2024年8月号パルキッズ塾
Vol.136 | 怒ったっていいじゃない。アンガーリリースをもっとやろう
written by 小豆澤 宏次(Hirotsugu Azukizawa)
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引用・転載元:
https://palkids.co.jp/palkids-webmagazine/palkids-juku-2408/
小豆澤宏次『怒ったっていいじゃない。アンガーリリースをもっとやろう』(株式会社 児童英語研究所、2024年)
梅雨が明けて真夏真っ盛り、夏休みも相まって、親御さんにとっては8月は大変な時期になります。ただでさえイライラするこの時期に、ついつい家の中で怒ってしまうなんてことありませんか?そんな私もご多分に漏れず、イライラしては家族に八つ当たりしてしまうこともあります。八つ当たりしてもいいことはありません。反省をしてズーンと沈んでしまいます。
なぜ冒頭からこんな話をしているのかというと、先日からある調査をおこなっていることに起因します。それは幼児・児童を持つ30代、40代の親御さんがどういった情報をウェブから収集しているかという調査です。てっきり塾や習い事、それから進学先といったわが子の教育関連の情報検索が多いのかと思いきや、結果はずいぶん斜め上のものとなりました。
その世代(私も含めて)の親御さんが関心が高いのが「アンガーマネジメント」だそうです。アンガーマネジメントというと、怒りのコントロールのやり方です。感情をコントロールしたり、心理的なトレーニングで、企業研修などでもよくあるやつですね。
単純ですが、アンガーマネジメントの情報収集が盛んに行われているということは、それだけこの世代の親御さんが怒っていることに他なりません。そしてそれは「良くない」と考えて、なんとかしたいと思っているわけです。もちろん怒りの矛先は、家族だけではないでしょう。丁度、働き盛り、中間管理職なわけですから、上司や部下に対する怒りもあるでしょう。ちなみに私の友人ママは、子どもに対してついつい怒りを向けてしまうことに罪悪感を感じ、どうすればよいのかという相談をよく受けます。確かに所構わず怒るというのはどうかと思いますが、怒るってそんなにいけないことなのでしょうか?
怒ることってそんなに悪いこと?
人には喜怒哀楽という感情があります。生得的に持っているこの感情に良いも悪いもありません。喜楽は良くて、怒哀は良くないなんてことあるはずがありません。喜怒哀楽をしっかりとアウトプットしてこそ人間です。もちろんですが、所構わず、TPOお構いなしに喜怒哀楽をアウトプットして良いということはありませんが、腹が立てば怒ったっていいじゃないですか。「大人だもん」「私の立場では」「どっちかって言うとこっちが悪いし」といったロジックは置いておいて、腹が立ったらそれをリリースしても良いと私は思っています。
ちなみに私が怒る場合はどうするのかというと、「わー!」とか「何でだ!」とか「も~!」といって特に意味もない言葉を大声で言うことが多いです(笑)お恥ずかしい限りですが…。でもそれだけです。ダラダラと怒ったりはしません。出す時は、思いっきり出す、これだけです。
では怒ることにどんな意味があるのでしょう?もちろん、自分の感情を素直に外に出すことで、自分に無理をさせることはないのでストレス緩和にはなるでしょう。それはそれとして大切ですが、一番大切なのは、自分が今怒っているということを周囲に知ってもらうということです。「あ、怒ってる」と周囲が感じることが大切なのです。暴言を吐いたり、手を出したりすると周囲の人を傷つけてしまいます。これは絶対ダメですが、上記の様な形で怒りをリリースするのは問題ないと思っています。もちろん周りの人は若干引きますが…。アンガーはマネジメントするよりも、リリースした方が良いと思っています。アンガーリリースしたっていいじゃないですか。
「怒る」ことと「メッセージを伝える」こと
一般的に「怒る」というのは2つのことを同時に行なっているということをご存知ですか?例えば「子どもが朝寝坊をして起きてこない」としましょう。そんな時「朝の忙しい時間に手間をとらせて」とイライラしますよね。すると「起きないと遅刻するでしょ!あなたはいつもそう!昨日も起きなかったら朝ごはん食べられなくて、泣きながら学校にいったじゃない!なんでいつも同じことを…」といった具合に怒りに任せて伝えるべきメッセージをぶつけてしまうわけです。ここでは、「子どもに対する怒り」「寝坊すると大変である」という2つの伝えることが同時に行われています。これが良くないのです。
大原則として人に何かを伝える時は「怒らない」ということがあります。テレビのコメンテーターでも、政治家でも、怒っている人の言うことは伝わってきませんよね。だって怖いですよ。怒っている人が目の前にいると。すると共感しようと思っても共感できません。だから理解しようという気にならないんですね。だからといって怒るなと言っているわけではありません。怒ることと、メッセージを伝えることを分けましょうということなんです。
上記のようなシチュエーションでは、「もう!」とか「何で!」といって、まず怒りをリリースします。これで周囲には怒っているということが伝わり、ご自身も怒りをリリースできます。ここにはメッセージがないので、短くて済みます。次に一息ついたところで伝えたいメッセージを淡々と伝えます。
想像してください。これ、ちょっと怖いですが、伝わりますよ。私も昔レッスンをしている時に、よくやったものです。
「羞恥心」と「べき」を捨てる
アンガーマネジメントをやっていたり、日本人ですから怒りを表現することに抵抗ある方に、うまく怒るためのポイントを最後にご紹介します(別に私が怒りの専門家というわけではありませんが…あくまでも私が心がけているということで)。
それは「羞恥心」と「べき」を捨てることです。日本にいるとなかなか見かけませんが、海外に行くと「よくそんなことで怒れるなあ。恥ずかしくないのかな?」という場面に度々遭遇します。例えば、明らかに自分が悪いのに、注意の仕方に対して怒っていたり…。まあそれは行き過ぎとして、こんなことで怒ったら恥ずかしいんじゃない?という理性が働くのが日本人なのですが、そこに必要以上にブレーキをかける必要はないと思います。怒りの感情が湧き起こったら、Let it out!です。
さらに、大人なら我慢す【べき】とか、親なんだから我慢す【べき】とか、子どもでもそうです。お兄ちゃん・お姉ちゃんなんだから我慢す【べき】という【べき】は忘れちゃいましょう。
繰り返しますが、怒りはネガティブなだけの感情ではありません。人間として当たり前の感情です。それを出すことも悪いことではありません。ただ、それで人を傷つけたり、攻撃することは余計です。ただ、自分は怒っているということが周囲にわかるように、感情をリリースするだけです。そしてその後、伝えるべきを伝え、正しくコミュニケーションを取ることができればよいのではないでしょうか。今回は恥ずかしながら自説を展開してしまいましたが、もしみなさんの参考になれば幸いです。
小豆澤 宏次(Azukizawa Hirotsugu)
1976年生まれ。島根県出身。同志社大学経済学部を卒業後、米国ボストンのバークリー音楽大学に留学し、音楽家として活動。帰国後は幼児・児童向け英語教室にて英語講師を務める。児童英語研究所所長・船津洋氏に「パルキッズ理論」の指導を受け感銘を受ける。その後、英語教室の指導教材を「パルキッズ」へと全面的に変更。生徒数を大きく伸ばすことに成功する。児童英語研究所に入社後は、年間1,000件以上の母親への指導を行うとともに、パルキッズのオンラインレッスンのプログラムの制作ディレクションを行う。また大人向けの英語素読教材の制作ディレクションも行う。