ハワイアンジャーナル パルキッズ通信 | ボキャブラリー, 読書
2017年1月号ハワイアン子育てジャーナル
Vol.67 | ボキャブラリーを育てる
written by 船津 徹(Toru Funatsu)
※本記事のテキストは引用・転載可能です。引用・転載する場合は出典として下記の情報を併記してください。
引用・転載元:
http://palkids.co.jp/palkids-webmagazine/hawaiian-journal1701/
船津徹『ボキャブラリーを育てる』(株式会社 児童英語研究所、2017年)
子どもが英語力を定着させていく上で欠かせない力がボキャブラリー(語彙力)です。子どもが現地校に通い始めると読解力がネイティブに比べて弱いことが問題になりますが、その原因となっているのがボキャブラリー不足です。
ボキャブラリー不足が顕著になるのがアメリカで受験を経験する時です。ハワイの私立中学受験ではSSATと呼ばれるテストが義務づけられています。SSATはリーディング、バーバル(ボキャブラリー)、算数の3部門から構成されるテストです。日本人の子どもがSSATを受けると、ほとんどの場合、バーバル部門のスコアが平均点にすら達しません。
論理思考を重視するアメリカでは、ボキャブラリーは学力を計る指標のひとつです。大学受験のSAT、大学院受験のGRE、ロースクール受験のLSAT、メディカルスクール受験のMCATなど、あらゆる試験にボキャブラリー問題があります。アメリカで教育を受けるのならばボキャブラリーを避けることはできません。
| 身につけるボキャブラリー数
アメリカの小学1年生が認知できるボキャブラリーは約6000語と言われています。小学2年生で8000〜13000語。小学2年生以降は毎年3000〜4000語が追加されていき、高校卒業までに約45000語のボキャブラリーを獲得することが目安とされています。
毎年3000単語を新たに獲得していくためには家庭で英語の「読書」を通してボキャブラリーを強化することが必要です。毎日最低30分読書の時間を設けるなど、ルールを決めて親子で本に親しむ環境作りを心がけてください。
「うちの子どもは本好きですが、ボキャブラリーが弱いです」という相談を受けることがあります。そのような子どもは「偏った読書」をしています。英語の本のことはよく分からないと、読書を子ども任せにしていると、好きな作家やジャンルに読書が偏ってしまいます。
ボキャブラリーを獲得していくには幅広い分野の読書が必要です。自然科学や科学技術に関連する本、政治や経済に関連する本、歴史や偉人の伝記の本など、子どもの読書レベルに応じて多様な分野の本に興味が持てるように導いてあげましょう。
| 子どもを本好きにするためには?
本嫌いの子どもに共通することが「面白くない」「頭に入らない」というものです。なぜ本の内容を楽しめないかと言うと想像力を働かせてイメージすることが苦手だからです。その結果、ストーリー理解や感情移入が深まらず本の世界の面白さを体験することができません。
想像力を育てるには幼児期に読み聞かせをしてあげること大切です。お母さんが絵本を読んであげると、子どもは物語を頭の中に具現化して、まるで映画を見ているかのようにイメージの世界を楽しむことができます。この経験が多いほど想像力が豊かになり、読書を楽しめる子どもに育ちます。
また、バイリンガルの子どもは読書スピードが遅いため、読んでも内容理解が浅い傾向があります。読書スピードを身につけるには、幼稚園から小学低学年までの期間に簡単な本をたくさん読ませることが大切です。適切な読書トレーニングを与えることでフルエンシーが身につき、スラスラと英語の本を読めるようになります。
| サイトワーズを覚える
読書力を手っ取り早く強化するには「サイトワーズ」が有効です。サイトワーズは英語の頻出単語です。英語の本によく出てくる単語を、よく使われる順に覚えていくことができます。サイトワーズにはいくつか異なるリストがあります。アメリカの小学校で広く使われているのが「Dolch Sight Words」と呼ばれる220単語のリストです。このリストはインターネットで入手することができますのでお子さんの読書教育に即活用してください。
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船津 徹(Funatsu Toru)
1966年福岡県生まれ。1990年明治大学経営学部卒業。教育コンサルタント。米国法人TLC for Kids代表。大学卒業後、金融会社勤務を経て幼児教育の権威、七田眞氏に師事。「パルキッズ」「パーフェクトイングリッシュ」など、しちだ式英語教材制作に従事。2001年ハワイ州、ホノルルにて移民のための学習塾TLC for Kidsを設立。2015年にはTLC for Kidsカリフォルニア州トーランス校を設立。アジア諸国からの移民子弟を中心に4000名以上の子どもの教育に携わる。同氏が手掛けたフォニックス教材は全米で25万人の教師が加盟するアメリカ最大の教育リソースサイト「OpenEd」による「最も効果がある教材部門」で第2位にランクイン。音楽と演劇を組み合わせた独自の教育メソッドは全米で注目されている。著書に『アメリカ最先端の英語習得法』(現代書林)。一男の父。一人息子は日本語・英語・中国語を操るトリリンガル。バラック・オバマ大統領の母校ハワイのプナホウスクールを卒業。ドナルド・トランプ氏の母校であるペンシルバニア大学ウォートンスクールに在学中。