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2018年5月号特集

Vol.242 | 幼児はメロディで英語を聞き分ける

大人が英語を聞き取れないホントの理由

written by 船津 洋(Hiroshi Funatsu)


※本記事のテキストは引用・転載可能です。引用・転載する場合は出典として下記の情報を併記してください。

引用・転載元:
http://www.palkids.co.jp/palkids-webmagazine/tokushu-1805/
船津洋「幼児はメロディで英語を聞き分ける」(株式会社 児童英語研究所、2018年)


特集イメージ1 外国語を聞いたとき、それが日本語と違うことに私たちは気づきます。仮にその外国語に対する知識に乏しくても「~語っぽい」というところまで何となく分かります。日本人に最も馴染みが深い外国語と言えば英語ではないでしょうか。確かに英語も海を隔ててお隣と言えばお隣ですが、もっとご近所の朝鮮語や中国語やロシア語や他のアジア圏の言語よりも英語に馴染んでいるのは皮肉な現実です。洋画と言えば英語、洋楽と言えば英語、外国語と言えば、これまた英語というくらい、英語には馴染みがあります。それもそのはず、中学生や、今では小学生も自分から英語の授業を受け、大学入試では必ず英語の試験が課され、就職しても英語が必要とされるご時世ですので、私たち日本人にとって最も身近な外国語は英語なのです。
 英語を今まで聞いたことのない日本人は皆無でしょうし、英語を耳にすると「これは英語だ」と分かります。音声の内容までは理解できなくても、それが英語であることは分かるわけです。素朴な疑問ですが、なぜそれが英語の音声であることが分かるのでしょうか? 英語より馴染みの薄い、例えばフランス語を聞いても、それがフランス語(もしくは同じ語族の言葉)であることが分かります。一般的に我々のフランス語に関する知識は、英語におけるそれに比べて遙かに貧弱そうですが、それでも、その言語がフランス語であることは何となく分かります。また、少し言語に関心のある人なら、同じ系統に属するフランス語とイタリア語はもちろんのこと、イタリア語とスペイン語すら弁別できるかもしれません。しかし、言語に関心のない人でも、フランス語とロシア語を聞き分けることはできます。ロシア語の知識などまるでなくても、それが可能なのです。同様に中国語や朝鮮語の知識がなくても、それらが中国語や朝鮮語であることが分かってしまうのです。なぜなのでしょう?


| まずは母親の声が分かる

特集イメージ2 もちろん日本語と英語では、音韻が異なります。『パルキッズ通信3月号』でも触れましたが、日本語に無い音素が英語にはあったりします。しかし、音声それ自体の情報以前にまずアクセントが異なり、それにより言語の音声の特徴が形作られているのです。さらにもう一つ。例えば日本語で「こんにちは」と誰かが言ったとします。世の中に同じ「こんにちは」は一つとして存在しません。女性の言う「こんにちは」と男性のそれとでは、周波数が異なります。また、ガラガラ声の人の「こんにちは」と澄んだ声の持ち主のそれとでは、波形が異なります。このように、全く異なる「こんにちは」でも、それらは全て「こんにちは」として処理されるのです。そして、それらの「こんにちは」が誰の声なのかも聞き分けられるのです。
 胎児はお腹の中で母親の声を聞いています。30週にもなると急速に聴覚を発達させ、主に母親の声から日本語の音声を学習していることも分かってきています。胎児に母親と別人による朗読を聞かせると、母親の声の方を好む様子も観察されています。なんとお腹の中にいるときから、お母さんの声を聞き分けているのです。現在妊娠中の方がいらっしゃいましたら、是非ともたっぷり話しかけてあげてください。赤ちゃんは聞いているのです。
 さて、赤ちゃんは同じ「こんにちは」でも母親の声と他の人の声を聞き分け、母親の声を好みますが、それは例えるなら楽器の差とも言えるでしょう。バイオリンでもクラリネットでもピアノでもハーモニカでも木琴でも同じ高さの音を出すことはできますが、音色は違います。言語学の世界ではそのような違いを「非言語情報」というカテゴリーに分類しています。つまり、「非言語情報」とは楽器の違いだと考えればだいたい合っているでしょう。そして、赤ちゃんは胎内にいるときから、楽器の違いを聞き分けているのです。


| 楽器とメロディーの関係

特集イメージ3 しかし、それだけではありません。赤ちゃんは音色の違い以上のことも、お腹の中にいるときから学習しています。お腹の中の赤ちゃんに一定期間母親の声で同じ内容の朗読を行います。その後別の人による同じ内容の朗読を聞かせると、それがかつて母親によって読まれたものと同一であることを理解するのです。つまり、楽器の違い以上のことを認識しているわけです。ただ、何を「同じ」だと理解しているのかに注目する必要があります。どのような点を赤ちゃんは「同じ」と知覚したのでしょうか。
 お腹の中は羊水で満たされています。水を媒体にして赤ちゃんは音を聞いているわけです。水を通して聞こえる音は我々が日常的に空気の振動を通して聞いている音声とは異なります。プールなどで潜りながら周囲の声を聞いたことがある方は分かると思いますが、水の中で聞く声からは何と言っているのか、そのメッセージを正確に知覚するのは困難です。これは高周波の音がカットされてしまって低周波の音しか聞こえないことに因ります。具体的に言えば母音を中心とした「モコモコ」した音声のみが聞こえるのです。ただ、高周波の音がカットされても随分と多くの情報がその音には含まれています。一つは既に述べたような「音色」の情報です。母親の声は聞き分けるわけです。
 そして、さらにそこには「韻律」の情報も含まれているのです。「非言語情報」を楽器の「音色」の情報に例えた様に「韻律」も音楽用語に例えると、「リズム」とか「メロディー」と言うことができるでしょう。リズムは拍子の取り方やテンポでメロディーはピッチや抑揚と考えることができます。五線譜に載っている情報のようなものです。つまり、同じ詩を別の人が読んでも、それは楽器が異なるだけで譜面は一緒なので、お腹の赤ちゃんはそれらを「同じ」と理解したのです。


| 日本語と英語では五線譜の様子が違う

特集イメージ4 言語は様々なグループに分かれていますが、韻律で分類すると英語はストレスリズムで日本語はモーラリズムに分類されます。またややこしい雰囲気を察した方もいらっしゃるかもしれませんが、簡単に書くと次のように特徴付けられます。ストレスリズムは強拍と弱拍が交互に現れて、強いところから次の強いところまでの長さを一定に整えようとする特徴があります。
 例えば ‘I will go’ と言うとき ‘I’ と ‘go’ に強拍が来ます。’will’ はその間に挟み込まれている感じです。これを ‘I’m gonna go’ に言い換えても強拍は ‘I’ と ‘go’ に置かれます。’am gonna’ は ‘will’ と同じ長さのすき間に押し込まれます。少し強引ですが、’I don’t wanna go’ も同様のリズムで ‘I’ と ‘go’ に強拍を置いてそのすき間に ‘don’t wanna’ をギュッとつめて押し込んで発音されるのです。このように、強拍と弱拍が交互に「タンタタ・タンタタ・タンタタ・タンタタ」と繰り返されそのリズムに乗せて発音されるのが英語を始めとするストレスリズムの言語です。
 一方の日本語のモーラリズムはというと、英語のように複数の語を強拍と弱拍にひとまとめにするような発声の仕方ではなく、子音+母音、または母音単独で構成されるモーラと呼ばれる単位で発音されます。モーラとは言ってみれば俳句の五七五のような数え方をされます。「タタタタタ タタタタタタタ タタタタタ」となるわけです。普通我々が耳にする楽曲は四拍子とか三拍子が多いので、五拍、七拍、五拍というと一見変拍子のような印象を受けるかもしれませんが、そうではありません。俳句の場合には後ろで流れているメトロノームは四拍子なのです。書くまでもありませんが念のため書くと「♪♪♪♪♪×××|×♪♪♪♪♪♪♪|♪♪♪♪♪×××」(×は八分休符)と無意識のうちに四拍子で読んでいる方も少なくないでしょう。
 このように英語と日本語では音声自体の情報以前に韻律、つまりリズムとメロディーの特徴が異なるのです。ここで冒頭の質問の一つに答えが出たのかもしれません。私たちが様々な音声を聞いて、これは英語っぽい、これはフランス語っぽい、これはアラビア語っぽいと、単語一つすら知らなくても判断できるのは、その言語の韻律情報に注目してその違いに気づいているからなのです。


| メロディーと歌詞の関係

特集イメージ5 大人ですら、しかもその言語を構成する音素どころか単語の知識すらなくても、耳にした語を「~語だ!」と聞き分けられるのは驚きですが、それでは幼児はどうなのでしょう。大人よりも遙かに言語の音声に敏感で、そのうえ彼らの言語獲得能力ときたら、その比ではありません。そんな幼児たちですから、もちろん大人と同様、いやそれ以上に耳にする言語を精密に分析しています。
 既に述べたように、お腹の中では言語の音声の高周波部分がカットされてしまうため、モコモコした韻律情報、つまりメロディーしか情報として伝わりません。「韻律情報」をリズムとメロディーに例えたのと同様に「音声情報」を例えるならばそれは歌詞と言うことができるでしょう。そして、胎児ですら母語と外国語が区別できているのです。つまり、幼児は歌詞ではなくメロディーで「これはママの言葉(日本語)」「これは外国の言葉(英語)」と言った具合に、聞き分けをしているのです。
 研究者というのは偉い人たちです。お腹の中の赤ちゃんの様々な言語に対する反応などは、凡人からすれば、観察しようがないと諦めてしまいますし、そもそも観察しようとは思いつきもしません。しかし、彼らは胎児の心拍数でそれを観察する方法を考案するわけです。また、新生児の言語に対する反応、例えば母親の声と他の人の声の弁別、複数話者による同じ詩の朗読の同定、母語と外国語の区別なども赤ちゃんの原始反射の一つの吸啜(きゅうてつ)反射で測るのです。赤ちゃんはまず聞き慣れた音を好む傾向があります。母親の声を好むのと同じです。しかし、同じ音声も聞き続ければ飽きてきますが、例えば英語などの別の音声を聞かせるとビックリしてその音声に関心を持ちます。そしてまた飽きてくる。この繰り返しです。そして、これらの反応から、音声に対する様々な反応を、研究者たちは観察するのです。
 さて、少し話が逸れてしまいましたが、そんな研究からいろいろなことが分かってきています。母親の声を好むのもしかり、詩の朗読内容を記憶しているのもしかり、外国語を母語から聞き分けるのもしかりです。なぜそんな実験をするのかと言えば、ゴールはいろいろですけれども、一つには「分節問題」があります。『パルキッズ通信』をお読みの皆様にはそろそろ馴染みの深い語かもしれませんが、「分節」というのは「連続音声を語(や形態素)に切り出す」ことで、その分節を幼児がどのように行っているのかが関心の対象です。
 大人は外国語の分節に語彙情報、音韻情報さらには韻律情報も手がかりとしていることが分かっています。しかし、幼児の場合にはまず語彙を有していません。語を知らないわけです。語を知らないのにどのようにして分節ができるのでしょうか。そして、もちろん分節ができない事には語を認識できないので、言語習得ができない事になります。つまり、言語学習の根っこにあるところの語彙の構築をするために最初に幼児がしなくてはいけないのが、分節なのですが、彼らには限られた手がかりしか使うことができないのです。そして、その手がかりには音韻情報(日本語で言えばかな、英語で言えばアルファベット)や韻律情報(かな)がありますが、音韻情報すらまだ獲得していない幼児たちに残された主な手がかりは韻律情報(リズムやメロディー)ということになります


| 英語と日本語では手がかりが違う

特集イメージ6 現に新生児達は母語と外国語を聞き分けます。とある実験では英語話者の新生児はフランス語と日本語を聞き分けることができました。しかし、韻律が同じ言語、英語話者の赤ちゃんに対してドイツ語とオランダ語、スペイン語とイタリア語は区別できませんでした。しかし、当然のことながら、英語とオランダ語は異なります。同じ韻律クラスの姉弟のような言語同士でも音韻情報(アルファベット等)が分かってくると、区別ができるようになるのです。どうやら、幼児たちはまずは音色を決定する「非言語情報」を区別するようになり、その後に言語に個別のリズムやメロディーを特徴付ける「韻律情報」を理解し、その後になってようやく音楽で言えば歌詞に相当する「音韻情報」を身につけるようです。そして、その時々に持っている手がかりを総動員して、ことばを身につけていくのです。
 さて、ところが、問題はそう簡単ではありません。日本人の幼児と英語圏に育つ幼児たちとでは単語の切り出しに使用する手がかりが違うのです。また、幼児に限らず大人でも英語と日本語とでは語の切り出しに異なる手がかりを用いています。想像してみてください。皆さんが英語を聞き取るときにどのような手がかりを使っていますでしょうか。英語にご堪能な方は英語の韻律情報や語彙を手がかりにしているはずですが、大抵の日本人は英語の韻律リズムを理解していません。だから、英語が聞き取れないわけではありますが・・・。
 それでも、英語を聞き取ろうとすれば持ちうる限りの英語の語彙を総動員して聞き取ろうとします。ただ、繰り返しますが、英語の韻律リズムを身につけていないので、代替策として日本語の韻律リズムの知識で英語を切り出そうとするのです。そして、その試みは多くの場合、散々な結果に終わるのです。理由は簡単、日本語の韻律リズムの知識では英語の連続音声は分節できないのです。子音には全て母音をくっつけたり、二重母音(ou, ei)を長母音(o: e:)にしたりと日本語のモーラのリズムに英語の音を自動的に、それこそ無意識のうちに変換してしまうのです。結果として英語の歌詞を演歌のリズムとメロディーに乗せてベタベタのかな節で歌うような感じになってしまうのです。


| 日本語はピッチアクセント、英語はストレスアクセント

特集イメージ7 「雨」と「飴」とでは何が違うでしょう。音素は同じです。かなで書いても違いはありません。しかし、明らかにピッチが違います。「雨」は「あ」のピッチが高く「め」で下がります。逆に「飴」は低く「あ」で始まり「め」でピッチが上がります。このようなアクセントをピッチアクセントと呼びます。ピッチアクセントは「橋/箸」や「白/城」のように語の意味を変えます。つまり、語の弁別に使われます。他方、英語などに見られるストレスアクセントは語の意味ではなく、語境界を示すことが多いので、分節に役立ちます。
 英語圏の幼児たちは英語の韻律リズムを理解しています。そして、その韻律リズム(メロディー)の知識に基づいて連続音声を語に切り出そうとするそうなのです。英語では語の75%が第一音節にアクセントを持つそうです。つまり、強拍の頭に現れる音から語が始まると想定すれば、75%の確率で「ここから語が始まる点」を特定できるわけです。そして興味深いことに音韻(かなやアルファベットの音素の知識)を獲得する前の7ヶ月くらいの幼児はこのメロディーの情報で語の切り出しをするので、語頭にアクセントの来る語(better)などを、それ以外にアクセントの来る語(between)などよりも好む傾向があるようなのです。
 確かにこの方略(Metrical Segmentation Strategy, MSSと呼ぶそうです)を幼児が使っているという考え方には一理あると思います。例えば、”He plays the guitar in his room.” という文の強拍の位置を考えてみると、”He/ plays the gui/ tar in his/ room.” という区切り(/が弱拍と強拍の境界)になります。すると、どうでしょう。英語の文を英語の韻律リズムの譜面に載せると、語頭にアクセントのない語は境界を跨いでしまうのです。そして、’guitar’ ではなく ‘tarin’ がまるで語のように分節されてしまうわけです。
 一方の日本人の赤ん坊は、これとは異なった音声環境に育っています。幼児がいるご家庭でよく使われるのがいわゆる幼児語です。私自身うっかりしていて文献を読んで初めて気づかされたことなのですが、幼児語は特殊拍が多用されるのです。また、特殊拍も現れる位置が大体決まっているのです。またまた専門的な言葉が出てきましたが、ご心配なく、皆さんも普段から使っている音韻的特徴のことです。特殊拍には撥音(母音+ん : まんま、ねんね等々)、長音(母音+同じ母音 : ぶーぶ、ばーば等々)、と促音(母音+空白 : くっく、ちっち等々)があります。お気づきかもしれませんが、これらの特殊拍は二拍目や二拍目と四拍目に来ることが多いのです。例えば「まんま、ねんね、クック、ブーブ」はよく現れても「ままん、ねねん、ククッ、ブブー」とはあまりならないのです。そして、幼児語を多用するご家庭の赤ちゃんは、それらの特殊拍を含んだ語に慣れていき、特殊拍を含まない語より、特殊拍を含む語の方に関心を示すようになるのです。なんとも、幼児が育つ言語環境が如何に幼児の言語獲得に影響を与えているのか、その一端を垣間見る思いではないでしょうか。


| 本題。日本人の赤ん坊は如何にして英語の分節をするのか?

特集イメージ8 子どもたちの音声認識は、既にお腹の中から始まっています。お腹の中で水を通して聞こえる音は高域がカットされた低周波のモコモコした音ですが、それでも母親の声とそれ以外の人の声を区別できるようになります。同時に、そのモコモコした音声から韻律情報を取り出し母語と外国語の区別すらしています。胎児期には母親の声を好むようになり、新生児の時期には母語を好むようになります。ただ、これは「選好」の問題にすぎません。この時期の子どもたちは、音声に対して普遍的な処理をします。つまり、日本語だけ聞き取ったり、英語だけ聞き取ったりせずに、日本語も英語も、それこそ他の言語も与えれば、それらの言語全ての情報を分析していくのです。
 そして、新生児の時期が終わり首が据わる頃になると、韻律(リズムやメロディー)に基づく分節を始めます。日本人幼児であれば、撥音を好んだり、英語圏の子であれば強拍の音節から語が始まると想定するような作業が行われるようになるのです。これは朗報ではありませんか? つまり、生まれてから4ヶ月程度、妊娠中を含めても半年程度の音声学習で幼児たちは既に英語のストレスアクセントを身につけているのです。わずか半年で日本語のメロディーや英語のメロディーを身につけられるのです。それらの韻律情報(リズムとメロディー)が言語の切り出しに不可欠であることを考えれば、なんとしても早期に、できれば幼児期に身につけさせてやりたいところではないでしょうか。
 生後10ヶ月くらいまでは日本人であろうがアメリカ人であろうが、全ての音を聞き分ける能力を有していますが、その後非母語に対する弁別を行わなくなることもよく知られています。いわゆる ‘l, r’ の聞き取り問題です。しかし、これも聞き取りが「できなくなる」のではなく単に「しなくなる」と考えられています。つまり、弁別能力は持っているが面倒なのでしなくなるのです。赤ちゃんも大人と同様に面倒くさがりで、必要なことしかしなくなるのですね。
 そして、この頃になると音韻情報(かなやアルファベットなどの音素)も獲得していくので、韻律情報(リズムとメロディー)に加えて音韻情報も手がかりとしながら単語を見つけていくのです。ここまでで、わずか8ヶ月、胎内の期間を加えても1年ほどなのです。
 つまり、パルキッズを半年もかけ流したご家庭で育つお子様たちは、幸運なことに英語の韻律リズムを身につけていて、その知識をもって英単語を連続音声の中から切り出しているのです。そして、パルキッズをかけ流して1年も経つご家庭では、お子様たちは英語の音素の手がかりも使いながら単語を発見しているのです。なんとも幼児の言語獲得能力には目を見張るモノがあります。
 いずれにしても、幼児期にはまず耳からのインプットを中心に、言語習得で必ず必要となる連続音声の分節、つまり英語の聞き取りの能力を身につけるために必要となる英語の韻律情報をしっかりと身につけさせてやることが重要です。この環境作りは親御さんにしかできません。子どもたちのためにも日々淡々とかけ流しに専念して頂くようお願い申し上げます。

*参考文献
乳児の言語音声獲得』(梶川幸世, 2003)
乳幼児における韻律の知覚と産出の発達』(梶川幸世, 2007)
乳児における言語のリズム構造の知覚と獲得』(林安紀子, 2003)


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プロフィール

船津 洋(Funatsu Hiroshi)

株式会社児童英語研究所 代表、言語学者。上智大学言語科学研究科言語学専攻修士。幼児英語教材「パルキッズ」をはじめ多数の教材制作・開発を行う。これまでの教務指導件数は6万件を越える。卒業生は難関校に多数合格、中学生で英検1級に合格するなど高い成果を上げている。大人向け英語学習本としてベストセラーとなった『たった80単語!読むだけで英語脳になる本』(三笠書房)など著書多数。

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