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2016年11月号パルキッズ塾

Vol.43 | 絵本の暗唱と読解力

written by 小豆澤 宏次(Hirotsugu Azukizawa)


※本記事のテキストは引用・転載可能です。引用・転載する場合は出典として下記の情報を併記してください。

引用・転載元:
http://palkids.co.jp/palkids-webmagazine/palkids-juku1611/
小豆澤宏次『絵本の暗唱と読解力』(株式会社 児童英語研究所、2016年)


「パルキッズって他の教材と何が違うのですか?」お電話や掲示板でお問い合わせいただいた時、私たちは「日常会話の量の多さ」と「読解力育成」とお答えしています。今回はこの中から「読解力育成」にスポットをあてて解説していきたいと思います。


| 日本語発達に見る絵本の暗唱の役割

特集イメージ1 読解力は「パルキッズ」の1日90分のかけ流しで身につけた英語力が消えることなく、お子さま自身が読書によって伸ばしていくのにとても重要な役割を担います。
 まずは、幼児・児童のお子さまが読解力を身につけるためにどういった方法が適切なのかについてです。
 読解力の育て方には、いろいろな方法があります。英語圏で頻繁に行われている方法に、フォニックスやライミングを組み合わせた方法があります。文字や文字の組み合わせと、それらが表す音の関係を学習していく方法です。
 また、サイトワーズのように、単語を文字単位の音の組み合わせとしてではなく、ひとつの固まりとして丸暗記していく方法もあります。
 さらに、国語の教科書の音読のように、繰り返し音読していくことでスラスラと読めるように育てていく方法もあります。  しかし、幼児・児童期に最も自然で、最も効率の良い読解力育成法は、「絵本の暗唱」でしょう。日本人の子どもたちと日本語の絵本の関係をイメージするとわかりやすいでしょう。
 お子さまがいらっしゃるご家庭なら絵本が必ず存在しているはずです。英語の絵本ではなくても日本語の絵本の5冊や10冊は少なくともあるのではないでしょうか。そのごくありふれた、取り立てて珍しい存在ではない「絵本」が読解力育成に欠かせません。
 もう少し子どもたちと絵本との関係を詳しく見てみましょう。
 子どもたちに絵本を読んであげると、お気に入りのものばかり「読んでほしい」と催促するようになります。そして、催促されるがままに同じ本ばかり読んであげているといつの間にか一人でページをめくりながら読んでいる、というような状況を目の当たりにした方も少なくないと思います。
 この段階において、子どもたちは本を “読んでいる”のではありません。一見するとスラスラと読んでいるように見えますが、実際には “読んではいない”のです。彼らは暗唱(文字を読むのではなく、繰り返し絵本を親に読んでもらうことで音を覚えてそれを口にしている状態)していながらページをめくっているだけなのです。それが端から見れば “読んでいる”様に見えるのです。
 この段階を経て、子どもたちは文字を追いながら本を読み内容を理解する読解力を身につけて行きます。
 この方法を英語の読力育成に置き換えたのが「絵本の暗唱」の取り組みです。
 日本語の場合はパパ・ママが繰り返し何度か読んであげれば、子どもたちは暗唱するようになりますが、英語の場合だともう少し時間がかかります。聞き知っている英語の音が日本語のそれよりも少ないからです。そのため数回読んであげるだけでは暗唱するには至りません。
 ご自身が幼少期に、コマーシャルで使われているフレーズなどで耳に残るものがあって、そのフレーズを知らず知らずのうちに口ずさんでいる、という経験をされたことがあると思います。英語の絵本の暗唱の場合は、絵本の読み聞かせの音を繰り返しインプットすることで、それと同じような状態を作っていきます。
 パルキッズプログラムでは読解力育成用の絵本として「アイキャンリード」「アイラブリーディング」に取り組みますが、取り組みにおいてまず「アイキャンリード」であれば1日20分程度、「アイラブリーディング」であれば30分程度かけ流しをしていただきます。
 1日20〜30分、絵本の読み聞かせ音声を繰り返し耳にしているうちに、その内容が耳に残り、無意識のうちに口をついて出てくるようになります。
 この暗唱の取り組みを続けていくと、早い子で50〜100冊ほど取り組めば、自然と文字を読み始めるようになります。
 さらに暗唱を続けると、読める単語がひとつまたひとつと増えて100単語も読めるようになれば、「アイキャンリード」レベルの絵本は初見である程度読めるようになるのです。
 読解力のレベルがこの段階に達したお子さまは、一人読みをする機会がどんどん増し、それに伴って手を伸ばす絵本も徐々に文字数が増え、それとともに挿絵が少なく成り、ページ数が多いものへと移っていきます。
 さらに、何冊も読み進める内に、日本語の絵本と同じ様に、読んだ内容が頭の中でイメージできるようになり、お子さまの年齢や知識レベルに応じた内容を理解するようになります。これが読んで理解する能力、すなわち読解力です。
 そして読めば読むほど読解力は高くなります。この様子は、日本語の本を夢中になって読んで読解力を高めている子どもの姿と同じなのでイメージしやすいでしょう。


| 読解力が育った子どもの英語力

特集イメージ2 さて、パパ・ママが気になる所は読解力が育ったとして、子どもたちの実際の英語力はどの程度なのだろう、というものでしょう。
 実は、この段階での子どもたちの英語力は言語レベル的にとても高いものだと言えます。耳にしたり読むことによってインプットされた英語情報を、そのまま日本語に訳すことなく英語のままイメージで理解することができるのですから。もし、イメージで理解するということがいまいちよく理解できなければ、誰かに「昨日の晩ご飯は何を食べたの?」ときかれた時に、頭の中がどういう状態になっているのかを想像してみてください。
 「昨日の晩ご飯は何を食べたの?」という文字が浮かんでいるのか、それとも昨日食べたもののイメージが浮かんでいるのか、どちらですか?おそらく後者ではないでしょうか。それがイメージで理解している状態に他なりません。
 話を戻します。この段階で子どもたちの英語を理解する過程はネイティブと同じです。
 このように英語が苦手な大人が、辞書を片手に英語を日本語に訳しながら理解するような読解力ではなく、イメージで内容を理解する読解力を身につけた子どもたちにとって、この先必要なことは、もはや外国語としての英語の学習ではなく、母国語である日本語と同じ様に「読書」をして言語力を伸ばすことが中心になります。


| どんな絵本が暗唱に適しているの?

特集イメージ3 幼児・児童が英語の読解力を育てるには「絵本の暗唱」が最も効率の良い方法だということがわかりました。しかし絵本であれば、何でもよいという訳ではありません。暗唱に適したいくつかの条件をクリアしている絵本でなくては長期間にわたって段階的に読解力を伸ばしていくのは難しいかもしれません。
 暗唱用絵本を選ぶにあたってその判断基準となるポイントは5つあります。
 1つ目は「ネイティブによる読み聞かせ音源があるかどうか」、2つ目は「ページ数が少ないかどうか」、3つ目は「繰り返しのフレーズがあるかどうか」、4つ目は「押韻が使われているかどうか」、5つ目は「イラストのタッチや写真などがバラエティに富んでいるか」になります。
 パルキッズ生の暗唱用の絵本には「アイキャンリード」「アイラブリーディング」をご利用いただくとよいのですが、次回は「アイキャンリード」を例にとって、その特徴と上記のポイントをひとつひとつ解説しながら暗唱に適した絵本について話を進めていきます。


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プロフィール

小豆澤 宏次(Azukizawa Hirotsugu)

1976年生まれ。島根県出身。同志社大学経済学部を卒業後、米国ボストンのバークリー音楽大学に留学し、音楽家として活動。帰国後は幼児・児童向け英語教室にて英語講師を務める。児童英語研究所所長・船津洋氏に「パルキッズ理論」の指導を受け感銘を受ける。その後、英語教室の指導教材を「パルキッズ」へと全面的に変更。生徒数を大きく伸ばすことに成功する。児童英語研究所に入社後は、年間1,000件以上の母親への指導を行うとともに、パルキッズのオンラインレッスンのプログラムの制作ディレクションを行う。また大人向けの英語素読教材の制作ディレクションも行う。

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