パルキッズ塾 パルキッズ通信 | 早期教育, 習い事, 音感教育
2022年3月号パルキッズ塾
Vol.107 | 母と子の音感教育プログラム
written by 小豆澤 宏次(Hirotsugu Azukizawa)
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引用・転載元:
https://palkids.co.jp/palkids-webmagazine/palkids-juku-2203/
小豆澤宏次『母と子の音感教育プログラム』(株式会社 児童英語研究所、2022年)
4月1日より『幼児教室プログラム』の提供がスタートします。そして同時にスタートするのが音感教育プログラム『母と子の音感教育プログラム』です。
この『母と子の音感教育プログラム』は30年前にパッケージ版としてリリースされ、今もなお、幼児教室の音感プログラムとして長年採用されているカリキュラムをオンライン版として仕様変更し、教室に通わなくても「おうち」で音感教育ができるようにいたしました。今回はこの『母と子の音感教育プログラム』について詳しく解説していきたいと思います。
さて、音感教育とはどういったものなのでしょうか。一般的に音楽に関わる教育としてみなさんがご存じなのは、ピアノ、そしてリトミックでしょうか。ピアノのレッスンを受けられるようになるのが早くて3歳以降なのですが、その前に、お子様の耳を育てる、つまりピアノなどの楽器レッスンに入る前の準備として、この音感教育というのは非常に重要な役割を果たします。
音感教育は3本の柱でできています。「音感」「リトミック」「名曲鑑賞」です。『母と子の音感教育プログラム』ではこの3つの柱を中心に10ヶ月間のプログラムで構成されています。基本的な学習方法はいたって簡単で、かけ流しと親子で体を使って音楽に合わせて行うリトミック、そして音楽に合わせてフラッシュカードの譜面を見るという取り組みです。
これを行うだけで、お子様の耳は楽器演奏や音楽をより楽しむことができるよう鍛えられていきます。故・七田眞先生の言で、「子どもに必要な習い事は英語・音楽・水泳」というものがあります。英語は『パルキッズ』でできるとして、音楽はこの『母と子の音感教育プログラム』で基礎を作っていきましょう。
3つの柱「その1:音感」
音感というと一般的には絶対音感、そして相対音感という2つが有名です。特に絶対音感は幼児期の音感教育を行う上で、ひとつ身につけたい能力として挙げられることが多いようです。日本では絶対音感至上主義と言えるほど、この絶対音感に対する評価が高いのですが(一部、絶対音感の弊害も謳われていますが、これは特殊なケースであり、絶対音感を持つ全員が日常生活に支障をきたすことはありません)、私が音楽を学んでいたアメリカをはじめとする欧米諸国では、絶対音感よりも、むしろ相対音感が重んじられるケースが多いように思います。
簡単に絶対音感と相対音感を説明すると、絶対音感は「ラ」が「ラ」であることを認識できる力です。440Hzの周波数を「ラ」と認識できるという、いわばチューナーのような力と言えます。一方、相対音感は、文字通り、他の音との相対関係がわかる力です。例えば「ド」が鳴った後に「ミ」が鳴ったとします。すると「ド」と「ミ」の距離感が長三度になることを認識し、長調のハーモニーであることがわかるというものです。鳴っている音が、他の音との距離・位置関係がわかることでより聞いている音楽がどういう音楽なのかを理解できるようになります。
欧米で相対音感が重視されるのは、和音進行が重視される現代音楽において、より音楽的に鳴っている音を理解できることが理由のひとつなのではないでしょうか。
私としてはどちらが良いということではなく、どちらも役割としては異なる力なので、両方の力が持てるのであればそれがベストだと思います。ただ絶対音感は、幼児期でないと身につきませんので、身につけるのであれば幼児期から適切な音感教育が必要になります。
『母と子の音感教育プログラム』ではこの音感教育を、かけ流し・読譜・歌唱で身につけます。普段かけ流されている音を、映像として流れる音符を見ながら歌います。聞くだけではダメです。音符を見ながら歌うことが重要です。こうすることで、音符を見ただけでその音が再現できるようになります。そして最終的には先ほどの逆の、音を聞いただけで音符を書くことができるようになるのです。
3つの柱「その2:リトミック」
リトミックは一般的に幼児期の音感教育に取り入れられているのでご存じの方も多いでしょう。ただ、どちらかというと前段でご説明した音感トレーニングよりも、どちらかというとリズム感を養うトレーニングとしての役割が強いです。
当たり前ですが、音楽には音とリズムがセットになって構成されています。そのため、音楽を楽しむために、そして楽器演奏を行うためには、音感だけでなくリズム感も同時に身につける必要があり、そのためのトレーニングを行うのが重要です。
『母と子の音感教育プログラム』では親子で行う「手あそび」や体を使った「踊り」を収録しています。音楽に合わせて、イラストやインストラクションを見ながら、手あそびをしたり、親御さんがお子様を膝の上に乗せて体を揺らしてあげたりするという取り組みです。
たったこれだけですが、実際に音に合わせて体を動かすことでリズム感が体に染み込んでいきます。先ほどの音感で言うところの歌唱と同様の役割を果たします。
また、音楽とは別に、親子でボディコンタクトをとりながら取り組みをすることで、「抱きしめ」同様に親子関係が良好になります。幼児期に親子で体を合わせながらリトミックを行うことは、音楽だけでなく親子の絆を深めるためにもぜひやっていただきたい取り組みです。
3つの柱「その3:名曲鑑賞」
最後に名曲鑑賞です。音楽は絵と違い、頭で考えて理解する芸術ではありません。どちらかといえば、物理的で、反射的に「良し悪し」がわかる芸術です。誤解を恐れずに言えば、とても簡単に好き嫌いを判断できる芸術と言えるでしょう。同じ様なものに「食」があります。苦いものを食べれば、多くの人が苦いと感じます。音楽も同様で、不協和音を流せば、多くの人が不快に感じます。しかし、ここからが面白いのですが、食と同じように、様々な食べ物を食べるという経験をすることで、「美味しい」と感じる幅が広がっていきます。小さい時は「苦いもの」が嫌いだったのに、大人になったら「苦味」さえも「美味しい」に変わっていきます。感覚が麻痺してきているという意見もありますが、私は経験によって楽しめる幅が広がってきているのだと考えています。
音楽も同様で、幼児・児童期は気持ち良いと感じる協和音は大人のそれと比べてとても狭い範囲に限定されます。
ピアノが近くにある方は「ドミ」と鳴らしてみましょう。大人からすると面白みのない和音ですが、子どもからすると安定した心地よい和音として感じます。次にそこに「シ」を加えてみましょう。「ド」と「シ」が半音でぶつかるので、ちょっとだけ不安定な感じがします。大人はその不安定さを心地よいと感じますが、子どもはそうでありません。さらにオクターブ上の「ファ#」を加えてみましょう。大人でも美しいと感じる人と不協和音と感じる人が分かれるでしょう。これはジャズなどでよく使われる和音です。
つまり、より高度で幅広い音楽を楽しむためには、協和音と感じられる幅を広げることが必要になってきます。それだけ気持ち良いと感じる幅が広がるということですからね。そのためには何が必要なのか、それは「食」同様に「経験」するということです。ハンバーグばかり食べていては舌が経験を積むことはできません。上質なものを幅広く与えることで確かな経験として蓄積されていくのです。
そして音楽でいう経験が「名曲」を聞くということです。『母と子の音感教育プログラム』では一般的なバッハ、モーツアルト、シューマン、チャイコフスキー、ブルグミュラーなど、子どもたちがピアノで弾く様な名曲を収録しています。
これらをプログラムの中で聞くのはもちろんですが、ここに収録されていない様々な名曲を聞かせてあげることで、お子様が「美しい」と感じる音の幅が広がっていきます。そして音楽をより楽しめるようになります。
小豆澤 宏次(Azukizawa Hirotsugu)
1976年生まれ。島根県出身。同志社大学経済学部を卒業後、米国ボストンのバークリー音楽大学に留学し、音楽家として活動。帰国後は幼児・児童向け英語教室にて英語講師を務める。児童英語研究所所長・船津洋氏に「パルキッズ理論」の指導を受け感銘を受ける。その後、英語教室の指導教材を「パルキッズ」へと全面的に変更。生徒数を大きく伸ばすことに成功する。児童英語研究所に入社後は、年間1,000件以上の母親への指導を行うとともに、パルキッズのオンラインレッスンのプログラムの制作ディレクションを行う。また大人向けの英語素読教材の制作ディレクションも行う。