぜひ大人が使うような本格的なものを渡してあげましょう。子どもは大人の世界に足を踏み入れた気分になるだけで、ワクワクするものです。オンラインレッスンに取り組まれているわけですからタブレットやPCのスケジュール管理アプリでも良いでしょう。スケジュール帳を選ぶ上で注意すべきは、月間マンスリータイプと呼ばれるカレンダーと同じフォーマットのものではなく、週間バーチカルタイプと呼ばれる縦軸が時間軸になっていて、スケジュールが上から下に向かって時系列にならんでものをお使いいただくということです。週間バーチカルタイプを使うことで、小学生でも1日の流れを具体的にイメージすることができます。<
| 楽しいことも忘れずに
スケジュール帳が用意できたところで、今度は実際にスケジュールを書き込んでいきます。ここで気をつける点は2つあります。1つは、勉強以外のスケジュールも書き込むことです。2つ目は決して子どもだけでスケジュールを決めさせないことです。
1つ目から解説していきましょう。このスケジュール管理は宿題や取り組みをしっかりと行うためのものであるのと同時に、時間を能動的に管理する力を身につけるためのものでもあります。小学生が能動的に行うためには必ず「楽しみ」が必要です。せっかく作ったスケジュール帳が宿題や取り組みばかりで埋まっていたら面白くありません。取り組みにかかる時間なども先に算出しているわけですから、自由時間がどれだけ取れるのかもはっきりとわかっています。そこに遊びや趣味の時間をどう入れ込むのか、そこを決めることで子どもたちは「こんなに楽しく遊ぶことができるんだ!」と楽しくなるわけです。もちろん旅行のスケジュールや学校の登校日などのイベントも入れ込んでできるだけ詳細なスケジュールにしていきましょう。<
| 大人になった気分が大切
2つ目は決して子どもだけでスケジュールを決めさせないことでした。小学生ですからスケジュール帳の使い方さえわかれば自分自身で管理していくことは可能です。しかし、これでは面白くありません。せっかく大人が使うようなスケジュール帳を用意してあげるわけですから、もう一歩踏み込んで大人気分を味わわせてあげましょう。
まず、スケジュールを決める作業を「会議」など実際に大人が使う言葉で表現しましょう。「今日の会議でスケジュールを確定しようね」そんなパパ、ママの言葉に子どもはワクワクするものです。さらに、1度スケジュールを決めたとしても、突発的なイベントができたりすることでスケジュールの変更が必要になる場合があります。そのため、週1回は「進捗会議」なるものを開催してもよいでしょう。
また子どものスケジュールは上司役のパパ、ママも共有し、子どもからスケジュール変更希望の申し出があった場合は、「直属の上司」であるママに報告しサインをもらい、変更の重要度によっては「社長」であるパパのサインが必要といったアレンジをしても楽しいでしょう。
| やらなくてよいことをしなくなる
最後に、スケジュール管理をすることでの最大のメリットは、今日やらなくてもよいことをしなくなるということです。スケジュールを作ることで今日すべきことがわかります。すると今日すべきことだけをやればよいので、必要以上にダラダラと勉強することがなくなります。大人でもダラダラと残業をしてしまう方はスケジュール管理できていない証拠だということで、残業への評価も見直されています。楽しみながらスケジュール管理をして、将来時間を有効に使える大人になるために、今夏から取り組んでみませんか。
小豆澤 宏次(Azukizawa Hirotsugu)
1976年生まれ。島根県出身。同志社大学経済学部を卒業後、米国ボストンのバークリー音楽大学に留学し、音楽家として活動。帰国後は幼児・児童向け英語教室にて英語講師を務める。児童英語研究所所長・船津洋氏に「パルキッズ理論」の指導を受け感銘を受ける。その後、英語教室の指導教材を「パルキッズ」へと全面的に変更。生徒数を大きく伸ばすことに成功する。児童英語研究所に入社後は、年間1,000件以上の母親への指導を行うとともに、パルキッズのオンラインレッスンのプログラムの制作ディレクションを行う。また大人向けの英語素読教材の制作ディレクションも行う。