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2016年03月号特集

Vol.216 | どうなる?「受験」と「英語」

誰が本当に使える英語を与えることができるのか?

written by 船津 洋(Hiroshi Funatsu)


※本記事のテキストは引用・転載可能です。引用・転載する場合は出典として下記の情報を併記してください。

引用・転載元:
http://palkids.co.jp/palkids-webmagazine/tokushu-1603/
船津洋『どうなる?「受験」と「英語」』(株式会社 児童英語研究所、2016年)


 日本の「18歳人口」は、第一次ベビーブームに生まれた人たちが18歳になった昭和41年に250万人弱をマークした時点で大きなピークを迎え、その後一旦減少します。そして、その四半世紀後、第一次ベビーブーマーの子どもたち、つまり第二次ベビーブーマーたちが205万人に到達した平成4年から今日に至るまでのおおよそ四半世紀に渡りコンスタントに減少し、現在では120万人前後で推移しています。
 高校卒業率は、ここ40年ほど9割弱で推移している一方、大学(短大を含む)進学率は同じ期間で45%から60%へと緩やかに上昇しています。中でも短大進学者はピークの25万人から、現在では6万人まで減少しているので、女子が短大ではなく四年制大学へ進学する傾向が増えていることが見て取れます。ちなみに女性の比率が高い印象(勝手な)のある上智大学では、昨年に男女の比率が逆転し、ようやく女子学生数が男子学生数を上回るようになったようです。
専門学校と高専も含めると、18歳人口の8割が高校卒業後に何らかの学校へ進学していることになりますが、大学の進学率は同人口に対して55%で先進国の中では低い方です。とはいえ本誌を読まれている皆様のお子様たちは、大学へ進学することになることはほぼ間違いないでしょう。
 言語学の世界では、もちろん音声も文字も取り扱うのですが、文字はどちらかと言えば脇役で、音声が主役という印象を受けます。
 さて、そんな大学進学事情ですが、大学入試といえばまず「センター試験」。そのセンター試験のあり方が2020年から変わるということがニュースになったりしています。ところで、国公立大学と私立大学の「学生数」を比較すると、学部ではおおよそ1対5(大学院を含めると1対3)の割合です。つまり、新入生60万人のうち、国公立大が10万人で、残りの50万人は私立大へ進学していることになります。私大へ進学する場合にも「センター試験利用枠」はありますが、誤解を恐れず言ってしまえば、「私大へ進むのならセンターは記念受験程度」という意識の学生も少なくありません。平成26年度の大学進学者数が61万人で、そのうちの50万人が私大へ行っていますが、同年度のセンター試験志願者数が56万人であることを考えれば、やはり記念受験の感はぬぐえないでしょう。


| センター改革と外部試験

 もちろん、国公立大学への進学を希望するならば、センター試験の変革は大いに受験対策に影響します。しかし、旧帝大に合格するような2万人程度の学生たち(国公立大進学者の2割強)には、センター試験程度は軽くクリアできる学力があります。つまり、センター試験改革によって大きな影響を受けるのは、地方の国公立大学へ進学する8万人、進学者全体の13%ほどだと考えられます。難関私大では独自の選抜試験を用意しているので、今も昔も学生たちは、いわゆる『赤本』などで各大学の過去の入試問題との格闘を余儀なくされるわけです。
 つまり、地方の国公立大学への進学を希望する学生以外にとっては、センター試験改革はそれほど大問題ではないことになります。それよりも、各私立大学で独自に採用している基準が気になるところではないでしょうか。例えば、英検準1級や1級の保持者に対する、英語試験の免除をはじめとした優遇措置や、最近しばしば人口に膾炙するTEAP(※1)利用の受験校情報など、現実を見据えておく必要があるでしょう。
英語の音韻論的な知識がなければ、英語の音声は「英語らしい音の連続」としてしか認知されません。つまり、言葉として聞き取れないわけです。そのため、フォニックスでまず「英語の音」の学習をすることが、英語の聞き取り能力に貢献することに間違いはないでしょう。
 そして、英語の音韻論的知識を身につけることによって、英語の音声は、意味のある単語の連続として認識されるようになるのです。
 ただ、日本の英語教育では、この点が著しく欠落しています。そのため、英語を日本語の音韻論的な知識でもって処理しようと試みるのです。もちろん ‘f’ や ‘th’ 、’r’ の発音などは、お慰み程度に紹介されます。しかし、日本語よりはるかに音数の多い「母音」に関しては、ほとんど顧みられることがありません。
 ちなみに私自身も受験してみたのですが、TEAP は英検の準1級程度の内容に加えて直感的な読解力や文章構成力、さらには面接試験で口頭におけるコミュニケーションの能力なども測られるようになっています。”Test of English for Academic Purpose” というだけあって、大学での英語で開講される授業への対応力が試されるテストです。青学、法政、理科大などでも続々と取り入れられることになっているので、本命や滑り止めでこれらの大学を受験する可能性のあるご家庭では要チェックでしょう。
※1:TEAP 上智大学と公益財団法人日本英語検定協会の共同開発によるアカデミックな場面での英語運用力測定テスト。


| 高校生の英語力

 文科省では、高校生に対しては英検2級ないし準2級、中学生に対しては準2級ないし3級を英語力の達成目標としています。なるほど「英検準1級でセンター英語は見なし満点」などの措置が行われている学部もあるようで、生徒の英語力の判断基準にしやすい外部試験で英語力を暫定的に認定する方向性もあるようです。
 ところで、そんな受験生の英語力ですが、実際の所どうなっているのでしょうか。*『平成26年度 英語力調査結果(高校3年生対象)の速報』(文部科学省)によると、「四技能全てに於いて課題があるとともに、特に話すこと、書くことについて課題が大きい」と結論づけています。
 具体的に調査の結果に目を向けてみましょう。
 この調査では、CEFR(※2)の言語運用力をベースに英検のレベルを引用しながら成績の分布を表しています。高校卒業時に目標とされている英検2級をCEFRのB1、準2級をA2、英検3級をA1と紐付けています。ちなみにCEFRのB1では、「身近な事柄に関する明確で標準的な会話を理解できる。時事や関心事に関するメディア放送の概要を理解できる」となっているので、英検2級でそこまでできるかどうかの疑問は残りますが、まぁ、近からずとも遠からずの紐付けと考えて妥当でしょう。
  参考までに、CEFRRのB2は英検準1級レベル、C1は英検1級レベルとされ、ここまで来ると「努力することなくテレビや映画を理解できる」、「言葉を探していることを悟られることなく流ちょうに表現できる」、「詳細なレポートやエッセイをスタイルを選びながら書くことができる」となっています。これもレベルとしては妥当な線でしょう。
 さて、件の高校3年生の英語力です。この試験は高3の1学期終了時に行われるので「高校卒業時の能力」とするのは少々厳しいのですが、結果は惨憺たるものでした。
高校卒業時の目標である、B1(英検2級含む)以上レベルの達成率は、読むことに関しては2.2%、聞くことが2.3%、書くことは0.7%、話すことに関しては1.7%、単純に平均を取ると達成しているのは上位1.7%となっており、目標には遙かに届いていないようです。
 同じく、高校生の平均的英語力の目標値である英検準2級レベル(CEFRのA2レベル)の達成率を見ると、読むこと25.1%、聞くこと21.8%、書くこと12.8%、話すこと11.1%で、これも単純に平均を取れば18%と数値はかなり上がるのでほっとしますが、それでも、高校卒業の目標値に届いている子は、上位のB1と併せても生徒全体の2割に満たないことになります。残りの8割は英検3級かそれ以下のレベルの英語力、つまり中学校卒業時レベルの英語力しか無いことになります。驚きなのは、話すことにおいては13%が、そして書くことに至っては30%が「0点」なのです。笛吹けど踊らず…、日本人の英語力向上はいつまで経っても「茨の道」の様相を呈しているようです。
※2:CEFR(Common European Framework of Reference for Languages)ヨーロッパ言語共通参照枠。語学力を評価する国際的な基準。


| やはり英語力

 高校3年生の段階で、英検2級以上の英語力保持者が2%未満、英検準2級以上と合わせても20%未満というのは、あまりにもお粗末な数値です。一体全体、今時の高校生は勉強しているのか?と疑いたくなってしまいます。
 10年ほど前に「大学全入時代」が幕を開けてからというもの(それ以前からですが)中学生の英検受験者数は減少傾向です。当たり前です。勉強しなくても「全入」できるのですから、なぜ勉強なぞするものですか。
先ほどの高3の英語力の現実を、既述の大学入学事情と併せて見てみましょう。
 昨今の日本の大学入試事情をみれば一目瞭然ですが、「英語力はどうでも良いよ」という大学などありません。逆に「英語ができるなら来てね」といった姿勢の大学が多いのです。極論すれば、「私大入試においては英語の偏差値で進学できる大学が決まってしまう」と言っても過言ではないでしょう。
  旧帝大や早慶上智と同等、さらに関東でいうMARCH(※3)レベル以上の大学へ進学する学生が18歳人口の1割程度です。すると、B1(英検2級)以上の層は、まずまず安心。できれば、B2(英検準1級)を取っておけば、MARCH以上は余裕でしょう。しかし、上位2割のA2(英検準2級)以上の層では、MARCHレベルに行ける学生は半分以下になり、大半はいわゆる日東駒専(※4)レベルということになります。
 それでも、彼らはしっかり勉強している方です。なぜならば、高校生の8割以上を占めるA1(英検3級かそれ以下)レベルの子どもたちも、かなりの割合(3~4割)で大学へ進学するのです。なんと言っても、全入時代ですから。つまり、大学で中学レベルの英語を教える羽目になる気の毒な教授も存在する、というのが日本の高等教育の現実なのです。
※3:MARCH(M:明治大学、A:青山学院大学、R:立教大学、C:中央大学、H:法政大学)※4:日東駒専(日本大学、東洋大学、駒澤大学、専修大学)


| 中学受験にも英語

 上記の調査では、高校生の6割が「英語に対する苦手意識」を持っているようです。それはそうです。中学レベルの英語力しかない大半の生徒にとっては、授業を英語で行うといわれても、苦手意識ばかりするようなものでしょう。なぜ、高校の英語の授業を英語で行うのか、この点に関してはロジックがあるのですが、どうしても「つじつまを合わせたらしわが寄った」感が拭えない程度のロジックです。それに振り回される現場の教員の方々や生徒たちを思うと、気の毒で仕方がありません。しかし、お上が決めたことは決めたことですので、今後この現状を抜け出せるかどうかは別として、現在の方向で英語教育が推進されるでしょう。
 「それでは困る」と考える向きはどこにでも居るものです。早めに英語をやっつけてしまう、中学生のうちに準1級くらい取得してしまえば、日本の大学受験は「楽勝」の可能性が高い、と理解する人たちが居るのです。すると何が起こるか。そうです、英語教育の前倒しですね。小学校で行われている英語の授業も、現在の「評価対象外」から「評価対象」教科へと変わります。通信簿に点数が付くわけです。するとどうなるでしょう?簡単な話です。中学入試における「英語力考査」の事実上の解禁となるのです。
 中学入試は、過去には国語・算数の2教科受験も行われていましたが、今日では国・算・理・社の4教科で行われます。そんな中、「帰国子女枠」として英語力を評価する中学も増えており、国・算・英の3教科受験などという学校も出てきます。こうなると、高校入試や大学入試と同じ様相です。
 そして、小学英語が評価対象になることによって、中学受験に堂々と「英語」が加わるようになるのです。公立の中高一貫校などでも「英検」や「学外活動」を入学考査の対象とする学校が既にありますが、大手を振って英語の試験を課せるようになります。大学入試をゴールとしている中高一貫校からすれば、これほど有り難いことはないでしょう。なぜなら、入学の段階で「難関大進学候補生」と、そうでない学生の振り分けを「英語」というキーワードを通して実施することすら可能となるからです。


| グローバル化

 グローバル化の名の下に、日本の教育システムの中での英語教育の重要性は増すばかりです。個人的には(特に西洋優位の)文化の均一化、あるいは多様性の消滅を強力に推進しつつ、さらなる二極化を育むグローバル化には、好感を持てません。しかし、日本もその波に飲み込まれ、仕舞いには荷担するようになっているようです。政治の世界でも教育の世界でも、熱に浮かされたかのように「グローバル」「グローバル」と連呼されています。好悪の感や事の善し悪しは別として、グローバル化の中で我々(特にこれからの子どもたち)は、生きていく羽目になるのです。
 「グローバル化で世界に出て行かなければならないので、日本人にも英語力が必要になる。だから、学校での英語教育も従来型の受験対策英語から実用的な英語に変えねばならない。」と、ここまでは仮に良しとしましょう。しかし、その後に提示されているメソッドがクッキリしないのです。「英語でディベートできるようにする。英語で論理的思考ができるようにする。」など、目標は高らかに掲げられますが、その達成に向けての具体的でしかも達成可能性の高い道筋が見えてこないのです。
 例えば、グローバル化に向けての人材育成と「英語で授業をする」ことの因果関係がよく見えません。また「ディベートする」という点ひとつとっても、「和を以て云々」「男は黙って云々」を尊ぶ日本の文化とはなかなか相容れません。また、マスコミやSNSなどの影響で深く思考する機会が減り、個人の思考力を基礎にするコミュニケーションよりも「グループ帰属感」だけで満足できる「今時の若者」たちには、意識的に相当な訓練を積まなければ論理的な思考はできないでしょう。
 そして、それら「論理的思考」や「地に足の付いた議論」と「中高生の英語の授業」を安直に結びつけてしまう。しかも、中学レベルの英語すらままならない生徒たちに、学校でのこれらの授業を通してグローバル社会に必要な英語力の獲得を要求する…。なかなか一筋縄ではいかない予感がするのは、私だけではないでしょう。それが今の日本の現実なのです。
 しかし、我が子の育児に責任を取らさせるのは、国ではなく親です。結局、学校教育のツケは親に回ってくるのです。それではどうしたら良いのか?これまた簡単な話です。「自分のことは自分でする」それが自由の対価ですので、自分のこと、つまり子どもの教育も、学校に任せるのではなく、周囲に流されるのではなく、責任を持って自分で方向付けていけば良いのです。

 さて、今回は皆様に、お子様たちに近い将来かならず訪れる「受験」について書いて参りましたが、決して恐れることはありません。逆に今がチャンスなのです。英語はさっさとやっつけてしまいましょう。そして、お子さんの専門の方向を見つけて希望する大学(できれば旧帝大あたり)に進学させることを、当面の目標に据えてみるといかがでしょう。
 学力や学歴がすべてではないことは、言うまでもありません。しかし、不透明感を増す社会、ICT技術の進化で日々変化する産業形態やそれに伴う不安定な雇用の現状は、厳しさを増す一方でしょう。そんな未来を生き抜くために、子どもたちには「優れた頭脳」を”とりあえず”プレゼントしておくのが賢明でしょう。
 現在取り組んでいる英語教育は、そんなお子様たちの将来への第一歩だと考えていただき、くじけることなく淡々と取り組んでいただけることを祈っております。


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プロフィール

船津 洋(Funatsu Hiroshi)

株式会社児童英語研究所 代表、言語学者。上智大学言語科学研究科言語学専攻修士。幼児英語教材「パルキッズ」をはじめ多数の教材制作・開発を行う。これまでの教務指導件数は6万件を越える。卒業生は難関校に多数合格、中学生で英検1級に合格するなど高い成果を上げている。大人向け英語学習本としてベストセラーとなった『たった80単語!読むだけで英語脳になる本』(三笠書房)など著書多数。

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