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2023年3月号パルキッズ塾

Vol.119 | 幼児の英語バイリンガル教育3つのルール

written by 小豆澤 宏次(Hirotsugu Azukizawa)


※本記事のテキストは引用・転載可能です。引用・転載する場合は出典として下記の情報を併記してください。

引用・転載元:
https://palkids.co.jp/palkids-webmagazine/palkids-juku-2303/
小豆澤宏次『幼児の英語バイリンガル教育3つのルール』(株式会社 児童英語研究所、2023年)


英語のわからないからやらない問題 さあ、来月から新年度がスタートします。新しく幼稚園に通うお子さま、小学校に入学するお子さま、日々の生活のルーティンに大きな変化が訪れます。そういった変化がある時が取り組みが崩れるきっかけになります。そうならないために何が必要なのか、それはどんなことがあっても無理をしなくてもよく、そして揺らがないベースです。常にそこに立ち戻ればいつものルーティンを継続できる、そんな大黒柱を持っておきたいものです。
 大黒柱を持っていないと、何か揺らぎの要因が起こる度に、都度あれやこれやと悩み、考え、答えを求めなくてはいけません。そうなってしまうと環境をつくる親御さんが疲弊し、それがお子さまに伝わり、「なぜ家族にとって辛いことを必死になってやらなくてはいけないのか」と考えるようになり、結果「やめちゃえ」または「このやり方じゃない」となるわけです。
 「やめちゃえ」は論外ですが、「このやり方じゃない」と別のやり方を採用したとしても、必ず同様の問題が起こります。今、揺らがないベースを作ることができなければ、やり方を変えても作ることはできません。
 さて、今回は新年度スタートに合わせて、揺らがないベースを作るために必要な3つのルールをご紹介します。兎にも角にも幼児のバイリンガル教育では、この3つのルールをまずは押さえておきましょう。


1:遠くを見ながら今を大切に

理解の前に必要なことがある バイリンガル教育を行なっていると、日々気になることといえばやはり「成果」です。親御さんがさまざまなコストを投資して行なっているだけに、少しでも早く目に見える成果を得たいという気持ちは私もよくわかります。多くの講師ですら生徒の成果が見たくて、ついついやってはいけない取り組みをやらせてしまうことも多々あります。講師ですらそうなのに、親御さんであれば尚更です。
 しかし残念ながら幼児期に見られる日々の成果(主にアウトプット)は、まるで蜃気楼のようなもので、成果に見えて実は本当の意味での成果ではありません。お子さまがしっかりと英語を理解しているのとはまったく関係なく、お子さまの性格的要因から出てくるものだからです。こういった日々の蜃気楼的な成果に振り回されてしまうと、親御さんが疲弊してしまい、長丁場のバイリンガル教育を走り切ることはできません。
 そうならないために、本当の成果を定義し、そこを見るようにすることが大切です。本当の成果は読めるようになって以降に見えてきます。小学生で英検準2級がパルキッズのマイルストーンのひとつですが、私はさらにその先の高校生(の早い段階で、または中学生で)で英検準1級をゴールにしていただくと良いでしょう。そこを見ながら日々の取り組みを行うことで、身近に起こる成功または失敗のように思える出来事は瑣末なものに思えます。大丈夫、大丈夫、そう思えるようになることで心に余裕が出てきます。
 しかしそうやって10年先のゴールを見る一方で、今を大切にしていかなければいけません。今を大切にするというのは、日々の取り組みを遂行するということです。ここで重要なのは取り組みのクオリティにこだわらないことです。お子さまが画面を見てくれないこともあるでしょう。集中しているように見えないこともあるでしょう。昨日できていたことができないこともあるでしょう。そういった取り組みのクオリティに囚われないことです。ただ、すべきことをやった、ここに注力していきましょう。


2:バイリンガル教育とは植物を育てることと同じ

単語を知らないから英語がスタートできない? 幼児期のバイリンガル教育でついついやってしまいがちなこと、それは「教える」ことです。声が大きい(本などを出版して発言力のある)先輩ママの成功談を見ると、しっかりと親御さんがお子さまに指導をしているものが多いですよね。バイリンガル教育を長年やってきた私からすると、それは運が良かった(もちろん親御さんの努力もありますが)と言わざるを得ません。過去、そうやってお子さまに能動的に働きかけ、簡単にいえば英語を積極的に教えて失敗した人を大勢見ています。成功した親御さんは、そういった失敗した大勢の方の中から生まれた数少ない成功例です。これはやり方云々ではなく、お子さまが運良く英語嫌いにならなかったことが大きいです。これを読んでいる皆さんには、こういった親御さんの体験談は輝いて見えるかもしれませんが、あまり参考になりませんので、気をつけてくださいね。
 さて、幼児のバイリンガル教育の絶対ルールとして「教えない」というものがあります。では親御さんができることは何でしょうか?それは「言語の環境を作る」この1点に尽きます。言うなれば植物を育てるのと同じです。植物を育てる時に、植物に対して積極的に働きかけをすることはありません。例えば茎を引っ張って伸ばそうとしたり、つぼみを指で開いて咲かせようとしたり、そんなことはしませんよね。
 水をやったり、栄養を与えたり、日に当てたり、寒さ暑さから守ったり、こういった環境を整えてあげることで、植物が持つ自力が遺憾無く発揮できるようにしてあげる、これが基本です。これはバイリンガル教育も同様です。言語の音環境を与えたり、絵本を読んであげたり、オンラインレッスンを一緒にやったり、あくまでもそういう環境を適切に作ってあげることで、お子さまが本来持っている言語獲得の力を発揮させましょう。


3:順番は聞く>読む>書く>話す

読めないから絵本を与えない? 最後にバイリンガル教育の取り組みでの優先順位です。読み書きを中心にやってきた私たち親世代にとって、聞く話すをやることで私たちとは違う本当の英語力を身につけられるのでは、と思っている方がいまだにいらっしゃいます。そのため、お子さまの英語教育も、話すを重要視したり、また時々私たちがやってきた学習法も大事だろうということで、書かないと身につかないのでは、と思っている方もいます。
 バイリンガル教育では、取り組みの優先順位は、聞く>読む>書く>話すです。ここはしっかり覚えておいてください。順を追って説明します。まずは聞くから。聞くというのは理解するということではありません。英語の音から単語単位で切り出せることを言います。昔、ディクテーションという英語学習方法がありましたが、英語の音を聞いて、それを書き出すことができる(幼児の場合は頭の中で)ことだと考えていただくとよいでしょう。
 次が読むです。ご存知のように、言語獲得で重要なのはインプットです。インプットソースとしてまずあるのが家庭内の会話です。しかし会話だけだとインプットソースとしては足りません。生活言語レベルから学習言語レベルへと言語レベルを成長させるには、やはり読んでインプットを行うことが必要になってきます。そして読むためにはまずは文字を音声化する読力、そしてそこに理解が伴う読解力へと繋げていきます。
 そしてその次が書くです。書くというのはパルキッズでは主に読めるようにするためのトレーニングとして採用しています。しかし英検3級以上からライティングの問題が出題されることから、少しずつ自分の考えを書いてアウトプットする力が求められていきます。とは言ってもいきなり書けるようになるわけではありません。最初は正しい文章を模写していき、それを自分なりにアレンジをして文章が書けるようになっていきます。
 最後が話すです。これが最後というのがしっくりこない方も多いかもしれませんが、親御さんが求める話す力というのは、お子さまが英語でネイティブと意見交換をしている姿でしょう。単純に英語を口にするということであればクラスルームイングリッシュでも可能ですが、それは本当の意味での話すということではありません。ネイティブと自由にディベートするには、単純に英語力ということだけでなく、知識も必要になってきます。しっかりとインプットをし、自分の意見を持ち、それを英語でアウトプットできる力が必要になります。私は英検準1級に合格してから英語で話す場を設けてくださいとお伝えしています。それぐらいのレベルになれば、自分の意見を英語で伝えることは十分可能です。そういう形でのネイティブとのコミュニケーションの場を設けることは、コストパフォーマンスが高いといえます。


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プロフィール

小豆澤 宏次(Azukizawa Hirotsugu)

1976年生まれ。島根県出身。同志社大学経済学部を卒業後、米国ボストンのバークリー音楽大学に留学し、音楽家として活動。帰国後は幼児・児童向け英語教室にて英語講師を務める。児童英語研究所所長・船津洋氏に「パルキッズ理論」の指導を受け感銘を受ける。その後、英語教室の指導教材を「パルキッズ」へと全面的に変更。生徒数を大きく伸ばすことに成功する。児童英語研究所に入社後は、年間1,000件以上の母親への指導を行うとともに、パルキッズのオンラインレッスンのプログラムの制作ディレクションを行う。また大人向けの英語素読教材の制作ディレクションも行う。

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