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2016年12月号特集

Vol.225 | 続々・船津流「育児論」

その四、わが子にいろいろな経験をさせていますか?

written by 船津 洋(Hiroshi Funatsu)


※本記事のテキストは引用・転載可能です。引用・転載する場合は出典として下記の情報を併記してください。

引用・転載元:
http://palkids.co.jp/palkids-webmagazine/tokushu-1612/
船津洋『続々・船津流「育児論」』(株式会社 児童英語研究所、2016年)


 10月に本誌(パルキッズ通信)上に愚生の育児観の一端を書き連ねたところ、ダウンロード数が思いの外伸びているのに気をよくして、翌11月号では続編を書いてみましたが、なんと引き続き読者数が増えているとのこと。英語教育を専らのテーマとする本誌で、こんな記事で良いのだろうかと思いつつも、ご要望があるならばと、今月もキーボードを前にしているところです。
 前回までで、育児における心がけ「五カ条」中の3番目まで書き進めたので、今回は4番目「経験させよ」の条を認(したた)めます。


| 経験がものを言う

特集イメージ2 「経験させろ」などというと、少し前に流行った、野外型や実験型の体験学習などを思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれません。ひと昔前に比べ、日常生活の中で、自然の不思議を体験したり、物理現象を観察したりする機会が減っているのでしょう。そこで、教科として理科に触れさせるのではなく、人工的とはいえ実体験の中でいろいろな体験学習をさせようという、ごもっともな考え方です。俯瞰すれば、人工的に自然を、というあたりが珍妙な感じもしますが、何事もさせないよりは、させた方が賢明です。
 この点、我が家では「経験させる」といっても、どちらかというと、勉強に直接関わらないこと、言ってみれば人間力とでも呼ぶべき豊かさを身につけさせるために、様々な実体験をさせることを良しとしてきました。といっても、何もややこしいことではありません。どうせ生きるのならば、何でもできて、いろいろなことを知っている方が良いでしょう。
 「仕事がデキる男」になることはもちろんですが、我が家の男子2人にはその点以外を重視した育児を実践して参りました。
 例えば、日常のこと、炊事・洗濯・掃除に日曜大工はひと通りできる。また、非日常の旅行ともなれば、各種予約や手続きも自分ででき、旅の予定も効率よく立てられ、旅先の現地情報も豊富で、臨機応変にトラブルにも対応できる。そして、四季のスポーツや楽器演奏もたしなみ、豊富な趣味を楽しむことができる。学校や仕事においては、段取り良く、効率良く目標をこなしていくための豊富な情報があり、それをさらに豊かにするような姿勢を常に持っている。一人で仕事ができるのと同時に、皆の力を統合できるようなコミュニケーションスキルも身につけている。…そんな人間に育ててやれば良いのです。
 整理すると、1)家庭内の日常のことができる力、2)楽器演奏をはじめとした趣味や、シーンごとのスポーツを楽しめる能力、3)学校などの社会でのタスクの遂行力とそれを下支えする情報力、そして最後に4)として、1~3)を十二分にプラスの要素として活用できるコミュニーション能力です。
 上記項目の涵養(かんよう)に繋がることを、たくさん体験させてあげましょう。平たくいえば、日常の当たり前のことをこなした上で、よく学びよく遊べ、さらにコミュニケーション力を身につけよ、ということです。
 ちなみに、日常生活、趣味やスポーツ、情報収集とタスク遂行、これらは人間力を伸ばすと共に、すべてコミュニケーション力の育成にも繋がっています。そして、最終的にコミュニケーション力を身につけることで、自ら保持する人間力を余すことなく発揮することができるようになるのです。


| 日常のこと

特集イメージ3 まずは、アタリマエの日常のことから始めましょう。朝、自分で起きて、顔を洗って歯を磨き、朝食をとったり身だしなみを整えたりして家を出る。帰宅したら、靴をそろえて手洗いうがい、食事に入浴、翌日の準備です。これらは、大人になれば当然のこととして自分で行いますが、なるべく早い段階で「自分でできることの幅」を広げてやることが大切です。
 小学校に上がる前には、少なくとも自分のことは自分でできるようにさせましょう。その上で、家族の一員としてのタスクの分担の幅を広げていきます。
 たとえば、食事の準備を見てみましょう。もちろん、いきなり調理させるわけにはいきません。日常のこととして、箸や取り皿、コップや茶碗などのテーブルセッティングを「自発的」にできるようにする、食事が終わったら「無意識」のうちに自分の茶碗は流しへ持って行くなど、アタリマエのこととして習慣づけてやりましょう。年齢が上がれば、皿洗いをさせたり、時間のあるときには食事の準備をさせたり、そのような体験を通して、包丁の使い方、調理の段取りなどが、自然と身についていきます。少なくとも、ご飯に味噌汁、あと数品くらいは自分で作れるように育ててやるのが、子どものためです。もはや「男子厨房に立たず」などと言っていられる時代ではないのです。
 日常のことといえば、あとは洗濯や掃除があります。
 洗濯物に関しては、脱ぎ捨てにするのではなく、洗濯かごへ入れるなり、部活などで汚れがひどい場合には、自分で判断して軽く汚れを落としておくなり、そんなアタリマエのことです。弁当箱も同様で、流しに出してざっと流すなり自分で洗うなり、そのくらいのことは「考えなくとも身体が動く」くらい、自然にできるように育ててあげましょう。
 掃除はなかなか子どもたちが手を出しにくいかもしれませんが、部屋の片付けや、ゴミ捨てくらいはできるでしょう。また、食卓をふきんで拭くくらいは小学生にもなればできるはずです。どんどん経験させて、それこそ勝手に身体が動くまで習慣づけるのです。
 ちなみに、これらは我が家の子育てにおいては、倅たちが小学生の頃にはできたことでもあり、徹底できなかったことでもあります。ただ、中学生になったら、それらは自然と徹底するようになりました。おかげで随分親の負担も軽減されました。
 ボーイスカウトにでも放り込めば、先輩たちの指導を受けながら、身についていくことでもありますが、それとは別にやはり経験の一環としてさせると良いでしょう。
 ところで、このような家事を「お手伝い」と考えることもできますが、そうなると非日常になってしまいます。というのも、「手伝う」とは本来、人の作業に手を貸すことですから、「家事を手伝う」というのは「家事の分担」とは異なります。
 今や共働きがアタリマエのこの国の家庭環境。母親が家事担当者である、という考え方は捨てて、たまたま今までは母親が皆の雑務を一身に背負ってくれていたのだ、と考えてみるのです。家族の一員として、自分のできることまで母親に負担をかけるのは、いかがなものでしょう。幼児期などは別として、できることが増えれば家事の分担も自然と増やす、つまり、本来自分がやるべきことを、母親の手から取り戻すのだと考えるべきではないでしょうか。
 また、家事の作業分担は「しつけ」の一環と考えることもできます。子どもを一人前の人間として社会に送り出すための家庭教育と考えれば、「家事の分担」はプラスαのことではなく、親が子どもに経験させるべきことであるのは自明でしょう。


| 趣味やスポーツ

特集イメージ4 学生時代は勉強が良くできて、社会に出れば仕事ができる。その上で、様々な物事に興味を持つことが、人生を豊かにしてくれます。私自身、年齢を重ねるにつれて、また大学に戻り日々新しいことを知るにつけて、ひとつのこと、ちょっと大げさですが世界の「原理」のようなものが改めてひしひしと感じられます。「あ、これも同じだ」と感じることが増えるのです。物事には、自然界の原理が働いているのでしょうか。その自然界の原理というのが、言語の世界にも、経済の世界にも、歴史の至る所にも、散見されるのです。
 あるひとつのことを突き詰めていけば、その道の達人になれるでしょう。そんな姿勢を持ちつつ、いろいろなことをやってみると、意外と共通するところが多い事を発見するのです。
 例えば、幼児が言語を身につけるにおいての成長の過程を ”U-shaped development”(U字型発達)と呼びます。成長は直線上に進むのではなく、グッと伸びる時期と、停滞する時期、さらには停滞どころか以前できていたことができなくなってしまうような状態、いくらやっても巧くなるどころか下手になる状態(つまりスランプですね)が繰り返されつつ、進んでいくのです。
 言語習得に限らず、あらゆる技術の習得が、このような過程をたどることに気づかれた方も少なくないでしょう。何事かの習得を途中で諦めてしまう方は、恐らく、スランプに陥ったところで、嫌になってしまうのかもしれません。
 このような自然の原理のようなものを数多く経験することで、様々な物事に関して「恐らくこんなことだろう」と見当をつけることができるようになってきます。そして、体験してみて「やはり想像したとおり」となるかもしれませんし、「このタイプは初めて経験するな」と感じるかもしれません。するとその体験が、振り返って、自分の専門の技術や知識のさらなる向上に繋がるかもしれません。つまり、仕事(自分の専門のこと)ばかりでなく、他のことにも取り組むことで、かえって仕事の効率向上の参考になったりもするのです。
 趣味やスポーツは、最初の一歩が大切です。楽器演奏にしても、読書にしても、テニスや山登りにしても、まずは自分が十分に「楽しめる」ところまで、技能を高めなくてはいけません。そこに関しては、親のサポートが必要です。子どもに任せていては、上達の方法も分かりませんので、途中で投げ出してしまう可能性が大です。最初は、スイミングスクール、テニススクール、ピアノ教室や学校主催のクラブ活動などで、定期的に徹底的に技能を身につけさせる必要があるでしょう。
 加えて、親がやるべきことがもうひとつあります。「これは自信があるよ」という趣味の他に、様々な取り組みをさせるのです。どこかへ旅行するならば、旅程を組ませるのも子どもにとっては貴重な機会でしょう。また、旅先での様々な非日常的なアクティビティを体験させるのも大切です。もちろん、親御さんがダイビングやウィンタースポーツを楽しむのであれば、子どもたちにとってはまたとない恵まれた環境です。例えば、スキーをさせる。ひと通りできるようになったら、スノーボードをさせる。せっかくゲレンデに行くならば、ひとつではなく複数のことを体験させるように心がけるのです。(もちろん安全面には十二分な配慮が必要であることは言うまでもありません。)
 また、美術館や博物館なども積極的に活用しまょう。最初は、絵や音楽のことなどまるでわからなくても、親しむうちに理解が深まります。審美眼が芽吹くのです。これはすべてのことに通じます。最初は分からなくても、親しむことが大切なのです。
 親が子どもの将来においてできることは、子どもの将来を「決める」ことではありません。子どもの将来の「選択肢を狭めない」ことです。あらゆるものに関心を持てる子に育ててあげましょう。そのためにはあらゆることを、可能な限り経験させることを心がければ良いのです。


| 勉強や仕事

特集イメージ3 様々なことを経験させる、もしくはさせられる、という点において何者も避けて通れないのが「勉強」です。また、軌道に乗るまでの間は、親が積極的に介入する必要がある点においても、趣味やスポーツと共通しています。
 まずは、勉強というものにどんな意味があるのかを理解し、加えて、勉強の仕方を身につけるということが、いかに将来の仕事の仕方に影響してくるのかを見ていきましょう。
 ところで、本誌でも何度か触れたことがありますが、「知識」と「知恵」とでは、どちらが大切でしょう?昨今、かつての知識偏重の教育への反省からか、「知恵が大切」という風潮がどことなく日本の社会を覆っています。この考え方は、いかがなものなのでしょうか。そして、知識を詰め込むよりは、議論を通じて発信力を高めたり、コミュニケーション能力を培ったりすることが大切、となるわけです。まぁ、もっもとらしい考え方にも見えます。ついでに、ここまで来れば「批判的思考(critical thinking)」と結びつくのかと思いきや、日本の教育ではどうもそこまでは踏み込まないので、中途半端な感じが否めません。おそらく、「批判的」という日本語に抵抗感を覚える教育関係者が多いのかもしれません。
 話を知識と知恵へと戻します。知識ばかりで知恵がなければ、なかなか社会では巧く生きていくことができません。これは誰にでも直感的に理解できることです。しかし私に言わせれば、知恵よりは、まず知識が大切です。知識の裏打ちのない知恵は、単なる屁理屈ですし、生半可な知識の上に成立する思考はバイアスがかかります。つまり、知識がなければ、いくら知恵があっても何の価値もないのです。確かに、知識ばかりの頭でっかちで融通が利かないような人にとっては、百年一日のごとき変化のスピードの速い現代は、さぞや生きにくい社会でしょう。しかし、そんな堅物もまだ知識があるだけマシなのです。知識がないというのは、決定的に救いがありません。
 人間は、「知っているもの」しか概念として理解できません。知識のない者にとっては単なる丘や住宅地も、歴史を知る人にとっては想像力をかき立てる古墳や戦場跡だったりします。知らない者にとっては道ばたの鉄柱の先につけられた様々な印も、運転免許を持っている人から見れば道路標識であったりします。電器店に置いてある数限りない小物も、知る者にとっては便利なガジェットだったりします。知識のある者にしか、それらは見えません。つまり、ものを知らないということは、世の中にある、ありとあらゆるものが認知できないことと同じなのです。そして、ものを知る入り口が学校での勉強なのです。
 学校での勉強は、世の中のものやこと、様々な現象を理解するための基礎的知識を身につけるための作業です。言い換えれば「知識収集」という、人生において最大の楽しみである知的好奇心を育む入り口が学校での勉強です。そして、その知識を身につけるコツ、勉強のコツを身につけることが、まず第一に親が子どもに対して身につけさせるべきことなのです。一度コツを身につけて、知識を吸収できるようになると、子どもたちはどんどん新しい知識を吸収していきます。そして、知識が増えれば増えるほど、次の新しい知識の吸収は楽になります。なぜならば、既に触れたように、様々な知識の根底には、共通の自然の原理のようなものが働いていて、一度その原理を感じられるようになれば、他の知識に関しても同じような獲得のアプローチを使うようになるのです。慣れれば慣れるほど、新しい知識の獲得は楽になります。
 学校での勉強は、受験のためだけにあるのではなく、豊かな人生を送るための知識の吸収のトレーニングの場だと考えれば良いでしょう。これは社会に出ても同じです。

 日本の企業は欧米の企業とは異なり、個人の有する技術ではなく、能力で人を評価します。能力というのは、特定の技術を指すのではなく、様々なことに対応する能力を意味します。欧米では、特定の技術を有す人を、その技術に対する対価で雇い入れます。一方、日本では何もできない(技術のない)新卒を雇用し、OJTと呼ばれる配置転換を繰り返し、その企業における様々な知識を身につけさせていきます。雇用事情が異なるわけです。そんな日本の企業では、新しい職務をさっと理解し身につけられる人材が好まれます。そのため、このような知識吸収力に優れている難関大出身の学生を採用するのです。最近の採用でキーワードとなっている「コミュニケーション能力」は、当然のことながら、知識吸収力に優れていて、かつコミュニケーション能力の高いことを意味します。知識はないが屁理屈をこねくり回す知恵ばかり身につけいてることを指すものでは、もちろんありません。
 さて、そんな日本企業の特殊な社員教育事情は別としても、やはり新しい知識の吸収に貪欲な人は好まれます。あらゆることがめまぐるしく変化する今日、昨日の技術は明日にはもう廃れています。もちろん、価値の変わらない技術はありますが、コンピュータ化により人の手から次々と仕事が奪われていく中、変化する世間の潮流をいち早く読み取って、それに対応できる情報力、つまり知識の豊富さを持つことが今の世の中で重宝される人材の一なのです。
 学校の勉強は社会に出ても役立たない…などと仰る向きもありますし、今日の学校教育を見ていると、諸手を挙げて「素晴らしい」とは評価しがたい面もあります。しかしそれでも、人生を送るにおいて不可欠の技術、つまり知識獲得のトレーニングの場としての機能はある程度には果たしているのではないでしょうか。その意味での「勉強の仕方」を身につけさせることの重要さは、ご理解いただけたでしょう。


| コミュニケーション能力

特集イメージ3 さて、生きていく上で必要な日常のこと、家事などを自分でできるように育て、勉強はもちろんのこと、多岐にわたる豊富な知識や技術を身につけさせる…、ここまで来れば結構な人格者になれるでしょう。人々の尊敬を集められる人となります。
 しかし、そういったすてきな人格も、表に現れなければ存在意義が薄れてしまいます。既に述べたように、知られることがなければ、知らない人にとってはそれは「存在しない」ことと等しいのです。もちろん、それでもまったく構わないわけですが、せっかくの人格ですから、大いに社会生活に活用する方が良いことは明らかです。もちろん、その本人にとっても、また社会にとっても、優秀な人が大いに活躍することは有意義です。そして、そのために必要となるのが「コミュニーション能力」です。
 というあたりで、そろそろ紙数が尽きて参りました。コミュニケーション力に関しては、過去の「パルキッズ通信」でも触れていますし、私などより余程の専門家がいますので、そちらにお任せすることにしますが、そのコミュニケーション能力を育てるためにも、様々な体験をさせることが直接・間接に生きてきます。知識が豊富であれば、会話も弾むでしょうし、学問を通して思考の整理法を身につければ、効果的なコミュニケーションが成立するでしょう。また、様々な体験をさせること自体が、様々な人々とのコミュニケーションの機会を生むことにもなるのです。
 とにかく、何でも良いから経験させるべし。させるかさせないかを迷ったら、命に危険のない限り、家訓に反しない限り、モラルを逸脱しない範囲において、積極的に体験させてやるのが良いでしょう。もちろん、その経験の幅を広げさせるためのツールとして、また思考の視点を複数持たせるためのツールとして、英語力の存在の大きさは改めて触れるまでもありませんね。


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プロフィール

船津 洋(Funatsu Hiroshi)

株式会社児童英語研究所 代表、言語学者。上智大学言語科学研究科言語学専攻修士。幼児英語教材「パルキッズ」をはじめ多数の教材制作・開発を行う。これまでの教務指導件数は6万件を越える。卒業生は難関校に多数合格、中学生で英検1級に合格するなど高い成果を上げている。大人向け英語学習本としてベストセラーとなった『たった80単語!読むだけで英語脳になる本』(三笠書房)など著書多数。

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