10万組の親子が実践した幼児・小学生向け「超効率」英語学習教材のパルキッズです。


カートを見る
ログイン
パルキッズCLUB

パルキッズ通信 特集 | , , , ,

ヘッダー

2019年11月号特集

Vol.260 | アウトプットとストレスの関係

「やる気」や「自信」は諸刃の剣?!

written by 船津 洋(Hiroshi Funatsu)


※本記事のテキストは引用・転載可能です。引用・転載する場合は出典として下記の情報を併記してください。

引用・転載元:
https://www.palkids.co.jp/palkids-webmagazine/tokushu-1911/
船津洋「アウトプットとストレスの関係」(株式会社 児童英語研究所、2019年)


インプットのパルキッズ

特集イメージ1 『パルキッズ』は元々インプット用の教材で、アウトプットは子どもの気ままに任せていました。従ってアウトプットに関わる作業、例えば「どっち遊び」や「暗唱」の具体的な方法は提示するものの、積極的に「こうすると良いよ」というよりは、どちらかと言えば消極的に「こうしない方が良いですよ」という姿勢で、これまでさまざまなシーンに対応してきました。
 フラッシュカードのインプットも最初は紙のカードでしたが、これも母親の役目としてしまうと、どうしても「やらなきゃ」という義務感が湧いてくるようなので、ビデオにしました。しかし、それでも「見せなきゃ」と感じてしまうようなので、そのような感情が湧くのを堪えていただけるように『パルキッズ通信』でも「会員制掲示板」でもアドバイスを差し上げてきました。
 そんな折り、IT技術の進歩のおかげで「オンラインレッスン」が可能になったので、それに飛びついたのが5年前(2014年)のことです。オンラインレッスンはインタラクティブな作りで、子どもが積極的に画面をタッチして先に進めるようになっているので、「やる気」や「楽しみ」を持たせることができるのがメリットです。
 しかし、そのようなポジティブな「感情」を持ってもらうはずのオンラインレッスンですが、成績表をつけることで「ピンポン、ピンポン!」と楽しいはずのどっち遊びが「プレッシャー」になってしまうことも、希にあるようです。


オンラインレッスンのプレッシャー

特集イメージ2 オンラインレッスンは、教室でのレッスンの中のエッセンスをインターネット上で体験できるような作りです。そして教室でのレッスンは、基本的には母親が後ろに付いていて手を添えてあげることが基本です。もちろん、一人でできるのであれば一人でさせますが、それはあくまでも「一人でできる場合」のことです。
 同じように、オンラインレッスンも、いつでも母親が後ろから手を添えてあげられることを期待しています。レッスンはアウトプットの取り組みと捉えられることが多く、もちろん、アウトプットの面も備えています。しかし、それが親にとっても子どもにとっても、プレッシャーになってしまっても元も子もありません。
 レッスンに楽しく(実は、アウトプットであることにすら気づかずに)取り組んでいることが、インプットになり言語の獲得は進むのです。
 お子さんの言語習得の最大の敵は、ストレスやプレッシャーです。その敵を知るためにも、今回は言語の獲得における「ストレス」や「プレッシャー」といった要因が、どのような負の役割を果たしているのかについて「気楽に」考えてみることにしましょう。


「学習」は×で「獲得」は○

特集イメージ3  “言語獲得における最善の方法は、不安感の低い環境下での学習者が本当に聞きたい情報を含む ‘理解可能なインプット’ を提供することである。それらの方法は、(学習者に)外国語の未熟な産出を強制せず、同時に学習者の心の準備ができたときに産出することを許し、進歩はインタラクティブで理解可能なインプットを提供することにより実現され、産出を矯正したり強制することには依らない。” (Stephen Krashen, アメリカの言語学者)
 これはクラッシェンの “第二言語獲得仮説” の一部を(ほぼ忠実に)和訳したものです。
 得てして、学者とは一般人に分かりにくい表現を使うものですね。上記を平たく言えば、「プレッシャーをかけずに理解できる内容をインプットして、アウトプットは自然に任せて強制(期待も)してはダメよ」ということになります。
 クラッシェンの ”第二言語獲得仮説” は1985年に提案されているので、ずいぶんと古い学説です。余談ですが、学説とは「反証可能」、つまり「ここがおかしいぞ!」と突っ込みの余地のあることが重要で、同時代、あるいは後進の研究者によって肯定的、あるいは否定的な根拠が提示されたりします。
 そして、もちろん、クラッシェンの学説の中のいくつかには「?」が付くものもあります。
 しかし、それでも未だに支持者が少なくない学説であることは確かです。
 この学説はいくつかの仮説がセットで構成されています。それらは、以下の通りです。
●獲得-学習仮説
●観察装置仮説
●入力仮説
●情意フィルター仮説
●自然順序仮説


勉強しても英語は身に付かない

特集イメージ4 これら複数の仮説の外郭を成すのは最初の「獲得-学習仮説」です。ざっと以下のような説明が加えられています。
  “…クラッシェンは「獲得された言語体系」と「学習された言語体系」は外国語運用に於いてそれぞれ独立した体系であるとしていて、「獲得された体系」は幼児が母語を獲得していく段階で経験する無意識の工程の産物である…”
 少し分かりにくいかも知れませんね。ここでクラッシェンは「勉強して身につけた知識と、自然と身につけた知識は別物ですよ」と言っているわけです。
 そして、さらに、
  “「学習された言語体系」は形式的な指導の産物で、意識的な工程によってもたらされる、例えば「文法」のような “言語に関する” 意識的な知識により構成される…”
 ここで重要なのは「学習では言語(それ自体)ではなく、 “言語に関する” 知識」としている点でしょう。つまり学習で身につくのは言語ではなく、言語に関する知識だけ、としています。
 結論として、 “「学習」は「獲得」より重要度が低い” としています。
 つまり、言語への取り組みが「学習」になってはいけないと指摘していて、さらに自然な「獲得」を促すことが重要だと説いているのです。


感情は “諸刃の剣”

特集イメージ5 お気づきかも知れませんが、クラッシェンの学説は「第二言語習得」に関わるものです。学者が「第二言語習得」というとき、大抵の場合は、学習者を大学生とか社会人に想定しています。少なくとも「外国語として」言語を学ぶ中高生以降が、彼らの脳裏に浮かんでいることは(おそらく)間違いないはずです。
 これは、彼らが日々接するのは大学生ばかりだから、という至って単純な理由によります。大学で幼児や小学生、あるいは中学生を対象にした外国語習得の研究をするのは大変です。その点、大学生はうじゃうじゃいるので、被験者には事欠かない、というわけです。
 そんな環境の中から生まれている(と勝手に想像している)クラッシェンの仮説ですが、それでも外国語として英語を学ぶ者、あるいは子どもに獲得させようと考える親にとっては、十二分に参考になる学説です。  その中で、特に今回の記事と関連しているのが「情意フィルター仮説」です。
 「情意フィルター仮説」は、クラッシェンの「複数の ‘情意の変数’ は第二言語獲得に於いて促進的な役割を果たす」という視点を表現しています。それらの “変数” は「やる気」「自信」「プラスの自己イメージ」「低不安感」と「外向性」は第二言語獲得に於いて ‘持たせて’ おいた方が良いとしています。 “「やる気の低さ」「自己肯定感の低さ」「不安感」「内向性」「プレッシャー」は情意フィルターを増大させ、獲得に使用される理解可能なインプットを妨げる ‘精神的ブロック’ を形成する” と解説されています。
 これまた分かりにくいので、平たく書き直せば以下のようになります。
 「やる気」や「自信」などのプラスの感情は獲得を後押しする役割を果たす一方、「ストレス」や「プレッシャー」などの感情は獲得を妨げる。
 感情はプラスに働けば獲得を促進、マイナスに振れれば獲得を阻害するわけです。「感情」は「諸刃の剣」なのです。


情意フィルターを高めない

特集イメージ6 クラッシェンは「情意フィルターを高めない」ことが重要であると指摘していますが、これは示唆に富んでいます。
 感情がプラスに働いているうちは獲得はどんどん進むのですが、一度マイナスに働き始めると獲得がまるで進まなくなってしまうわけです。それであれば、最初から「感情」に訴えたり、「感情」を学習に利用することをしなければ良いのです。
 幼児や留学生の言語獲得を見れば明らかなように、本来、これらの感情的要因がなくても、言語の獲得は進みます。ひたすら、淡々とインプットに専念すれば、それら「感情」に関わる項目の(正負の)影響を最小限に抑えることができます。
 これこそ、『パルキッズ』のインプット中心主義(←初出です)と通底しています。アウトプットには重点を置かないわけですから、アウトプットさせる必要もない。そうであれば、やる気を喚起させたり、自信を持たせるために褒めてやったり、肯定感を高めるために煽てたりする必要もありません。
 しかし、どうも「英語」となると、与える側の肩に力が入ってしまって、やる気を喚起しようと、楽しさ・ご褒美・達成感などの様々な仕組みを考え出すわけですが、ひとつ間違えば、それらは「情意フィルター」を高めてしまうことになるのです。
 ここは、ひとつ肩の力を抜いて、インプットに徹する原点に回帰することを頭の片隅に置いておくことをお勧めします。


なぜ間違うのか

特集イメージ7 とはいっても、所詮は人の子。肩の力は抜いてみても、いつの間にかまた力が入ってしまうものです。
 年齢を重ねるにつれて、いろいろなことが煩わしくなってくるので、自然と物事にこだわらなくなる。また、自然の摂理を感じるようになるからか、大上段に構えて子細は気にならなくなる。果たしてそうなのかどうかは知りませんが、できれば斯くの如くありたいものです。
 しかし、若いということは、精神が敏感だということです。老人のように鈍くない。すると、目の前の事象が気になって仕方がない。いつまで経っても、オンラインレッスンで正答しない我が子に、いらついてしまうのも仕方がありません。
 では、なぜ子どもたちは正答できない(しない)のでしょうか。


反抗期?

特集イメージ8 子どもの成長には「イヤイヤ期・反抗期」というものがあります。反抗期は自我の芽生えの証なので、歓迎すべきことだなどということもそこここで目にします。
 概念化が進み、語彙が膨らんでコミュニケーションが取れるようになってくるということは、それすなわち、言語を使用した思考ができるようになってくることを意味します。
 ここは重要です。反抗するような幼児たちは「思考」をしているのです。ただ、残念ながら、その思考力は彼らの感情にはまだ追いついていません。また、思考はできていても、それを正しく表出する技術が未熟です。
 幼児にとって、日常のことが理解できて、人ともコミュニケーションが取れることは、これはストレスが少ないどころか、楽しいことです。しかし、そんなコミュニケーション能力は有しつつも、まだ思考が未熟なのでモヤモヤがあるのです。さらに、言いたいことを言語化できない、口にしても相手に伝わらないイライラがある…。
 そんなストレスから、口にできること、つまり「イヤ」と言うのも頷けなくもありません。本当はイヤではないのです。ただ、何かが違うから「イヤ」なのでしょう。そして、繰り返すうちにそれが口癖になってしまう、反抗期とは、そんな単純なものではないかと、我が子たちを見ていて、思っています。
 さて、反抗期の原因はなんであれ、オンラインレッスンに取組中の子どもたちにも、この「反抗期」を通過中の子が少なくないでしょう。
 すると、敢えて間違えてみたりすることもあるのです。


間違えることの方が安全な場合もある

特集イメージ9 また、反抗期でなくても、素直に正しい答えを選ばないことは珍しくありません。簡単な心理です。
 正しい答えを選ぶより、間違えた方を選んでいることの方が、「安全」なことがあるのです。
 100パーセント間違いなく分かっている質問に対しては、正しい方を選べます。
 しかし、あまり自信がない場合には、正しいと思われる方を指して「間違える」よりも、逆の方を指す方が安全です。もし、そちらが正解であれば、自分の不安は的中していたわけです。つまり、自分は「間違えていなかった」。また、もし不正解であれば、元々自分が正しいと思っていた方が正解なので、これまた、本質的に自分は「間違えていない」ことになります。
 まぁ、果たして、幼児がそんな複雑なロジックを考えているのかどうかは別として、物事の本質として上記の論理が存在することは間違いありません。
 ひょっとすると、そんな原理を知ってか知らずか、間違えた方を選んでいるの “かも” 知れないのです。


インプットは「されるか否か」ではなく「するか否か」

特集イメージ9 反抗期や安全のために意図的に間違えているということが明らかであれば、間違えていても心配には至りませんが、間違え続ける理由が分からなければ、騒いでしまうのは親心です。
 ところで、なぜ間違えると心配になるのかといえば、せっかくインプットした内容が「頭に入っていないんじゃないかしら?」との疑念が湧くからではないでしょうか?
 実は、その心配も全くあたらないのです。
 確かに「入力されているか否か」は気になる点でしょう。しかし、本質は「入力するか否か」なのです。
 『アイキャンリード』を例に取ると、こんな仕組みです。
 まず、音声のかけ流しをします。つまりは入力です。しばらくこのインプットを続けると、ひょんなタイミングで、一部が口から出てきます。それは、一人遊びしているときかも知れませんし、音源が流れているときにタイミング良く言ったりするかも知れません。しかし、大抵の場合、それは一部に限定的です。言い換えれば、一部だけがアウトプットされたわけです。
 すると、大人の脳みそは次のように考えます。「アウトプットされたのであれば、インプットもされている」と、ここで思考を止めてもらえれば助かるのですが、言語というのは恐ろしいもので、思考はどんどん進んでいきます。そして、「他のアウトプットされていない部分は、インプットされていないのではないだろうか?」、そして「ちょっと(一部)しかインプットされていないじゃないか!」に行き着くわけです。
 いえいえ、違うのです。インプットした内容は、全てインプットされています。しかし、アウトプットに至るのは、その中のほんのほんの一部のみなのです。
 そんなことはお構いなしに、大人の思考は進みます。結果として「入力されていない」「うちの子に英語は合わない」もしくは「この教材とは相性が悪い」となるわけです。まことにもって残念なことです。
 幼児の脳は、情報を取捨選択しません。繰り返し与えられるコンテンツは、環境の一部として、自然と全て取り込まれるのです。ただし、これは無意識に行われます。つまり、本人すらインプットされていることに気づいていません。
 ところが、言いやすい箇所や、理解できる箇所は無意識下から意識に上がってきます。その意識に上がってきている部分が、ポロリとアウトプットされるのです。
 そのまま、ストレスなく進められれば、アウトプットできる部分は増えていきます。「一部が入っていれば、全てが入っている」のです。そして、インプットからアウトプットの流れが繰り返され、それがひとつの回路になるまで繰り返されれば、いつでも簡単に絵本の暗唱ができるようになるのです。
 しかし、ここに一癖あります。
 先の「情意フィルター」が働きやすいのです。なぜなら、少しでもアウトプットがあれば、親は喜びます。「スゴいねぇ!」「上手ねぇ!」と褒めるでしょう。ひょっとすると「あれ言ってみて」と、依頼するに至るかも知れません。
 これは、「やる気」や「自信」を刺激します。結構なことです。
 でも、思い出して下さい。これらの情意は “諸刃の剣” でしたよね。裏を返すと、プレッシャーやストレスになるのです。


とどのつまり・・・

特集イメージ9 オンラインレッスンも全く同じです。無意識のうちにピンポン、ピンポンとやっているうちは良いのですが、正答と誤答がくり返されるうちに、「やる気」や「自信」と共に「ストレス」と「プレッシャー」が増大している可能性があります。
 幼児の脳は、全てを吸収します。「正答できたもの=インプットできたもの」ではないのです。
 このことに関しては、多くの保護者の皆様が、あとになって「ああ、言われてみれば、確かに全部入っていたねぇ」とご納得されます。
 それが、どのくらいあとなのかと言えば、個人差はありますが、平均して「英検合格」を境に、子どもの能力を見る目が変わるようです。
 さて、今回はインプットとアウトプットの関係について、いかに「感情」が干渉するのかを書いて参りました。
 最後に、宣伝になりますが、上記の事どもから「英検合格」に繋げる英語教育法についての書籍『10万組の親子が学んだ子どもの英語「超効率」勉強法』(かんき出版)が12月初旬に発売されます。普段この『パルキッズ通信』で書いていること、あるいは書き切れないことを整理して、分かりやすく一冊にまとめてあります。
 子どもはどのように外国語を身につけていくのか、その根底にはどんな機能が働いているのか、そして、何をすれば失敗しないのか、など子どもの英語習得のメカニズムが分かりやすく図解されています。是非ご一読を。

【編集後記】

今回の記事をご覧になった方におすすめの記事をご紹介いたします。ぜひ下記の記事も併せてご覧ください。
英語が身に付く人とそうでない人の決定的な違い
お悩み解決
英語が「好き」になる前に!


【注目書籍】『子どもの英語「超効率」勉強法』(かんき出版)

特集イメージ9 児童英語研究所・所長、船津洋が書き下ろした『子どもの英語「超効率」勉強法』(かんき出版)でご紹介しているパルキッズプログラムは、誕生してから30年、10万組の親子が実践し成果を出してきた「超効率」勉強法です。書籍でご紹介しているメソッドと教材で、私たちと一緒にお子様をバイリンガルに育てましょう。


アマゾンで本を購入する


次の記事「パルキッズの取り組みQ&A」


次の記事
パルキッズの取り組みQ&A

プロフィール

船津 洋(Funatsu Hiroshi)

株式会社児童英語研究所 代表、言語学者。上智大学言語科学研究科言語学専攻修士。幼児英語教材「パルキッズ」をはじめ多数の教材制作・開発を行う。これまでの教務指導件数は6万件を越える。卒業生は難関校に多数合格、中学生で英検1級に合格するなど高い成果を上げている。大人向け英語学習本としてベストセラーとなった『たった80単語!読むだけで英語脳になる本』(三笠書房)など著書多数。

この記事をシェアする

関連記事